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2026年4月15日水曜日

【不動産・かわら版】消化器の適切な設置方法は?

 


 延床免責150㎡以上の共同住宅には、消火器具の設置義務があります。床面から高さ1.5m以内、通行や避難に支障がなく、使うときには容易なように設置する必要があります。もっとも、直置きやボックス格納などの具体的な設置方法までは法令上の定めはなく、設置者に委ねられています。


 では、設置した消化器が第三者にイタズラされた場合、共同住宅の占有者・所有者が責任を負うことはあるのでしょうか。


 裁判例では、共同住宅の通路部分に、プラスチック製の保管台の上に壁にそって裸のまま消化器を立て掛けて設置していたケースで、何者かによって消化器が投下されるというイタズラにより隣家の屋根などが破損した事案において、消化器は「作動され易いが、イタズラされ難い」要請に合致した設置方法がとられるべきであるとして、工作物の保存の瑕疵を認め、共同住宅を所有する不動産会社に賠償を命じたものがあります(大阪地判平成6年8月19日)。


 消化器の適切な設置方法は?


 お困りの場合は、お気軽にご相談ください。


富永

2023年7月21日金曜日

ビッグモーター契約不適合責任事件(勝訴的和解)

 


 今朝のニュース。俳優に迷惑がかかるからという理由で、ビッグモーターがCMを自粛すると報道していた。どうも違和感を感じる。

実際には5万円の修理代で済むところを、さらに板金を故意に凹まして修理代を10万円に増額して、保険金を請求していたと報じられている(5万円、10万円は話を分かりやすくするための仮の数字)。

これは立派な保険金詐欺である(詐欺に立派なという形容詞をつけることにも違和感があるが。)。犯罪である。金融機関に対するものであるから、日本の司法実務では重罪とされている。しかも組織的で悪質である。

いまのところ保険金の不正請求などとマイルドに呼ばれているが、実態は組織ぐるみの詐欺犯罪事件である。そのうち端的にそう呼ばれるようになるだろう。

それなのにビッグモーターの対応は甘い。企業の危機管理がなされていないと感じる。ただちに経営陣が謝罪して、経営体制を刷新し、営業をしばらく止めて、実態解明を行い、再発防止策を樹立したうえで営業を再開すべきである。

CMを自粛する理由も、「俳優に迷惑をかけるから」というのはズレている。「保険金詐欺に関する被害者や顧客、一般消費者に対する謝罪・反省」、「実態未解明、再発防止策の未樹立」などが理由のはずだ。

自身、ビッグモーターがらみでは2件ほど手がけた経験がある。1件は刑事事件の弁護、2件は民事損害賠償請求事件である。

刑事事件は、被疑者・被告人弁護。ビッグモーターの社員が人身事故を起こしたもの。被害者の怪我の程度が重かったか、過失の態様が悪かったかで、執行猶予がつくか実刑になるか微妙な事案であったと記憶する。

そうしたところ、同じ職場の同僚たちが減刑嘆願の署名を集めてくれた。刑事事件を起こした同僚に冷たい職場が多い。このときは、ビッグモーターは社員の結束が強く、よい職場なのだなと感じた。署名の効果かどうか分からないが、判決には執行猶予がついた。

民事損害賠償請求事件は、購入者側から依頼されて、ビッグモーターに対し契約不適合責任を問うたもの。依頼人が購入した中古車は、購入した翌日には動かなくなった。会社側の責任は明らかと思われた。

契約不適合責任は、文字どおり、販売/購入した商品が売買の契約内容と適合していないという責任である。以前は瑕疵担保責任と呼ばれていて、近時、民法改正がなされた。法改正から間もない時期の事件だった。

ビッグモーター側には大阪の弁護士がつき、責任を烈しく争った。理由は、中古車には点検により分かる瑕疵と点検によって分からない瑕疵(たとえば、エンジン内部の損傷)があり、本件は後者であるという。

また、ビッグモーターでは、このような場合のために購入者に損害保険契約を勧めていて、当方の依頼者がその契約締結を断ったのだから、こちらが悪いともいう。

物には特定物と不特定(種類)物がある。利休が愛した茶器などは2つと存在しないから特定物の典型。工業生産で多数製造されている自動車(新車)などは不特定物の典型。

では中古車は?従来の理解によると、中古車は他におなじものがないという理由で特定物だったと思われる。

民法改正の際の審議内容を調査してみた。現代社会において中古車などは探せばほぼ同等の代替品がみつかる。つまり、不特定物・種類物ではないだろうか。そのような場合に瑕疵担保という考えは馴染まない。そこから契約不適合責任という考えが導きだされた。このような審議議事録を証拠として提出した。そして、法改正過程の議論に照らし、本件中古車には契約適合責任が適用されることが予定されているはずだと主張した。

損保に加入しなかったから購入者側が悪いという議論も乱暴な議論だ。ビッグモーターのやり方は、会社が負担すべき契約不適合責任による損害を消費者側の保険料負担で回避しようと言うものである。不当である。

ビッグモーターは多数の中古車を転売して利益を得ているのであるから、そのなかに一定数含まれる不良品に対する対策をすることができる。しかし、いち消費者にすぎない原告にそれを強いるのは困難である。などと主張した。

結果、裁判官は、ビッグモーター側の言い分を一蹴した。ただちに和解が成立し、こちらの請求が全額認められた。

乱暴な商売のやり方に、義憤を感じるとともに、ビッグモーターの行く末に危惧を感じた事件だった。さいきんの報道をみていて、やはりこういう事態になってしまったなぁと思う。

