T弁護士はいま、音楽過敏症である。事務所にながれるBGMを聴きながら、「この曲はドリカムの○○や。」などと言っている。
ある日、家庭裁判所の電話の保留音に脱力すると言いだした。たしかに。その点は同感である。♪プァファファファーファファ・・という保留音である。壊れた金管楽器のような音がしている。
ぼくも前からなんじゃこれはと思っていた。裁判所の保留音としては、もうすこし威厳のあるものがよろしかろうと思っていた。
ひっとすると意図的に脱力をねらっているのかもしれない。裁判所に苦情を持ち込む人は少なくなかろう。そうすると、保留音としては覚せい系より脱力系のほうが窓口業務が楽になる。
何の曲だろうと検索してみた。検索ワードは「家庭裁判所×保留×音楽」あたりか。
この問題にはやはり何人かの弁護士が感心をもっていたようである。①裁判所の電話保留音、②裁判所は演歌がお好き、たぶん。③電話の保留音などの表題がヒットした。いずれも法律事務所のブログのようだ。
①は神戸の弁護士。音楽はベートーベンのピアノ・ソナタ「悲愴」第3楽章だという。へ~神戸ではそうなのか。しかし、福岡のは違うだろう。
②は大阪の弁護士。保留音は演歌であるという。しかし、事務員さんはベートーベンと主張して譲らないらしい。
③もまた大阪の弁護士。関西の弁護士はみな音楽過敏症なのだろうか。こちらの話題は裁判所の保留音ではなく、福岡市役所のそれ。以前はチャゲ・アスのアスカの曲だったらしいが、彼が不祥事を起こしたあとはカーペンターズの曲に変更されたという。
ぼくの調査への情熱はここで尽きた。山積みの仕事へと戻っていった。しかし、T弁護士の探究心はそれぐらいのことでは満足しなかったようだ。
翌日、T弁護士があの曲は、ベートーベンの悲愴だという。そんなはずは・・と思いつつ、冷静に考えてみると確かにそうだ。なぜ?きっと、最高裁のお偉方のどなたかの意見なのだろう。
しかし、楽聖の偉大な音楽、しかも「悲愴」と名付けられている曲をあのように脱力系にアレンジしてよいものだろうか。
T弁護士から、うちの保留音は何か知ってますか。追い打ちがかかる。し、知らぬ。誇らしげな笑いを浮かべながらT弁護士が言うことには、カーペンターズの「青春の輝き」らしい。たしかに、そうだ。
調べてみると、76年のリリース。高1のときだ。そういえば、ラジオの深夜番組でよく聴いた。46年の時をへて、いまよみがえる名曲。数ある名曲のなかで、なぜ「青春の輝き」なのか。これにもきっとドラマがあるのだろう。
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