2023年3月31日金曜日

トランプ前大統領を起訴 不倫口止め料巡る疑惑

 

  今朝出勤まえにNHKのニュースをみていたら、トランプ前大統領を起訴したと速報していた。容疑は、前大統領が不倫相手(ポルノ女優)に口止め料を支払ったというもの。日本ではちょっと考えられない容疑だ。

https://www.asahi.com/articles/ASR3N6CRDR3MUHBI00Q.html

大陪審による起訴というのだから刑事事件である。日本の刑法にも関係しそうな条文はある。証拠隠滅罪(104条)や偽証罪(169条)、それらの教唆罪(61条)である。しかし、どうだろう。

まず証拠隠滅罪の「証拠」は刑事事件のものにかぎられる。戦前はともかく、戦後、不倫(不貞)は犯罪ではなくなった。民事上の離婚原因もしくは慰謝料賠償原因にとどまる。したがって、不倫相手に口止め料を払っても、証拠隠滅罪にはならない。

偽証教唆には理論的にはなりそう。しかし、100%捜査の対象とはならないだろう。一般的には、捜査機関は「忙しい」のだ。

偽証罪が問題にされるのは、捜査機関に敵対的もしくは不利な証言をしたときだけだろう。捜査段階で犯人はAだと供述していた証人が法廷で、じつは警察に誘導されてそう供述したけれども真実は違うなどと証言したような場合など。

英米の法廷小説を読んでいると、法廷侮辱や司法妨害という言葉にぶつかる。しかし、日本の裁判所はこうした事象に対して寛容もしくは鈍感である。

日本は仏・独など大陸系の法制度といわれている。これに対するのは英米法である。大きくは制定法か判例法かの違いである。さらに英米法は適正手続の尊重がうたわれる。日本国憲法も適正手続を要求している(31条)。しかし、日本の裁判所はこれを軽んじてきた。Aが犯人であれば、捜査機関が少々手続を無視してもよいではないかというのである。

民事事件の証拠が改ざんされていたり、明らかに偽証がなされている事案に時々ぶつかる。しかし、裁判所はやはり寛容である。いわゆる証拠をどう評価するかの問題としか考えていない。

本件で起訴されたのは、前大統領である。次期大統領選への立候補を表明し、公然たる影響力を行使している。日本では考えられない。

アメリカという国家や人々のやり方にはついていけないことが多々ある。しかし、このような是々非々(むろん政治的思惑が背景にあるだろうけれど)という行動に接すると、うらやましくも思う。

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