2023年5月12日金曜日

職場における暴行・パワハラ事件(福岡高裁判決)

 


 刑事事件を含めれば、平成28年から係争していた事件について高裁判決がなされた。

飲食店において上司YらがアルバイトXに対し暴行やパワハラを行い、PTSDを発症したとして、約2500万円の損害賠償が求められた事案である。

刑事事件において被告人の弁護を行った流れで、民事事件においても損害賠償を求められたY側から依頼を受けた。

刑事事件では、職場懇親会とその前々日に行ったとされる主に4つの暴行(傷害ではない。)の有無を争った。1審では全面的に有罪となり罰金40万円。控訴したところ、2つの暴行について無罪となり、罰金は20万円に減額された(刑事福岡高裁判決)。

その後、起こされた民事事件では、上記4つ以外にも多数の暴行・暴言が問題にされた。そして、XはこれによりPTSDを発症したという。某大学病院医師による診断を裏付けとしている。被告側は、Yだけでなく、上記飲食店、同僚、部下など関係者6人が訴えられた。

民事一審の福岡地裁も二審の福岡高裁も、暴行については、刑事福岡高裁判決どおり、それがあったことを認めた。しかし、Xが新たに展開した他の暴行や暴言については、これを認めなかった。

問題はPTSDのほうである。PTSDとは、心的外傷後ストレス障害(Posttraumatic Stress Disorder)のこと。生死に関わるような体験をし、強い衝撃を受けた後で、その体験の記憶が当時の恐怖や無力感とともに、自分の意志とは無関係に思い出され、まだ被害が続いているような現実感を生じる病気である。

某大学病院医師は、Yが訴える多数の暴行・暴言を前提として、PTSDの発症を診断している。その前提が崩れた場合、どうなるのか。

民事一審の福岡地裁も福岡高裁もPTSDは認定しなかった。しかし、一審は、非器質性精神障害の発症の限度で被害を認め、302万円の支払を命じた。

双方ともこれが不服であるとして控訴した。控訴審では和解が模索されたが成就せず、結局判決となった。高裁判決は、上記非器質性精神障害の発症も認めず、暴行による損害として約77万円の損害賠償を命じた。

刑事事件高裁で一部有罪になっているので、ゼロというわけにはいかないであろう。一部敗訴とはいえ、約2500万円の請求が約77万円になったのだから大勝利と言ってよいと思う。

治療を前提とした精神科の医学において、患者の訴えは基本的に受容される。これを否定していては治療をすることができない。しかし、いったん診断名がついてしまうと、それを否定するために司法の場では難しい医学論争が必要になる。それにしても民事だけでも5年。長すぎる。

この間、コロナ禍の3年間があり、いずれも飲食店を経営したり、そこで働いている被告側の関係者も少なからぬ打撃を受けてきた。高裁判決で大勝利となったものの、いまひとつ意気が揚がらぬ幕切れである。

2023年4月26日水曜日

賃借人から騒音被害を訴えられた件(和解解決)

 
 賃借人から騒音被害を訴えられた裁判が和解で解決した。

これまで被害者側から依頼を受け、4件ほど解決した経験がある。こんかいは、家主側、つまり「加害者側」から依頼を受けた初のケースである。

騒音被害訴訟として有名なのは、空港や基地、それに新幹線騒音訴訟だろう。自身が経験したのは、工場騒音や鉄道騒音であった。今回は生活騒音である。

場所は賃貸アパート。「被害者」はその住人の一人。騒音被害により、精神を病んだとして損害賠償を請求された。

当方は「加害者側」といっても、直接の加害者ではない。直接の加害者とされるのは他の住人たち。隣の住人が夜間に騒いでうるさい。

家主は賃貸人としてそれを止めさせる義務がある。それを怠っていたのだから、管理懈怠の責任があるという。

騒音被害については、行政法規ではあるが、騒音規制法や自治体の条例が重要である。

https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/soushinsyu-top.html

地域、時間帯等により、許容される騒音の大きさ(単位デシベル)が決められている。行政や業者に依頼したり、騒音測定装置を借りてきて自分で測定したりする。本件ではアプリで測定したという。

本来は、測定の仕方、つまり測定する距離などが決められている。本件では、隣人が騒いだことが何度かあり、そのうち1日だけ測定し、何度か規制値を超えているという。

一般に、騒音被害といっても、そのような点の被害では弱い。一定時間継続した被害である必要がある。本件では精神を患ったとされるが、騒音との関係は微妙だ。

地域も問題である。当該物件はJRの線路横にある。賃料も低額である。隣人の騒音以上に鉄道騒音のほうが深刻なはずである。賃料が低額だと隣人被害に悩まされる可能性が高いとの一般論はネット上でも議論されていた。

そしてなぜか、家主だけが被告とされた。隣人たちは訴えの対象となっていない。なぜだろう。最後まで分からなかった。家主にも責任がないとはいえないが、副次的なものだろう。

あとは当方が対応を怠ったとの点であるが、苦情申入れの都度、加害者側の住民に注意を発し、そのことを被害者に報告していた。これらはメールでなされており、すべて立証することができた。

以上のような次第で、家主は1円も支払わないで本件を解決することができた。めでたしめでたし。(自身も騒音被害には弱いので、被害者には同情を禁じ得ないが、ここは家主から依頼を受けた弁護士の立場で。)

2023年1月27日金曜日

ある交通事故損害賠償請求・交渉事件(車両価格、後遺障害認定、整骨院治療費)

 


