2010年11月24日水曜日

 海幸と山幸



 最近、この種の紛争が増えているんでしょ?
 姉弟間の遺産分割調停にあたり
 お客さまに訊かれました。

 よくいわれます。
 でも兄弟姉妹のあらそいは昔からあったはず。

 祖母山の天気からすると
 豊玉姫と玉依姫の姉妹仲はよいようです。

 しかし
 豊玉姫の夫、山幸と海幸の兄弟喧嘩は
 海幸が山幸を攻め寄せるところまで激化。

 豊玉姫姉妹の父・海神の援助で山幸は勝利し
 海幸が服属することになります。
 (海幸は隼人の祖先だとか。ほんとうでしょうか?)

 喧嘩のきっかけは
 海幸が貸した釣り針を山幸がなくすというささいなもの
 現代の兄弟喧嘩とそうかわりません。

 事情は人類最初の兄弟もおなじ。
 兄弟は、エデンの園をおわれたアダムとイブの息子たち
 カインとアベル。

 カインは農耕人、アベルは放牧人。
 カインは作物をアベルは羊を神に捧げるも
 神はアベルをえこひいき。

 嫉妬にかられたカインはアベルを殺害。
 (当然のこととして、人類最初の殺人事件)
 カインはエデンの東、流離の地に追放されてしまいます。
 (エデンの東に刑務所があったのでしょうか?)

 この旧約の物語に取材したのが
 ジョン・スタインベックの小説「エデンの東」

 ジェームス・ディーン演じる映画のほうが有名ですが
 テレビドラマのほうが好きでした。

 舞台は、19世紀後半から第一次世界大戦に至る時期の
 アメリカ合衆国カリフォルニア州サリナス

 物語は、父親からの愛を切望する息子の葛藤、反発、和解を描いたもの。

 ここでは、弟によって母に引き合わされた兄のほうが
 衝撃のあまり軍に入隊して前線へと向かい、戦死(旧約とは逆)。

 最近ではジェフリー・アーチャーによる「ケインとアベル」。
 こちらでも、アベルの手によりケインに経済的破滅と死が。

 ことほどさように
 兄弟喧嘩というのは普遍的な現象でしょう。
 殺人にまでいたるものは少数だとしても。

 古事記には姉弟喧嘩もあります。
 高天原を追放されたスサノヲが
 アマテラスが治める高天原へと登っていくと
 アマテラスはスサノヲが高天原を奪いに来たのだと思い
 弓矢を携えて彼を迎えたとされます。

 兄弟姉妹の間における紛争は
 遺産相続が一般的。

 ともすれば財産の分割だけに関心がむけられがちですが
 実際にそこで隠れた問題となっているのは
 兄弟姉妹間の葛藤、親に愛されなかったという感情
 だったりします。

 財産問題だけに目を奪われていては
 真の紛争解決ができません。

 民法906条も
 遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質
 各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況
 その他一切の事情を考慮してこれをする
 と定めています。

 映画「エデンの東」のラストでは
 父が息子を必要としているというメッセージを伝えることで
 キャルの心の救済と父子の和解が成立。

 お隣の国どうしの兄弟喧嘩も
 なんとかうまく和解してほしいと願います。
 

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