2025年1月24日金曜日

白銀の八ヶ岳・年末年始の旅(4)諏訪大社4社詣で・前半

 

 12月31日朝である。さあどうしよう。予定では赤岳鉱泉から赤岳に登り、展望荘に宿泊して年を越し、新年初日の出を赤岳山頂で迎える計画であった。しかし、天気予報は登山に不適のC判定。稜線上では26メートルを超える強風が吹き荒れるらしい。

 赤岳に登るには文三郎道コースと地蔵尾根コースがある。こんな強風の日は、吹きっさらしの文三郎道コースは論外だ。地蔵尾根コースは樹林帯が長い。問題は稜線に出る直前のナイフリッジと稜線上の移動だ。

 いけそうな気もするが、万一ということもある。ツェルリーナではないけれども《行きたくもあり行きたくもなし》。遭難するリスクは5%程度だろうか。このようなとき、どうすべきだろうか。

 あれこれと総合判断して、山を下りることにした。後ろ髪をひかれる思い。

 当日、北アルプスの爺ヶ岳で大学生3人がテントを強風に吹き飛ばされ遭難したというニュースが流れていた。行かなくて正解か。大学生たちなら同情もかうが、いい年をした大人の行動としては顰蹙ものだろう。

 https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20250101/1000112687.html


 赤岳鉱泉から登山口である美濃戸口までは北沢をくだる。沢面では面白い氷をみることができた。


 さて帰りの飛行機は明日の夕方である。2日間、時間ができてしまった。どうしよう。

 よし1日目は、諏訪大社めぐりをしよう。九州の人間はあまり知らないだろうが、諏訪大社は4社ある。上社本宮、上社前宮、下社春宮、下社秋宮。諏訪湖の周りに点在している。丸1日時間があるので、せっかくだから全部参拝しよう。


 どこから廻ろうか。グーグルで検索すると、誰もが悩む問題らしい。本宮とあるのでここが大本だろうと、まずは上社本宮へ向かった。

 諏訪大社のお祭りといえば、御柱(おんばしら)祭が有名である。タクシーの運転手さんは祭の責任者をつとめたこともあるという。彼がいうには諏訪地方にはかって10万人の縄文人が暮らしていたという。ふんふん。

 諏訪信仰はユダヤ教と同根である。祝詞など共通するところが多い。・・・えーっ。どこまで信じていいか分からない愉快な話がつづく。

 上社本宮到着。境内は清浄なれど、正月準備でそわそわした感じだった。  


 つぎは上社前宮へ。運転手さんはタクシーを利用してほしそうだったが、歩く。歩いて10分ほどだ。前宮は4社のなかではもっとも地味だった。

 登山スタイルの大学生の2人組に声をかけられた。聞けば彼らも悪天を懸念して山を降り、諏訪大社4社詣での途中らしい。考えることはみな同じだ。安全策を選択した者どうし、奇妙な連帯感がうまれた。 


 水眼の清流。前宮の左手にある。パワースポットである。


 マンホールも縄文推し。八ヶ岳周辺は黒曜石が得られることで有名。ガラス質でナイフやヤジリの原料となる。遠い地方との交易品にもなったらしい。これでシカ・イノシシなども多数獲れることから、多数の縄文遺跡がある。

2025年1月23日木曜日

白銀の八ヶ岳・年末年始の旅(3)硫黄岳を経て赤岳鉱泉まで

 

 12月30日朝7時、本沢温泉を出発。夏沢峠→硫黄岳→赤岩の頭→赤岳鉱泉がきょうのコースである。天気は晴、A判定だが稜線上は20メートルの風が吹くと予報されている。

https://www.google.com/maps/place/%E9%95%B7%E9%87%8E%E7%9C%8C/@35.9988307,138.3626107,14.75z/data=!4m6!3m5!1s0x601d012318c98c6b:0x25c2b4f04bf0b94!8m2!3d36.1543941!4d137.9218204!16zL20vMDE4amsy?entry=ttu&g_ep=EgoyMDI1MDEyMS4wIKXMDSoASAFQAw%3D%3D