 ある交通事故による損害賠償請求事件について、示談解決の運びとなった。主な争点は3つ、車両価格、後遺障害認定、整骨院治療費である。

追突された側で受任。責任は追突した側が100%、過失相殺はない。医療過誤などと比べて交通事故の話が容易であるのは自賠責法があるから。追突の場合はその議論も必要ない。

問題は損害論。まず物損。修理代が車の値段より高くなると、保険会社は車の値段しか認めない。そうすると、車の値段はいくらかということになる。保険会社はレッドブック(中古車の価格本)にしたがい損害額を提示。

むかしはこれで終わりだったけれども、最近はネットの発達により中古車市場が形成され、われわれも簡単に検索することができる。当方はこれで提示。保険会社もこれを認め、依頼者の納得も得られたので、物損はこれで解決。

つぎは人損。整骨院の治療費が問題となった。保険会社は、整形外科の治療費は3か月以内であれば原則としてこれを認める。しかし、整骨院の治療費は整形外科医の処方がないとこれを認めない。整骨院だって、柔道整復師法によるれっきとした国家資格であるが、一段低くみられているのである。

本件では、仕事帰りに通院するのに、整形外科の診療時間に間にあわず、やむを得ず整形外科医の「許可」を得て、整骨院で治療を受けていた。

ところが、保険会社の照会に対し、整形外科医が「許可」はしたが「指示(処方)」はしていないなどと回答したらしく、紛争化した。保険会社は整骨院への支払いをしないまま推移し、依頼人は焦燥した。

最後に問題になったのは後遺障害認定。整形外科医は腰椎捻挫等の症状がなお残っているとして後遺症診断書を作成した。事前認定はいったん後遺障害の認定を否定。

不服申し立てをおこなった。当初救急搬送された病院、その後の整形外科、またその後の整形外科などから診療録等をとりよせた。また医師の意見書もとりつけた。・・結果、後遺障害14級の認定となった。

さてこれに基づく示談交渉。保険会社もせからしいと思ったのか、整骨院治療費も認めてきた。依頼者も喜んでくれた。「先生には感謝しかありません。」と。

2023年1月23日月曜日

ある不貞慰謝料被請求事件

 

 不貞を理由とする慰謝料の請求を受けたある事件。夫と子どもがいて共働きだったところ、妻が仕事先の男性と浮気。夫が妻と男性を訴え、慰謝料等440万円を請求した。

妻側で受任。裁判は和解で解決した。和解内容は、男性が夫に180万円を支払う。妻は男性に、そのうち90万円を支払う。ただし、月2万円ずつ45回の分割払いである。

こういう場合、妻と男性の行為は、夫に対する共同不法行為。慰謝料の支払義務は連帯責任・連帯債務である。どちらかが全額支払えばそれで終わり。ただし、内部的に求償の問題が残る。本件に即していえば、180万円の連帯債務、これを男性が全額支払い、妻が求償金90万円を支払うこととなった。

不貞慰謝料の金額は、浮気の結果として夫婦が離婚に至ったかどうかが大きい。離婚に至らなければ慰謝料も低くおさえられることが一般的である。その他、そもそもの夫婦関係(そもそも破綻していれば損害はない)、不貞に至った経緯(どちらが誘ったのか)、不貞期間・回数等が慰謝料額を左右する。

本件では、双方の主張がでそろった段階で、裁判所が一定の解決案を示し、それをめぐって和解協議が重ねられた。

依頼人が福岡に居住していなかったため、打合せがたいへんだった。DV案件で警察の介入もあったため、住所情報の秘匿にも苦労した。

弁護士費用は法テラスを利用されたので、着手金も報酬金も法テラスが決めた。依頼人は月1万円ずつほど法テラスへの返済義務も負うこととなった。

2022年6月30日木曜日

Y先生

 


 紅花が咲く季節になった。ジブリ映画『おもひでぽろぽろ』で、生き方に迷った都会のOL主人公が向かったのは山形の紅花畑だった。

今朝はなぜか亡Y先生のことを思い出す。数年前にお亡くなりになった。10年以上先輩で、福岡県弁護士会で何番目かの女性弁護士である。いまでこそ女性弁護士は増えたが、先生が登録されたころは数もすくなく、パイオニア的存在だった。

紛争当事者はいわゆるおっさんも多く、女性とみるだけで侮ってかかることが少なくない。いまでもそうだ。むかしは推して知るべしである。

とはいえ、事件で引き合い(相手方)となることもなく、会務でご一緒することもなかった。ところが、あるとき唯一の接点ができた。お亡くなりになっていることだし、もう時効だからここに紹介してもよかろう。

あるとき、紛議の申立を受けた。紛議とは弁護士の職務遂行の仕方について顧客が弁護士会に苦情申立をおこない、解決を求める制度である。先生はその担当委員になられた。

同事案は、労災事故。一審では事故かどうかの事実論と会社の責任論が厳しく争われた。そこをなんとか勝訴に導くことができた。損害論は争われず数千万円の賠償が認められた。

控訴審では相手方弁護士は作戦と争点を変更して、損害論を争った。当方被害者には既存障害(事故以前からあった障害)があったとして、賠償額の減額を求めた。高裁は和解勧告を行い、損害額は半分に削られた。

依頼人との間で何度も和解を受けるかどうか協議し、方針確認書を3通作成、署名・捺印を得たうえで和解に応じた。

ところが、前記紛議の申立である。このような和解に応じたことには弁護士の職務遂行として問題があるというのである。

高裁の和解に応じたというだけでも弁護士の責任はないと思われるが、方針確認書を3通作成し、依頼人の承諾を(もちろん、署名・捺印も)得ているのであるから、当職に責任はない。そもそも普通の弁護士であれば、一審での勝訴もおぼつかなかったであろう。そう争った。

