2023年4月26日水曜日

賃借人から騒音被害を訴えられた件(和解解決)

 
 賃借人から騒音被害を訴えられた裁判が和解で解決した。

これまで被害者側から依頼を受け、4件ほど解決した経験がある。こんかいは、家主側、つまり「加害者側」から依頼を受けた初のケースである。

騒音被害訴訟として有名なのは、空港や基地、それに新幹線騒音訴訟だろう。自身が経験したのは、工場騒音や鉄道騒音であった。今回は生活騒音である。

場所は賃貸アパート。「被害者」はその住人の一人。騒音被害により、精神を病んだとして損害賠償を請求された。

当方は「加害者側」といっても、直接の加害者ではない。直接の加害者とされるのは他の住人たち。隣の住人が夜間に騒いでうるさい。

家主は賃貸人としてそれを止めさせる義務がある。それを怠っていたのだから、管理懈怠の責任があるという。

騒音被害については、行政法規ではあるが、騒音規制法や自治体の条例が重要である。

https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/soushinsyu-top.html

地域、時間帯等により、許容される騒音の大きさ(単位デシベル)が決められている。行政や業者に依頼したり、騒音測定装置を借りてきて自分で測定したりする。本件ではアプリで測定したという。

本来は、測定の仕方、つまり測定する距離などが決められている。本件では、隣人が騒いだことが何度かあり、そのうち1日だけ測定し、何度か規制値を超えているという。

一般に、騒音被害といっても、そのような点の被害では弱い。一定時間継続した被害である必要がある。本件では精神を患ったとされるが、騒音との関係は微妙だ。

地域も問題である。当該物件はJRの線路横にある。賃料も低額である。隣人の騒音以上に鉄道騒音のほうが深刻なはずである。賃料が低額だと隣人被害に悩まされる可能性が高いとの一般論はネット上でも議論されていた。

そしてなぜか、家主だけが被告とされた。隣人たちは訴えの対象となっていない。なぜだろう。最後まで分からなかった。家主にも責任がないとはいえないが、副次的なものだろう。

あとは当方が対応を怠ったとの点であるが、苦情申入れの都度、加害者側の住民に注意を発し、そのことを被害者に報告していた。これらはメールでなされており、すべて立証することができた。

以上のような次第で、家主は1円も支払わないで本件を解決することができた。めでたしめでたし。(自身も騒音被害には弱いので、被害者には同情を禁じ得ないが、ここは家主から依頼を受けた弁護士の立場で。)

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