 10分ほどで左手に谷が現れる。この谷をすこし登ったところに例の野湯がある。


 谷をつめたところが硫黄岳だ。往古の噴火で山の北半分が吹っ飛び、南側半分だけの爆裂火口となっている。今日はこの爆裂火口の東(右)側の縁にそって登る。


 樹林帯。先行するカップルに追いついた。


 爆裂火口がぐんぐん近づいてきた。


 昨日午後の降雪が木々にへばりついている。美しい。


 夏沢峠(2432m)、山びこ山荘。夏泊まればモモンガが観察できる。冬期は閉鎖されている。ここからは稜線・森林限界となり、北西の季節風にきびしく吹き付けられることになる。


 北方をのぞむ。佐久平越に浅間山。美しい。


 硫黄岳の北斜面を登っていく。北西(右側)の季節風が強い。あきらめて引き換える登山者もいる。


 振り返れば天狗岳。西天狗と東天狗の双耳峰。女性登山者が情報交換している。「山頂は風がきびしかったですか~。わたしにも登れますか~」とか。


 東の方。諏訪湖の向こうは北アルプス。この快晴のなかでも、槍・穂高はガスのなかだ。


 さらに南に目を転じると(左から)、御嶽山に乗鞍岳。


 山頂2760m。硫黄岳の山頂は平になっている。ガスで視界不良だと、道迷いしやすい。


 誰だろう。写真には写らないが強風。ゴーグルを外せない。背景は中央アルプス。


 北に赤岳と阿弥陀岳。北岳には明日登る予定だ・・・ったのだが。


 爆裂火口上部。爆裂のすさまじさを感じさせる。


 エビの尻尾。左側が北西、風で飛んできた水分がどんどん付着していくため、風上側に成長していく。


 名残おしいが下山開始。


 途中振り返る。


 赤岩の頭2656m。このあたりに森林限界がある。左は阿弥陀岳。その奥は南アルプス。


 赤岩の頭から振り返る。八ヶ岳ブルーが美しい。


 森林限界から樹林帯に入る。


 沢を渡る。赤岳というだけあって、川床が赤い。氷の華が咲いていた。


 赤岳鉱泉小屋。ここもつららがついている。きょうはここまで。さて明日はどうしよう。

2025年1月22日水曜日

白銀の八ヶ岳・年末年始の旅(2)本沢温泉まで

 

 29日(日)朝7時30分、稲子湯温泉を出発。この日の天気は、山登りには向いていないC判定であった。特に昼過ぎから天気が崩れ、風速25メートル以上の強風が吹く予報である。それでも出発する。

 八ヶ岳は北アルプスに比べれば、風雪がすくなく冬でも天候が安定している。日本海で大量の水分を吸収した大陸の寒気が北アルプスの山々に北西の季節風を吹き付け、大量の雪を降らせる。八ヶ岳では、北アルプスを越えてきた寒気や季節風の影響を受けるので、影響は2次的である。

 特に、本日のコースは八ヶ岳の東側を登っていくことになるので、さらに北西の季節風の影響を受けにくい。そのためC判定ではあるが、本沢温泉までは行けると判断した。

https://www.google.com/maps/place/%E9%95%B7%E9%87%8E%E7%9C%8C%E9%95%B7%E9%87%8E%E5%B8%82/@36.0281965,138.3818395,14.75z/data=!4m6!3m5!1s0x601d805de6344499:0xf128a974072892c8!8m2!3d36.6485258!4d138.1950371!16zL20vMGdwNXBy?entry=ttu&g_ep=EgoyMDI1MDExNS4wIKXMDSoASAFQAw%3D%3D

