とある代金請求事件。請求事件といっても、裁判で訴えられている側である。
進行中の事件であるから、あまり詳しいことは書けない。下手をすると、相手方の弁護士から準備書面に引用されて、ブログではこれこれしかじかと書いていたではないかと揚げ足をとられかねないから。
相手方はある団体。こちらはその団体に所属している構成員。あるサービスに関する代金を請求されているのであるが、こちらはそのサービスを利用していない。サービスを利用していないことには争いがない。
相手方の理由は、たとえ利用していなくても、団体の一員である以上は利用する義務があるのであって、実際に利用するかどうかは関係ないというのである。
これは無茶だ。一般に代金というのは実際に物やサービスを利用した対価である。ある団体に所属していることから当然に支払義務が発生するということはない。発生するということになれば、それは代金ではなく、会費にほかならない。そのように反論した。
またその利用に関して契約を強制されるとなれば、契約自由の原則に反する。これは民法上自明のことである。証拠を提出する必要もない。
しかし駄目を押すことにした。駄目を押すとは囲碁からきた言葉である。囲碁はある時点に達すると、それ以上打つことが無意味になる状況が生じる。初心者は、その状況になったにもかかわらず、そこに石を打ってしまう。それを駄目を押すという。それが転じて、くどく念をおすという意味がある。
裁判官、弁護士にとって自明のことであり、証拠を提出する必要がないといっても、この裁判が現に起こされている。つまり、相手方の団体、あるいは、その役員にとっては自明のことではないのであろう。
そう考えて提出したのは、法務省の説明資料。「18歳を迎える君へ~契約について学ぼう」という法教育リーフレット。アニメ仕立て。ノリコとツカサが会話しながら、ホウリス君(法に詳しいリス)から契約について学べるようになっている。
成人年齢の引き下げにともない、「18歳を迎える君」たちが消費者被害に遭わないよう指導するための教材である。
そこに大書されているのが「契約自由の原則」。いわく。
契約は当事者の自由な意思に基づいて結ぶことができます。当事者間で結ばれた契約に対しては、国家は干渉せず、その内容を尊重しなければなりません。これを契約自由の原則といいます。「契約を結ぶかどうか」、結ぶとしても「誰と結ぶのか」、「どのような契約内容にするか」について、当事者は自由に決めることができます。
どうだ~。思い知ったか~。
などとはケブリもみせず、証拠を提出したのであった。