2011年1月7日金曜日

 「ロビン・フッド」と十字軍


 新春映画の洋画部門は「ロビン・フッド」を推します
 といっても、「トロン」「ハリーポッター」との3択ですが。
 (しかも時宜を失した感もあり)

 ロビン・フッドは、弓の名手で伝説の義賊
 中世イングランドが舞台。
 
 ロビンの本拠地はノルウェイの森ならぬシャーウッドの森
 私の好きな天海祐希さんが家のCMをやっています。 

 日本でいれば、義経伝説みたいな感じ
 12世紀末~13世紀初という時代的にも庶民の判官びいきなところも。

 日本では源平の武勇伝を琵琶法師が語りひろめ
 ヨーロッパでは騎士物語を吟遊詩人が吟じたところも似ています。
 
 吟じます!
 じゃなくて、演じてます。
 
 ロビン・フッドは源義経と同じく繰り返し映画化され
 過去にはショーン・コネリー(76年)、ケビン・コスナー(91年)
 など蒼々たる俳優が
 本作では「グラディエーター」のラッセル・クロウが演じてます。

 登場するイングランド王は
 リチャード1世とジョンの兄弟。

 あ、それから実は隠れてもう一人出ていますが
 わかります?

 答えは、エリザベス女王。

 というか、映画「エリザベス」で女王を演じたケイト・ブランシェット
 本作ではロビンの恋人マリアン役でした。

 16世紀にイングランドを率いた女王の300年前の前世が
 反イングランド国王(義賊)側の恋人だったとは!
 
 さてリチャード1世といわれてもピンときませんが
 通称、リチャード獅子心王と呼ばれます。

 獅子心王といわれてもなおピンときませんよね
 ライオンハートならいかが?

 スマップの歌にありますね
 「らいおんハート」ですが。

 恩田陸さんの小説にもあります。

 彼が獅子心王と呼ばれたのは、在位中ほとんど
 十字軍(第3次)にのめり込んでいたためです。

 十字軍は、中世におけるキリスト教の聖地エルサレムの奪還作戦
 でもエルサレムはイスラム側にとっても聖地
 ま、イスラム教もキリスト教も兄弟宗教だから当然の帰結です。 

 イスラム側のリーダーは名君サラディン
 それもあって十字軍(第3次)は聖地の奪回に失敗します。

 キリスト教とイスラム教が兄弟宗教なのはユダヤ教とおなじく
 アブラハムの宗教の系譜に連なる唯一神教だから。

 兄弟が殺し合うのはカインとアベルの時代からの伝統ではありましょうが
 今日のように激しく対立するようになったのは十字軍が契機。

 聖地奪還といっても、十字軍以前に
 エルサレムが英仏独の国土だったことはありません。

 エルサレムで処刑されたキリストの教えを彼らが信仰することになり
 その結果、エルサレムが英仏独にとっても聖地となったにすぎません。
 (独は神聖ローマ帝国としてローマ帝国の後継者というロジックもあり)

 強引にたとえれば、元寇のときにフビライハンが神道に改宗したうえで
 「聖地・伊勢を奪還する!」と強弁しているようなもの
 とても侵略戦争を正当化できるロジックとはいえません。

 攻撃を受けたイスラム側からすれば、領土的野心にもとづく侵略戦争
 としてしか理解できなかったのも当然でしょう。

 このような歴史的事実をふまえ、ケビン・コスナーもラッセル・クロウも
 ライオン・ハートにしたがい、十字軍に参戦しています。

 しかしケビン版とラッセル版では十字軍に対する考え方が
 まったく違っています。

 ケビンはイスラム軍に虐待される捕虜の1人だったのに対し
 ラッセルはイスラム教徒の捕虜2700人余の処刑(歴史的事実!)
 について獅子心王を批判しています。

 なぜ、こんな違いがでたのでしょうか?

 ケビン版がつくられたころ(91年)、
 イラクがクウェートに侵攻したのを機に、多国籍軍がイラクを空爆し
 湾岸戦争が勃発しています。

 十字軍は、英(米はまだ含まれています)仏独らの多国籍軍
 湾岸戦争を十字軍の延長戦ととらえることは自然なアナロジーです。

 ケビン版はサダム・フセインの暴虐を
 ラッセル版は湾岸戦争の不正義をダブらせて訴えてもいるのでしょう。

 湾岸戦争が十字軍の延長戦だとすると、そこに日本が参戦するのは
 少なくも宗教的な観点からはとても説明が難しいようで…。
 

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