 日の出。東の空が暖色から寒色に変化していく。冬もあけぼの。やうやうしろくなりゆく、山ぎは少しあかりて・・・。


 登り始めはカラマツの美林である。カラマツは落葉松と書く。針葉樹でありながら唯一落葉するから。針葉樹林でありながら、冬は樹林のなかも明るい。


 サルオガセ。樹の枝等に付着して垂れ下がる糸状・薄衣状の地衣類である。麻裃(おがせ)は紡いだ麻糸を枠にかけて巻き取ったものをいう。

 中国のサルが食べている映像をみたことがあるが、ニホンザルも食べるのだろうか。

 地衣類は、菌類だが、シアノバクテリアなど藻類を共生させることで自活できるようになった。八ヶ岳はコケ類が豊富であるが、コケとは別ものである。

 地衣類は、霧などから直接水分を吸収するため大気汚染に対して敏感。サルオガセがみられるということは、八ヶ岳の空気が清浄である証拠である。


 写真左側はカラマツであるが、右側はシラビソである。シラビソはマツ科モミ属の常緑高木。亜高山帯に生える。

 亜高山帯は山地帯と高山帯の間の植物や動物の垂直分布帯。標高1500~2500m。常緑針葉樹林帯で覆われている。

 登りながら高度を上げ、いままさに山地帯から亜高山帯に入ろうというところである。


 カラマツはみられなくなり、シラビソ林。
 

 下山してきた登山者と離合する。離合は方言。標準語では行き違うだろうか。雪がどんどん深くなってきた。


 きょうの中間点、しらびそ小屋。半分雪に埋まっている。ここに泊まると、森からリスが遊びにやってくることで有名。


 リスは見当たらず。リスは冬眠するんだったかな。シジュウカラが5羽遊びにきていた。200カラだな。屋根にはつらら。



 しらびそ小屋の裏はミドリ池。氷結している。池の真ん中にはお兄さんが絶景にひたっていた。晴れていれば樹林の向こうに天狗岳を望むことができる。


 ふう。ようやく本沢温泉に到着。天候が悪化するまえに到着することができた。きょうはここで宿泊だ。

 本沢温泉は日本最高所にある野湯で有名。ここからさらに10分登ったところにある。厳重装備をしていかないと、湯に向かう途中で遭難するおそれがある。
 
 この日入るべく行ってみた。が、野湯は谷にあり強い寒風がふきすさんでいた。脱衣所はおろか寒風をふせぐ構造物は一切ない。脱衣さえ飛ばされそうだし、低体温症になりそうなので断念。

2025年1月21日火曜日

白銀の八ヶ岳・年末年始の旅(1)稲子湯温泉まで

 

 年も明けて20日以上たってしまったが、年末年始の旅のご報告。例年どおり白銀の八ヶ岳をめざした。

 27日(金)は事務所のご用納め。この日のことはボードゲーム「カタン」で盛り上がった年末懇親会で報告したとおり。


 昔は懇親会を途中で切り上げて山に向かっていたが、事務所の代表となったいまはそうもいかない。懇親会の結びまで出席すれば、その日に山に向かうことはできない。

 翌28日(土)、朝一番の飛行機で羽田空港へ向かう。八ヶ岳は長野県にあり、西側からも東側からも登れる。西側から登るときは茅野駅がメイン登山口である。その場合はJRを利用する。今回は東側の松原湖駅を利用するので飛行機利用とした。
 