通例、紛議委員は、相手方の顔もたてて、なかとりの示談を勧めることが多いという。Y先生と協議した。示談を勧められるかなと思ったら、「こんなのに負けちゃダメよ。」と励まされた。

これには感銘を受けた。これほど強い言葉はあまり聞かない。紛議委員という立場上、もっとあいまいな表現になるのが通例であろう。

さすが女性弁護士としてのパイオニア。数々のご苦労をなさってきたことだろう。そのなかで培われた確かな正義感と、それに基づく後輩弁護士への指導と受けとめた。いまでも感謝している(紛議のほうは、しばらく尾をひいたが、申立人が無事あきらめてくれた。)。

2022年3月4日金曜日

ワクチン接種(3回目)


  一昨日、接種券が届いた。説明書を読むと、ファイザーかモデルナかを選べるとある。かかりつけを除けば、市役所でファイザー、カミ-リア(福祉センター)でモデルナが打てるとある。

ちなみに、1回目、2回目ともファイザーであった。3回目もファイザーにするのがいいのか、モデルナにしたほうがいいのか。分からない。

事務局に相談すると、みなそれぞれである。まとめると、モデルナにしたほうが効果はありそうだが、副反応も強いようだ。それはそうだろう。毒にも薬にもならないという言葉がある。薬効があるということは副作用(副反応)もきついということだ。

ファイザーは人気なので待ち日数があり、モデルナは不人気なのですぐに打てるという。よし、じゃ、ファイザーだ(モデルナの副反応が恐かったのでは決してない。ただ従来の流れを変えたくなかったのだ。うそ)。

そう心に決めて、コールセンターに電話した。すると、この電話はモデルナですといわれ、選択の余地を与えない。えっ、そんなこと、どこにも書いてなかったけど・・・。この電話はって、コールセンターの番号は1つしか書いてなかったけれど・・・。いろんな疑問や苦情が頭のなかを駆け巡ったが、ぐっと飲み込む。

モデルナでしたら、明日(木曜)の午後3時以降、何時でも空いてます(さすが、噂どおりモデルナには待ち行列がないようだ。)。あれれ。モデルナでしたらって、どういうこと?さっきは、この電話はモデルナですっていったじゃん。ま、いっか。

じゃ、あすの午後5時で。つまり、今から振り返ると、昨日の午後5時に予約した。問診表に書き込む。保険証を忘れないようにしないと。

副反応のことを考えると、金曜の午後5時にしたほうがよかったかもしれない。でも日曜に怪鳥会の登山、ちょっと厳しめのやつが予定されているので、金曜接種では遅すぎるかもしれないと考えた。

木曜4時すぎ、事務所を出発。出発間際、「死んだらあとはよろしく。」と言って出かける。

むかしの判例に「残念事件」というのがある。慰謝料は精神的苦痛に対する賠償なので、死者の一身専属権である。ゆえに死ぬ前に慰謝料請求の意思を表明する必要がある。なにも言わずに死ねば慰謝料は請求できない。「残念、残念。」といって死ねば、請求できるという判例である。

心配しなくても、いまは何も言わなくても大丈夫。でも万一のことがあるから、死んだらモデルナ社に賠償請求してほしいという趣旨を込めた。

判例では67歳まで逸失利益を請求できることになっている。あと5年分かと言いつつざっと計算する。するとI弁護士がぜんぜん足りないという。たしかにそうだ。個人の損害はともかく事務所の損害補填にはとても足りない・・・。なにを心配しているのか分からない。

そして今日。このブログを書いている。いまのところ副反応はない。命に別状はない。モデルナアームもない。副反応があるのは困るが、なにもないのもなんか寂しい。ほんとうにワクチンが含まれていたのだろうか。生理食塩水ではなかったか。などなど心が騒ぐ。

ぼくは基本的に、自分の体に異物を入れない主義だ。薬はほとんど飲まない。風邪をひいても病院にはいかず、葛根湯とユンケルで免疫を高めて対処する。

ワクチンもできれば打ちたくない。しかし、イタリアにいる孫に会いに行くためには、背に腹は代えられない(ワクチン接種は腕だが。)。涙を飲んで打ちにいった。

3月末には孫のほうから帰国するとの連絡があっていた。ところが、ロシアがしかけた戦争である。コロナのつぎはロシア。ロシア上空を飛行できないため、予約便が飛ぶかどうか分からなくなっている。

早く戦争を終結してほしい。ウクライナの人々からすれば、孫に会いたいなど、なんだそれくらいという話である。しかし、切実にそう願っている。

2021年12月1日水曜日

ある損害賠償被請求事件


  いよいよ師走。マスコミは毎日、オミクロン株の小ネタの報道に忙しい。徒にこれら報道に振り回されず、われわれの人生を破壊されないよう行動するしかあるまい。

 きのうにひきつづき、ある損害賠償被請求事件。といっても、実態はやはり遺産分割事件。被相続人である祖母の遺産を使い込んだだろうと主張して、甥(祖母の長男の子)が叔母(祖母の次女)にたいし損害賠償を請求した事案である。

むかしはこのタイプの紛争はおおくはなかった。しかし、高齢化がすすみ、被相続人が認知症などで生前に財産管理能力を失う事例が増えた。そのため、財産管理能力を失った後の支出が違法な使い込みではないかとして争われるようになったのである。

