2011年1月19日水曜日

 「武士の家計簿」と家計改革


 享保・天明・天保と大飢饉があいつぎ
 江戸時代末期、幕府・加賀藩の財政も火の車。

 火車は、仏教用語で地獄の責め苦のひとつ
 転じて、財政や家計が火であぶられるように苦しい状態。

 宮部みゆきさんの小説に「火車」とあったとおり
 多額の負債で身動きがとれない状態でもあります。
 
 世間がこのような状況のなか
 加賀藩の下級武士である堺雅人さんの家庭だけ安泰
 ということはありえません。

 やはり債務超過、破綻(支払不能)寸前の状態です。

 破産法は、支払不能または債務超過にある債務者の財産等の
 清算に関する手続を定めています(1条)。

 堺さんの家も債務整理をおこない、収支を均衡させて
 借金にたよらない家計への財政改革を断行する必要がありました。

 まずは、債務を整理するための資金を捻出するため
 価値ある家具・家宝類をすべて売却して整理資金をつくることに。
 
 とはいえ、これまで慣れ親しんだ贅沢な暮らしを
 武士の体面もあり、変えることはなかなかむずかしい…
 抵抗勢力の筆頭は、父・中村雅俊と母・松坂慶子。
 
 改革の試金石となったのは、大事な長男の元服祝いの席
 堺&仲間夫婦は画に描いた餅、ならぬ画に描いた鯛を供して
 内外に改革姿勢をしめそうとします。

 抵抗勢力の不満顔のなか
 堺さんは中間さんの父・西村雅彦さんの支持をとりつけ
 なんとか祝いの席を乗り切ります。

 抵抗勢力も堺さんの本気を得心し
 以後、そのリーダーシップにしたがっていきます。 

 堺さんは、家財を売って捻出した整理資金を懐に
 金貸し業者と債務整理の交渉をおこないます。

 整理資金を返済してもなお残る借金について
 整理案は、将来の利息(18%のようでした。)をカット
 元金のみを分割で支払っていくというものでした。

 いまなら弁護士に交渉を依頼するところですが
 そこは計算に強い堺さん、自分でやります。

 金貸し業者も、ふつうの武士にみられぬ
 一本筋のとおった交渉を評価し、整理案を受諾。

 じつは、それからの日常の家計運営こそ大変
 家計簿をつけながら、やりくり生活を送ることに。

 個人再生事件や破産事件でも、裁判所から家計簿をつけるよう
 指導されます。

 その日食べたものを書き留めるだけのダイエット法がありますが
 それとおなじで、出費を書き留めるだけで無駄な支出を減らす
 効果があります。

 ふつうは「金の切れ目が縁の切れ目」「火車から火宅の人へ」
 借金で家計がおかしくなると、夫婦仲もおかしくなるところ。

 そこは仲間さんの「内助の功」が光ります。

 そういえば、仲間さんは大河ドラマ「功名が辻」でも
 山内一豊の妻・千代として「内助の功」を演じていました。

 苦難にあるときこそ、幸せと不幸の分かれ目の「辻」に
 立っているわけです。

 堺&仲間夫婦は苦難にめげるのではなく
 「鯛じゃ、鯛じゃ」と喜びに変え
 家族のきずな・結束を強める契機としていました。

 「仲(間)」がいい夫婦はここがちがいます。
 

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