2016年1月15日金曜日

相続人の不存在と特別縁故者に対する相続財産の分与



現在,福岡家庭裁判所から依頼を受け,ある方の成年後見人になっています。
その方には相続人がいません。

民法上,相続は,遺言を書かなければ,法定相続ということになります。

法定相続の場合,相続人の定めがあり,配偶者,子,その代襲相続人(孫など),子がないときは両親,両親が亡くなっているときは兄弟姉妹,その代襲相続人(甥,姪まで)となっています(民法886条~890条)。

そのため,妻側のそれ以外の親族,夫側(義理)の両親,兄弟姉妹,その代襲相続人(甥,姪)などの親族がおられたとしても,その方々は相続人ではないことになります。

そのようなときは,相続人が不存在であるということになります。その場合,家庭裁判所により相続財産管理人が選任されます(民法952条)。

相続財産管理人は,相続債権者や受遺者に支払いを行い,相続人を捜索します。
これにより,相続人が見つからず,相続財産が残ったときは,国庫に帰属することになります(民法959条)。

これは先ほどのご親族や被相続人に縁故のあった方々からすると,まことに残念な結論です。
そこで,例外が用意されています。それは次のような場合・方々です。

①被相続人と生計を同じくしていた者,②被相続人の療養看護に努めた者,③その他被相続人と特別の縁故があった者。

このような場合・方々には,その請求により,家庭裁判所は,相続財産の全部又は一部を与えることができます(民法968条の3)。

法律の条文に枝番がついているときは,あとから法改正がおこなわれたことを示しています。
本条文も,枝番がついているので,あとから法改正がおこなわれたものです。

東京家裁審判,平成24・4・20(判例時報2275・106)は,これを認めた事例判決です。

生前や死後の縁故の程度に応じて,被相続人の相続財産総額1億4000万円の預金のうち,被相続人の義理の姪に500万円,義理の従姉妹に2500万円をそれぞれ分与しています。

法定相続(人)制度の硬直性を事案に応じて具体的妥当性を図った判断といえるでしょう。
遺言の作成により,生前に問題に解決することが望ましいことはいうまでもありません。

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