わが事務所は地域事務所であるので、請求する側から依頼を受けることもあるし、請求される側から依頼を受けることもある。ケース・バイ・ケースであるが、まず一定期間の財産管理の事実を認めるかどうかが大きい。

裁判所の対応も当初、裁判官によって異なる印象であった。最近は、請求する側に厳しくなりつつあるように思う。それはそうだ。これは立証責任が請求する側にあるという原則の帰結である。またそうでないと、被相続人の老後のめんどうをみた人がバカを見ることになる。

本件でもそうだ。叔母が祖母のめんどうをみていた。生前、甥は何らのめんどうもみていなかった。ところが祖母が亡くなったあと突然、甥は祖母思いの孫に変身し、学生時代に祖母から電話できいた断片情報を拡大解釈してはじめたのである。

甥は埼玉県に在住していたことから、さいたま地方裁判所に訴えられた。おおむねオンラインで対応できたが、証人尋問の際は緊急事態宣言下、同地裁まで出張しなければならなかった。

このとき、叔母本人と証人とは福岡地裁に出張し、ビデオ尋問方式がとられた。結果的に、代理人の弁護士がコロナに感染するのはやむを得ないけれども、当事者が感染するのは困るという形になった。いまではよい思い出だが、当時は命がけの思いだった。

裁判所から何度か和解勧告がなされた。が、甥側はこれを拒否。その結果、こちらの勝訴判決がなされた(遺産が一部残るかたちになったので、その部分の不当利得返還請求、実質的な遺産分割請求は認められた。)。

甥は納得せず、東京高等裁判所に控訴。高裁からは細かい求釈明を受け、これに対応した。さすが東京高裁である。隅々まで目を光らせているという感じ。

結果は、ほぼ控訴棄却。当方のほぼ全面勝訴である。「ほぼ」とあるのは、先の細かい支出を指摘され、一審より数万円の増額となったから。

双方とも上告せず、東京高判は確定した。これで解決かと思いきや、相手方から不満をぶちまけた感じの手紙が届いた。困ったものだ。法治国家における裁判制度のことが分かっていない。しばらくは様子をみるしかあるまい。

2018年3月15日木曜日

離婚調停が不調に終わりました。



 きのうは離婚調停が不調に終わりました。
 入籍して2か月くらいの破局です。
 当方は夫側です。

 離婚については双方に争いはなく,争点は慰謝料の支払義務があるかどうかだけです。
 世によくある誤解ですが,離婚にともない当然に慰謝料が発生するわけではありません。

 慰謝料は,損害賠償の一部で,精神的な苦痛に関するものです。
 損害賠償請求権は,不法行為あるいは債務不履行といった違法行為の効果として発生するものです。
 不法行為がなければ,慰謝料も発生しません。
 たとえ離婚に至ったとしても,その原因が性格の不一致であれば,慰謝料は発生しないわけです。

 週刊誌などで慰謝料いくらと書かれていても,よく読むと厳密な意味での慰謝料ではなく,手切れ金,解決金,和解金の趣旨であることも少なくありません。
 これらは,一方当事者が不法行為をしたから支払うという性質のものではなく,紛争を早期・穏便に解決したいので,そのために支払うというものです。

 本件ではこれといった不法行為が存在しないけれども,相手方が慰謝料にこだわれたために不成立に終わったものです。
 調停が不調に終わったために,離婚訴訟をおこなうことになります。

2016年1月22日金曜日

交通事故研修に行ってきました


 先日、交通事故についての研修に行ってきました。


 そこでお話しをされた方の言葉で、強く印象に残ったものがあります。

 交通事故の被害者にとって、いい弁護士とはどんな弁護士か?という問いに対する答えです。


 交通事故に関する知識がたくさんある弁護士でしょうか?交通事故をたくさん扱っている弁護士でしょうか?それとも、保険会社との交渉に強い弁護士でしょうか。

その方の答えは、違いました
 

「被害者の話を聞いてくれる弁護士。何でも知っていますよという様子の弁護士はあまり信用できない」というものでした。

 

 弁護士も何でも知っているわけではありません。

事実を丁寧に繰り返し確認し、そこから、似たような交通事故や症例はないか、参考になる文献はないか、例外的に請求が認められる場合はないか等、徹底的に調査します。事実が1つ違うだけで、結論が変わることもあります。

例えば、いわゆる主婦の方も、年齢や家事労働の状況等を考慮して、適切な額の休業損害や逸失利益を請求できます。

 なので、まずは、被害者の人の声を聞かないことには、適切なアドバイスは出来ません。

 また、誰かに話しを聞いてもらうというだけで、気持ちが楽になることもあります。

 このような理由から、当事務所では、交通事故の内容や被害実態の聴取りに力を入れています。
 

そのことの大切さを改めて確認できた研修でした。


なお、当事務所では、交通事故の初回相談は無料です。ぜひ、お話をしに来て下さい。

2016年1月15日金曜日

従業員が競合会社を設立できるか?



【賃貸管理等を行う不動産業者の従業員が在職中競合会社を設立し,従来の顧客を奪ったことにつき不法行為が肯定され,管理委託費用相当額の逸失利益の損害が認められた事例】

 判例時報平成28年1月11日号に掲載された東京地判平成27・3・30の事例判決です。

 X会社社長が信頼していた右腕社員Yが他の社員と顧客をごっそり引き連れて隣で商売をはじめたときに,X会社はYに対し差止めや損害賠償請求ができるのか?

