2010年11月29日月曜日
「銃、病原菌、鉄」に感謝しな祭?
先週、米国はナショナル・ホリデーのひとつ・感謝祭でした。
感謝祭の起源はポカホンタス的な説明で、つぎのとおり。
ピルグリムファーザーズがプリマスに到着した
冬は大変厳しく大勢の死者を出したが
近隣に居住していたインディアンのワンパノアグ族の助力により
生き延びることができた。
翌1621年の秋は、とりわけ収穫が多かったため
ピルグリムファーザーズはワンパノアグ族を招待し
神の恵みに感謝して共にご馳走をいただいたことが始まりだとか。
ジャレド・ダイアモンドの「銃、病原菌、鉄」
(倉骨 彰訳、草思社、2000年)
を読むと、そんな心温まる話ではなさそう。
同書はピューリッツァー賞を受賞し
朝日新聞による「この10年間の最も優れた書籍」でも第1位。
1万3000年前、同じような条件でスタートしたはずの人間が
今では一部の人種が圧倒的優位を誇っているのはなぜか?
ダイアモンドは、地形や動植物相を含めた「環境」が原因だとします。
より豊かな情報に接することができた環境というべきか。
ヨーロッパ人の能力などの人種的な要因をまっこうから否定。
ユーラシア大陸は、栽培可能な植物、家畜化できる動物にもともと恵まれ
文明の交差点として「銃、病原菌、鉄」に接する
環境にめぐまれていたにすぎないと。
銃や鉄に関する情報ついては
鉄砲伝来・長篠の戦いや
最初の鉄器文化ヒッタイト(鉄器で青銅器を破るみたいな)など
われわれも中学、高校時代から教えられてきました。
西部劇でも銃をバンバンやる場面をなんどもみせられました。
しかし病原菌(感染症)や、それに対する免疫力が武器だ
というのは最近の考え方
感染症や免疫(感染防御)に関するものもやはり情報なんですね。
トムクルーズの映画「宇宙戦争」のクライマックスで
侵略宇宙人たちがトムクルーズの活躍ではなく
病原菌にやられたときは
木戸銭返せ、と思いましたが
H.G.ウエルズの原作からそうらしいです。
(ウエルズの恐るべき先見性!)
ピルグリムファーザーズがアメリカ大陸に来た時点で
ニューイングランド周辺にいたインディアンのうち約90%は
インフルエンザその他の病気により死亡したそうです。
これではサンクス・ギビングデー(感謝祭)ならぬ
ウイルス・ギビングデー!?
ネイティブ・インディアンからすれば、まさに疫病神の襲来です。
インディアン100人のうち90人を病原菌が倒したと知れば
墓場のジョン・ウエインもびっくりするでしょう。
16世紀日本におけるキリスト教や鉄砲伝来のとき
日本人の90%が死亡する事態とならなかったのは
朝鮮半島や中国をつうじて大陸とながい交渉があったおかげでしょう。
香港型やらソ連型などその年に流行するインフルエンザの種類を
聞くと、その思いをつよくします。
われわれも病原菌と適度におつきあいをし
免疫力をうまく鍛えておく必要があるのかもしれませんね。
自己免疫を鍛えるために
自分の懐中にカイチュウを飼っておられる藤田紘一郎さんの
お説の受け売りですが。
(福岡伸一さんの「生物と無生物のあいだ」、「動的平衡」については
またの機会に)
これからインフルエンザの流行期
みなさまもご自愛ください。
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