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2022年6月30日木曜日

Y先生

 


 紅花が咲く季節になった。ジブリ映画『おもひでぽろぽろ』で、生き方に迷った都会のOL主人公が向かったのは山形の紅花畑だった。

今朝はなぜか亡Y先生のことを思い出す。数年前にお亡くなりになった。10年以上先輩で、福岡県弁護士会で何番目かの女性弁護士である。いまでこそ女性弁護士は増えたが、先生が登録されたころは数もすくなく、パイオニア的存在だった。

紛争当事者はいわゆるおっさんも多く、女性とみるだけで侮ってかかることが少なくない。いまでもそうだ。むかしは推して知るべしである。

とはいえ、事件で引き合い(相手方)となることもなく、会務でご一緒することもなかった。ところが、あるとき唯一の接点ができた。お亡くなりになっていることだし、もう時効だからここに紹介してもよかろう。

あるとき、紛議の申立を受けた。紛議とは弁護士の職務遂行の仕方について顧客が弁護士会に苦情申立をおこない、解決を求める制度である。先生はその担当委員になられた。

同事案は、労災事故。一審では事故かどうかの事実論と会社の責任論が厳しく争われた。そこをなんとか勝訴に導くことができた。損害論は争われず数千万円の賠償が認められた。

控訴審では相手方弁護士は作戦と争点を変更して、損害論を争った。当方被害者には既存障害(事故以前からあった障害)があったとして、賠償額の減額を求めた。高裁は和解勧告を行い、損害額は半分に削られた。

依頼人との間で何度も和解を受けるかどうか協議し、方針確認書を3通作成、署名・捺印を得たうえで和解に応じた。

ところが、前記紛議の申立である。このような和解に応じたことには弁護士の職務遂行として問題があるというのである。

高裁の和解に応じたというだけでも弁護士の責任はないと思われるが、方針確認書を3通作成し、依頼人の承諾を(もちろん、署名・捺印も)得ているのであるから、当職に責任はない。そもそも普通の弁護士であれば、一審での勝訴もおぼつかなかったであろう。そう争った。

通例、紛議委員は、相手方の顔もたてて、なかとりの示談を勧めることが多いという。Y先生と協議した。示談を勧められるかなと思ったら、「こんなのに負けちゃダメよ。」と励まされた。

これには感銘を受けた。これほど強い言葉はあまり聞かない。紛議委員という立場上、もっとあいまいな表現になるのが通例であろう。

さすが女性弁護士としてのパイオニア。数々のご苦労をなさってきたことだろう。そのなかで培われた確かな正義感と、それに基づく後輩弁護士への指導と受けとめた。いまでも感謝している(紛議のほうは、しばらく尾をひいたが、申立人が無事あきらめてくれた。)。

2011年4月26日火曜日

 労災事故&交通事故&医療事故


 労災事故&交通事故&医療事故?という3重困難な事件が解決しました。
 作業中に交通事故に遭い、診断・治療が遅れ、障害が後遺した事案。

 労災保険は所得の一部と慰謝料等を補償するものではないため
 不足分の損害賠償を求めて雇主、車の所有者らを訴えたものです。

 損害保険と生命保険のちがいをご存じでしょうか?
 生命保険は加入している口数だけ保険金がおります。

 これに対し、損害保険は複数口加入していても1口しか出ません。
 それにより損害が補填されるからです。

 医療裁判のハードルのほうが高いこともあり
 労災・交通事故裁判に専念することにしました。
 (2兎を追うものは1兎も得ず、なので)

 福岡地裁で勝訴判決を獲得し、被告らが控訴したものの
 福岡高裁で和解が成立しました。

 一審では、労災事故・交通事故の発生そのものが争点に
 労災事故の性格上、目撃できる者は被告企業に集中し多勢に無勢。

 さらに、もととなった症状の診断がおくれたために
 障害をひきおこした事故の存在そのものも不安定に。

 (むかし短期間に3度交通事故に遭ったために、因果関係の証明が
 難しくなった事件がありました。複数の不幸に遭うとさらなる不幸が
 まっているというのが訴訟制度の難しいところ)

 それでも長期間にわたる治療実績があることや
 労災による障害認定を受けていたことから、一審勝訴。

 高等裁判所では、労災事故・交通事故の存在を前提に  
 主に、事故と障害との間の因果関係が争われました。

 障害の発生原因が他にあるという、いわゆる他原因主張です。
 他原因が医学的な論点であったことから、医学論争となりました。

 損保会社側からは、医師の鑑定書が複数提出されました。
 当方も、診療にあたった医師の鑑定書を2通提出しました。

 この段階で、高裁から和解勧告がなされました。
 和解案は、事故と因果関係を認めた上で、素因減額をするというもの。

 素因とは、損害の発生及び拡大に影響を及ぼす被害者側の事情
 その理由により、賠償額を減額するのが素因減額の考え方です。

 一審・福岡地裁が認めた賠償額が削られることに不服がありましたが
 高等裁判所の和解案であることを考慮して受諾、和解が成立しました。
 
 裁判は証拠によって事実を立証しなければならず
 複数の要因が重なると、すべての事実が存在しないことにも。

 そんな錯綜した事件でした。