 中小企業の社長によくある誤解ですが,なんとかできると考えられている方がおおいと思います。しかし,原則として差し止めや損害賠償請求はできません。理由は,自由競争の範囲内だから。

 もちろん例外はあります。自由競争の範囲を逸脱した場合,損害賠償請求ができます。
 本判決は,この例外を認めた事例判決です。

 本件では,Yが在職中から開業準備行為を行っており,顧客に対する営業活動を行っていたものと推認し,引継物件のパソコン内のデータを消去するなどしたことから,違法な態様でXの営業活動を妨害し,顧客に対しても虚偽の説明をして勧誘したものであり,社会通念上自由競争の範囲を逸脱したものであるとしました。

 逆に言えば,これだけの違法な態様,虚偽の説明を立証しないかぎり,自由競争の範囲内に収まってしまい,X会社側の敗訴となってしまうわけです。

 それでは,X会社としては,なんの防御もできないのか?
 この点,競業避止契約を従業員と結んでおくことで,一定防御することができます。

 ですが,これも万能ではなく,従業員の独立・競業を100%シャット・アウトすることはできないことになっています。

 そこから先は,従業員が反旗をひるがえさないよう,どこまで良好な労使関係を結んでいけるかという経営者としての力量が試される領域となります。

 ご参考まで。

2015年12月11日金曜日

法は最低限の道徳(顧問先企業研修①)


 (丹沢から富士山)

 先日,顧問先企業の従業員さんたちに対し
 研修をおこないました。

 おおむね好評・・
 だったと思います,お世辞を差しひいても。

 法と法律にまつわる色んな話をしました。
 しばらくそのときの話から。
 
 まずは,「法は最低限の道徳である。」
 いろんな意味があるでしょうが,私はこう説明しています。

 社会にはたくさんの人間が暮らしています
 ときには不和や争いごとが生じます。

 そうした紛争を解決するルールが社会には必要で
 ルールは法にかぎらず,道徳や宗教などもそうです。

 そのため,道徳や宗教と法との関係が問題になります。
 それに対する答えが「最低限の道徳」というわけです。

 たとえば,有名な「モーゼの十戒」のうち
 1~5は宗教・道徳的で,6~10は法とかぶっています。
 
  1. 主が唯一の神であること
  2. 偶像を作ってはならないこと(偶像崇拝の禁止)
  3. 神の名をみだりに唱えてはならないこと
  4. 安息日を守ること
  5. 父母を敬うこと
  6. 殺人をしてはいけないこと(汝、殺す無かれ)
  7. 姦淫をしてはいけないこと
  8. 盗んではいけないこと
  9. 偽証してはいけないこと
  10. 隣人の家をむさぼってはいけないこと