 年末年始、寒気が南下する影響で日本海側を中心に雪もよいの天気予報であった。日本海気候の福岡は寒気の影響でどんよりと曇っていた。


 松本へ飛ぶときは飛行機の向かって右の窓側K席を予約する。東京羽田へ飛ぶときは飛行機の向かって左の窓側A席を予約する。なぜか。どちらも富士山がよく見えるから。

 飛び立ってしばらくは地上風景はみえなかった。見えるのは雲海ばかり。これはこれで美しい。


 しばらくすると、大阪湾上空。下方は淡路島。向こうに神戸の街並みと六甲の山並みが見えている。
 

 またしばらくすると、東京湾上空。向こうにうっすらと富士山がみえている。残念ながら霞んでいる。


 東京からは長野・北陸新幹線で佐久平をめざす。


 あさま号は大混雑。手前のほう3人はインバウンドと思われ、中国語を話していた。混雑の状況についてクレイジーと、なぜかそこだけ英語で嘆いていた。


 佐久平駅。ここで小海線に乗り換える。駅北側には冠雪した浅間山がみえるはずだが、降雪中のためガスにおおわれている。


 小海駅。

 小海線は長野県の佐久平と山梨県の小淵沢を結ぶ。八ヶ岳の東麓の高原を走り、別名は八ヶ岳高原線。高原を千曲川の上流が流れている。

 甲斐小泉-海尻間では標高1,000メートルを超え、清里-野辺山間には標高1,375メートルの日本全国JR線で最高地点がある。野辺山は標高1,345メートルのJR線最高駅。甲斐小泉から松原湖までの9駅が標高の高いJR駅ベスト9である。


 松原湖駅で降りる。他の乗客はいない。駅からはバス便はない。タクシーを呼び、稲子湯温泉をめざす。
 https://www.google.com/maps/place/%E6%9D%BE%E5%8E%9F%E6%B9%96/@36.0543507,138.4202476,14.56z/data=!4m6!3m5!1s0x601c390c9188339f:0x6fe3ac1e02dead3f!8m2!3d36.0531326!4d138.4568647!16s%2Fg%2F1215vvgz?entry=ttu&g_ep=EgoyMDI1MDExNS4wIKXMDSoASAFQAw%3D%3D

 松原湖は氷っていた。ワカサギ釣りができるらしいが、人影はみえない。途中から雪道となり、雪がふりしきるなか、稲子湯温泉に到着した。今夜はここで泊まる。

 明日からはじまる冒険を前に、不安と心躍る思いが交錯していた。

2025年1月20日月曜日

はげまされた年賀状-「ポジティブ心理学」

 

 ことしの年賀状は数がすこし減った。昨年になされた郵便料金値上げの影響のようだ。同級生がつぎつぎとリタイアしていっていることもあろう。そうしたなか、ある年賀状に励まされた。

 司法試験に合格すると、司法修習が2年間あった。湯島に司法研修所(現、岩崎弥太郎邸)があり、そこで前半4か月と後半4か月の計8か月全国の司法修習生が統一修習を受けた。

 そこで同じクラスだったのがSさんだ。Sさんは3年くらい年長で、年長者グループで年長者らしい遊びをし、九州の田舎から出てきたわれわれ若輩者たちとはあまり遊んでくれなかった。いまは大阪で弁護士をしていらっしゃる。

 そのSさんからいまも変わらず年賀状をいただく。そのコメントにこうあった。「ポジティブ心理学」の貴稿を今も机上において生きています!!


 「ポジティブ心理学」の貴稿とは、おそらく9年前の事務所ニュース、2016年新春号に私が書いた原稿のことだ。

 https://www.chikushi-lo.jp/_src/82311893/2016haru.pdf?v=1736382530966

 こう書いた。

 「ポジティブ心理学」なるものが注目されています。それによる幸せになるための10の方法。
 ①1日3回以上「ありがとう」を言う、②モノより経験を買う、③幸福はお金で買えない(ある額に達すると、それ以上の収入は幸せと関係しなくなる)、④1日8回抱擁する、⑤たくさん笑う、⑥幸せな人と一緒にいる、⑦人に親切にする、⑧仕事前に運動する、⑨ボランティアをする、⑩他人のためにお金を使う。
 なるほど、最近、心がけています。そのせいか幸せ度がややアップしました。というわけで、ありがとうございます。

 この事務所ニュース、この原稿を今も机上において生きていますという。新年早々、とても励まされた。なんとありがたいことだろう。感謝感謝。

 今年は司法研修所卒業40周年の集まり(10年ぶり。35周年はコロナで中止になった。)が大阪で予定されている。しばし、幸せなSさんと一緒にいることとしよう。