2011年4月26日火曜日

 労災事故&交通事故&医療事故


 労災事故&交通事故&医療事故?という3重困難な事件が解決しました。
 作業中に交通事故に遭い、診断・治療が遅れ、障害が後遺した事案。

 労災保険は所得の一部と慰謝料等を補償するものではないため
 不足分の損害賠償を求めて雇主、車の所有者らを訴えたものです。

 損害保険と生命保険のちがいをご存じでしょうか?
 生命保険は加入している口数だけ保険金がおります。

 これに対し、損害保険は複数口加入していても1口しか出ません。
 それにより損害が補填されるからです。

 医療裁判のハードルのほうが高いこともあり
 労災・交通事故裁判に専念することにしました。
 (2兎を追うものは1兎も得ず、なので)

 福岡地裁で勝訴判決を獲得し、被告らが控訴したものの
 福岡高裁で和解が成立しました。

 一審では、労災事故・交通事故の発生そのものが争点に
 労災事故の性格上、目撃できる者は被告企業に集中し多勢に無勢。

 さらに、もととなった症状の診断がおくれたために
 障害をひきおこした事故の存在そのものも不安定に。

 (むかし短期間に3度交通事故に遭ったために、因果関係の証明が
 難しくなった事件がありました。複数の不幸に遭うとさらなる不幸が
 まっているというのが訴訟制度の難しいところ)

 それでも長期間にわたる治療実績があることや
 労災による障害認定を受けていたことから、一審勝訴。

 高等裁判所では、労災事故・交通事故の存在を前提に  
 主に、事故と障害との間の因果関係が争われました。

 障害の発生原因が他にあるという、いわゆる他原因主張です。
 他原因が医学的な論点であったことから、医学論争となりました。

 損保会社側からは、医師の鑑定書が複数提出されました。
 当方も、診療にあたった医師の鑑定書を2通提出しました。

 この段階で、高裁から和解勧告がなされました。
 和解案は、事故と因果関係を認めた上で、素因減額をするというもの。

 素因とは、損害の発生及び拡大に影響を及ぼす被害者側の事情
 その理由により、賠償額を減額するのが素因減額の考え方です。

 一審・福岡地裁が認めた賠償額が削られることに不服がありましたが
 高等裁判所の和解案であることを考慮して受諾、和解が成立しました。
 
 裁判は証拠によって事実を立証しなければならず
 複数の要因が重なると、すべての事実が存在しないことにも。

 そんな錯綜した事件でした。
 

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