 法は道徳や宗教とかぶることもあるけれども全部ではない
 法はむしろ人間関係の最低限のルールを定めているにすぎない。

 しかも,法はあまり内面に関知しない
 外形的な行動さえ律することができればよいとの立場です。

 これは大きくいえばわれわれの自由を守るため
 日常生活の細かなこと,内面のことまで法律に干渉されないためです。

 そのためではありますが,われわれが顧客から叱られることもしばしば
 その要求水準に答えられないことにもなるからです。

 交通事故を起こしたばあい
 過失があるほうは謝罪して当然です,道徳的には。

 しかし,民事事件の不法行為,損害賠償の場面では
 謝罪しなかったからといって,賠償額が高くなることはまずない。

 ここらへんが一般人の感覚とズレを生じることになる
 でも法は「最低限の道徳」だから,やむをえないんですねぇ。 
 

2013年7月30日火曜日

事件は現場で…


昨日は,
弁護士同士の勉強会へ。


2か月に1回のペースで開かれています。


今回のテーマは,

「被害とは何か」です。



弁護士が
裁判上で何らかの損害賠償請求をしていくためには,
「被害」というものが
明らかになってこないといけません。

その「被害」をどう捉えていくのか…
というお話。




どうしても
無意識のうちに裁判で勝てる「被害」を
弁護士の都合で
作り上げてしまうことがある。

という指摘が…。


「被害」は,弁護士が作ったストーリーに
当てはめるものではなくて,
現場に存在するもの。

その「被害」を
被害者とともに紡いでいって,
被害の根絶という目的に生かさなければ…。




「事件は会議室で起きてるんじゃない。
現場で起きてるんだ。」

と叫んだ刑事がいましたが,

その通りですね。



これからも,
現場で
被害者とともに紡ぎだしていける
弁護士になりたいものです。



2012年10月26日金曜日

喪の途上にて






きのうは医療問題研究会の
調査事例検討会でした。

10件ほどの事例が持ち込まれ
事案の分析や調査方針を議論。

医師,薬剤師をまじえて
若い弁護士らが中心に。

医療の途中で,命を失ったかたがたのご遺族
あるいは,重い障害を負ったご本人。

これらの方々は,そのショックから立ちなおれず
なにか方策があったのではないかと悩んでおられます。

われわれが調査し,議論するなかで
医療の限界というものが見えてきます。

医療の限界を超えた事態は
不可抗力であり,責任を問うことができません。

おおくの医事紛争は
ここのところの納得がなかなか得られていません。

その納得をすこしでもしていただくための
熱い議論が遅くまで続きました。

タイトルはさる本から拝借
著者は精神科医です。

弁護士はカネ,カネといって
ご遺族らの心情に寄りそおうとしないと批判されています。

しかし,昨夜の議論に参加してもらえば
そのような批判がまちがいであるとご理解いただけると思います。

2012年4月17日火曜日

脳梗塞の見逃し事件 by.山歩きの好きな福岡の弁護士



 去る3月27日、福岡地方裁判所において,医療事件で
 原告の請求を一部認める判決が出されました(4月11日確定)。

 事案は,福岡市内の被告病院が,同市の70代の女性(原告)の
 脳梗塞の診断・治療を怠ったもの。

 原告は、飲食店での支払いの際、何度も硬貨を落とすなどしたため
 店員が脳梗塞を疑い119番通報し、被告病院に救急搬送されました。

 当直医(消化器科)及び翌日診察した主治医(循環器科)が、TIA
 (一過性脳虚血発作。脳梗塞の前駆症状であることが多い)を誤診。

 TIAではないとし、治療(専門医への転送)をしなかったところ
 2週間後に脳梗塞を発症、右半身麻痺等の障害を後遺することに。

 被告病院の診断義務違反等を理由に
 8000万円の損害賠償を請求をしました。

 被告が,非専門医は,TIAを診断すべき義務はないなどと主張したものの
 裁判所は,被告病院の過失を認めました。

 TIAの診断方法等は一般的な医学文献に記載されており
 その程度の知識は非専門医であっても認識しておくべきとの判断です。

 被告医師らがTIAに関する誤った知識に基づき適切な問診を行わず
 TIAについて否定的な診断をしたことは不適切であったとしました。

 しかしながら裁判所は,
 相当因果関係について否定しました。

 ①TIAを疑って入院させ、心電図がなされたとしても
 心房細動が発見されたとは限らない。

 ②抗凝固療法が開始されていたとしても
 100%脳梗塞の発症を防ぐことはできない。

 それゆえ,被告病院医師の義務違反がなかったとしても
 本件脳梗塞を防止し得た高度の蓋然性は認められないというのです。

 ただし,被告医師がTIAを診断等していれば、後遺障害が生じなかった
 相当程度の可能性はあるとして、慰謝料等440万円を認めました。

 本判決は、非専門医であっても、一般的な医学文献に記載のある事項
 については知識を得ておくべきであるとしました。

 専門分野以外についての診断義務違反の判断方法の基準を示した点で
 大きな意義を有しています。

 脳梗塞を含む脳卒中という疾患は、日本人の死因でも上位を占め
 多くの人がなる可能性がある病気です。

 その重大さを考えれば、非専門医であっても
 適切な診断・治療を行うことが期待されます。
 
 本判決は,損害評価が低きに失するものの,この期待に応えるもので
 市民感覚に合致するものではないでしょうか。

          ちくし法律事務所 弁護士 浦田秀徳

2012年1月20日金曜日

「運命の人」(4) by.山歩きの好きな福岡の弁護士



 「宝満山は婚活スポットだった!」はシャレだったのですが
 はやく読みたいとの声が…。

 そちらの「運命の人との出会い方」みたいな話は来週に
 まわすとして、今週末はこちらの「運命」の話で完結。

 「運命の人」とか「沖縄返還密約」とかいっても40年前の話で
 過去のこととか考えていたら、間違い。

 日米の密約だから、これを闇に葬るには
 米国も黙っている必要があるんですねぇ。

 ところが2002年になって
 この関係の米国側の文書が公開されます。いわく。

 「日本政府が400万ドルという数字と日米間の密約が
 公にならないように神経をとがらせていて

 メディアの追求に対して米国側に
 同一歩調をとるように要求してきている」

 このような動かぬ証拠をつきつけられると
 水戸黄門であれば、「はは~っ。」というところでしょう。

 ところが、日本政府の対応は「事実関係として密約はない」とか
 「密約は一切ない」。

 西山さんは「密約の存在を知りながら違法に起訴された」として
 国家賠償請求訴訟を提起。

 裁判所は「損害賠償請求の20年の除斥期間を過ぎ、権利がない」
 とし訴えを棄却、密約の存在には全く触れなかった。

 西山さんを支持するジャーナリスト有志が外交文書の情報公開を
 外務省と財務省に求めたが、やはり「不存在」との回答。

 ようやく民主党政権となり、調査委員会が2010年3月
 全てについて密約及び密約に類するものが存在していた事を認めた。

