2016年1月15日金曜日

従業員が競合会社を設立できるか?



【賃貸管理等を行う不動産業者の従業員が在職中競合会社を設立し,従来の顧客を奪ったことにつき不法行為が肯定され,管理委託費用相当額の逸失利益の損害が認められた事例】

 判例時報平成28年1月11日号に掲載された東京地判平成27・3・30の事例判決です。

 X会社社長が信頼していた右腕社員Yが他の社員と顧客をごっそり引き連れて隣で商売をはじめたときに,X会社はYに対し差止めや損害賠償請求ができるのか?

 中小企業の社長によくある誤解ですが,なんとかできると考えられている方がおおいと思います。しかし,原則として差し止めや損害賠償請求はできません。理由は,自由競争の範囲内だから。

 もちろん例外はあります。自由競争の範囲を逸脱した場合,損害賠償請求ができます。
 本判決は,この例外を認めた事例判決です。

 本件では,Yが在職中から開業準備行為を行っており,顧客に対する営業活動を行っていたものと推認し,引継物件のパソコン内のデータを消去するなどしたことから,違法な態様でXの営業活動を妨害し,顧客に対しても虚偽の説明をして勧誘したものであり,社会通念上自由競争の範囲を逸脱したものであるとしました。

 逆に言えば,これだけの違法な態様,虚偽の説明を立証しないかぎり,自由競争の範囲内に収まってしまい,X会社側の敗訴となってしまうわけです。

 それでは,X会社としては,なんの防御もできないのか?
 この点,競業避止契約を従業員と結んでおくことで,一定防御することができます。

 ですが,これも万能ではなく,従業員の独立・競業を100%シャット・アウトすることはできないことになっています。

 そこから先は,従業員が反旗をひるがえさないよう,どこまで良好な労使関係を結んでいけるかという経営者としての力量が試される領域となります。

 ご参考まで。

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