 どうです?これらの対応。
 現在も40年前もちっとも変わりません。

 国民にほんとうのことを知らせない、追求されてもウソをつく政府。
 それを見て見ぬふりをする司法。機能しない情報公開制度…。

 このような対応が現在の沖縄の基地問題などにも
 しっかりと通底しているわけです。

 信頼関係は人間関係の基本
 信頼できない人とはおつきあいできませんよね。

              ちくし法律事務所 弁護士 浦田秀徳

2011年10月6日木曜日

 肺炎・多臓器不全で亡くなった事案で和解



 入院中の母親が肺炎による多臓器不全で亡くなったとされ
 原告はその子どもたち、被告は入院先の医療機関。

 診療義務違反があったとして損害賠償を請求していたところ
 昨日、和解が成立しました。

 咳症状がつづき、胸の痛み、食欲なし、倦怠感、黄色の痰が出ていて
 死亡診断書には肺炎→多臓器不全→死亡という機序が記載されていました。

 他方、剖検がされず、レントゲン検査等の結果によれば
 重症の肺炎像が見られなかったことなどから、機序が争点になりました。

 この点、故人にはコントロール不良の糖尿病が基礎疾患としてあり
 後医に転送されたさい重度のアシドーシスになっていました。

 糖尿病患者は、感染症(肺炎を含む)が重症化する危険があり
 糖尿病の悪化はアシドーシス、昏睡、多臓器不全になる可能性があります。

 こうしたことから
 裁判所は和解案において当方の主張する機序を支持しました。

 進行がはやかったことから
 診療義務違反と死亡との間の因果関係も争点になりました。

 喀痰細胞診検査で強い炎症背景が認められた時点で、血液検査を実施し
 抗菌剤投与、インスリン療法を開始すれば死亡が回避できたはず。

 この点も裁判所はわれわれの見解を支持しました。
 こうしてわれわれの請求を基本的に認める和解案が示されました。

 これを医療機関側も受け入れ
 昨日の和解成立となりました。

 医療過誤裁判は人の生命、医療という専門分野にわけいって
 真相をさがし、あきらかにするという非常に困難な訴訟です。

 でもご遺族たちの和解後のお顔を拝見すると
 取り組んでほんとうに良かったなと思いました。
 

2011年4月26日火曜日

 労災事故&交通事故&医療事故


 労災事故&交通事故&医療事故?という3重困難な事件が解決しました。
 作業中に交通事故に遭い、診断・治療が遅れ、障害が後遺した事案。

 労災保険は所得の一部と慰謝料等を補償するものではないため
 不足分の損害賠償を求めて雇主、車の所有者らを訴えたものです。

 損害保険と生命保険のちがいをご存じでしょうか?
 生命保険は加入している口数だけ保険金がおります。

 これに対し、損害保険は複数口加入していても1口しか出ません。
 それにより損害が補填されるからです。

 医療裁判のハードルのほうが高いこともあり
 労災・交通事故裁判に専念することにしました。
 (2兎を追うものは1兎も得ず、なので)

 福岡地裁で勝訴判決を獲得し、被告らが控訴したものの
 福岡高裁で和解が成立しました。

 一審では、労災事故・交通事故の発生そのものが争点に
 労災事故の性格上、目撃できる者は被告企業に集中し多勢に無勢。

 さらに、もととなった症状の診断がおくれたために
 障害をひきおこした事故の存在そのものも不安定に。

 (むかし短期間に3度交通事故に遭ったために、因果関係の証明が
 難しくなった事件がありました。複数の不幸に遭うとさらなる不幸が
 まっているというのが訴訟制度の難しいところ)

 それでも長期間にわたる治療実績があることや
 労災による障害認定を受けていたことから、一審勝訴。

 高等裁判所では、労災事故・交通事故の存在を前提に  
 主に、事故と障害との間の因果関係が争われました。

 障害の発生原因が他にあるという、いわゆる他原因主張です。
 他原因が医学的な論点であったことから、医学論争となりました。

 損保会社側からは、医師の鑑定書が複数提出されました。
 当方も、診療にあたった医師の鑑定書を2通提出しました。

 この段階で、高裁から和解勧告がなされました。
 和解案は、事故と因果関係を認めた上で、素因減額をするというもの。

 素因とは、損害の発生及び拡大に影響を及ぼす被害者側の事情
 その理由により、賠償額を減額するのが素因減額の考え方です。

 一審・福岡地裁が認めた賠償額が削られることに不服がありましたが
 高等裁判所の和解案であることを考慮して受諾、和解が成立しました。
 
 裁判は証拠によって事実を立証しなければならず
 複数の要因が重なると、すべての事実が存在しないことにも。

 そんな錯綜した事件でした。
 

2011年2月25日金曜日

 統一教会・霊感商法事件



 久しぶりに統一教会がらみの事件がきました。
 20年ぶりでしょうか。

 当時、霊感商法などとして社会問題化していました。

 被害者を「霊場」に連れて行き、「霊能者」が不幸の原因が先祖の因縁に
 あるなどと不安を煽り、法外な値段で壷などを買わせる手口でした。

 人間は過去・現在のみならず、将来への思いを胸に日々生きる存在
 将来を思うかぎり「不安」はさけられません。

 世の中にはこのような人間の弱みにつけ込む卑劣な行為が
 あとをたちません。霊感商法もその一つでした。

 福岡でも消費者問題委員会を中心に被害対策弁護団が結成され
 私も当時の若手委員の一人として参加しました。

 1993年福岡地裁は、実質上、統一教会の指揮監督によって
 霊感商法をはじめとした経済活動が組織的、計画的に行われたとして

 統一教会の使用者責任を認定し、損害賠償を命じました。
 (統一教会の責任を認めた初の判決)

 使用者責任は、ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の
 執行について第3者に加えた損害を賠償する責任を負うもの(民715条)。 

 関西弁でいえば「責任者でてこい!」という法律
 最近では、これに基づき暴力団の組長の責任追求などがなされています。

 公務員の不法行為に関する国家賠償法1条の責任もおなじ仕組み
 ただ国家の賠償責任は憲法17条に由来しています。

 リビアの治安部隊がおこなった殺戮行為についてカダフィ大佐に対して
 民事上の責任追求をされる日が来るのでしょうか? 

 それはともかく霊感商法事件では
 執行官を先頭にわれわれは教団の施設に強制執行をかけました。

 これに対して教団側は被害対策弁護団の所属弁護士の事務所のちかくで
 名誉・信用を毀損する中傷ビラをまく攻撃をしかけてきました。

 われわれは刑事告訴をおこない
 ビラを巻いた人間らは刑事責任を問われました。

 被疑者の調書を読んでいると、二日市の事務所だけは探したけれども
 見つかりませんでした…などと書いてありました。

 中傷ビラを巻かれるのは名誉毀損だけれども
 事務所がわかりにくいなどと公文書に書かれるのはさらなる名誉毀損だ!?
 と話が脱線した覚えがあります。

 それから20年、ニュースで耳にすることはあったものの依頼は久しぶり。
 いま事実関係を調査中。大過なく解決できそうな感じではあります。