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2023年12月12日火曜日

機械の利用料を請求されたある事件(勝訴的和解)

 

 山行記・旅行記ばかり書いているが、事件もちゃんと解決している。きょうは機械利用料を請求されたある事件について報告しよう。

ある組合員、Aさんとしよう。Aさんはある機械利用組合から機械の利用料を支払えと訴えられた。その額は約800万円である。当職はAさんから依頼を受けた。

請求にかかる機械についてAさんは一切利用していない。したがって、そのような利用料は1円も支払う義務がないと争った(これだけではなんのことやら分からない。組合は全組合員に利用義務があることを前提としていた。)。

むこうには弁護士が2名ついていて、弁護士の数だけでいえば、劣勢である。

機械利用組合というのは、農業の集団化・合理化のため行政主導で設立されたものである。農業に使う機械を個人で購入・所有するのはムダも多いので、組合で購入・所有し、みんなで利用しようという目的である。

組合の請求根拠は当初、組合規約に基づくとのことだった。しかし、規約を熟読するも、どこにもそのようなことは書いていない。

そのように指摘すると、今度は組合設立時にそのような黙示の合意がなされたと請求の根拠を変更した。

その証拠の存否を尋ねると、それを明記した規約も議事録も契約書も存在しないという。情況証拠の積み重ねで当該合意の存在を推認できるという。

組合員に対し800万円もの大金を請求する裁判を提起しながら、その根拠は情況証拠の組合せであるという。むちゃだ。

そのように反論するも、組合側もなかなかあきらめない。結局、証人尋問がおこなわれた。いまどき珍しい。本格的な証人尋問はコロナ後、初ではなかろうか。

尋問終了後、裁判長から心証開示があった。当方の勝ちだという。組合側はそれでもあきらめなかった。往生際が悪い。

最終準備書面を提出することになった。心証開示の結果からすれば手を抜いてもよかったが、心血を注いで説得力のある自信作を完成させた。21頁の大作だ。

双方、最終準備書面を提出し、結審。判決日の予告がなされた。

・・・それから数日経って、山を歩いていると、組合側の弁護士から電話があった。和解したいという。最終準備書面の説得力のなせる技であろうか。その旨Aさんに連絡をしたところ、和解するとの了承を得た。

和解内容は、もちろんこちら側の全面勝訴である。めでたし、めでたし。

2022年4月27日水曜日

とある代金請求事件と契約自由の原則

 

(ミツバツツジ、花言葉:節制、抑制のきいた生活)

 とある代金請求事件。請求事件といっても、裁判で訴えられている側である。

進行中の事件であるから、あまり詳しいことは書けない。下手をすると、相手方の弁護士から準備書面に引用されて、ブログではこれこれしかじかと書いていたではないかと揚げ足をとられかねないから。

相手方はある団体。こちらはその団体に所属している構成員。あるサービスに関する代金を請求されているのであるが、こちらはそのサービスを利用していない。サービスを利用していないことには争いがない。

相手方の理由は、たとえ利用していなくても、団体の一員である以上は利用する義務があるのであって、実際に利用するかどうかは関係ないというのである。

これは無茶だ。一般に代金というのは実際に物やサービスを利用した対価である。ある団体に所属していることから当然に支払義務が発生するということはない。発生するということになれば、それは代金ではなく、会費にほかならない。そのように反論した。

またその利用に関して契約を強制されるとなれば、契約自由の原則に反する。これは民法上自明のことである。証拠を提出する必要もない。

しかし駄目を押すことにした。駄目を押すとは囲碁からきた言葉である。囲碁はある時点に達すると、それ以上打つことが無意味になる状況が生じる。初心者は、その状況になったにもかかわらず、そこに石を打ってしまう。それを駄目を押すという。それが転じて、くどく念をおすという意味がある。

裁判官、弁護士にとって自明のことであり、証拠を提出する必要がないといっても、この裁判が現に起こされている。つまり、相手方の団体、あるいは、その役員にとっては自明のことではないのであろう。

そう考えて提出したのは、法務省の説明資料。「18歳を迎える君へ~契約について学ぼう」という法教育リーフレット。アニメ仕立て。ノリコとツカサが会話しながら、ホウリス君(法に詳しいリス)から契約について学べるようになっている。

成人年齢の引き下げにともない、「18歳を迎える君」たちが消費者被害に遭わないよう指導するための教材である。

そこに大書されているのが「契約自由の原則」。いわく。

契約は当事者の自由な意思に基づいて結ぶことができます。当事者間で結ばれた契約に対しては、国家は干渉せず、その内容を尊重しなければなりません。これを契約自由の原則といいます。「契約を結ぶかどうか」、結ぶとしても「誰と結ぶのか」、「どのような契約内容にするか」について、当事者は自由に決めることができます。

どうだ~。思い知ったか~。
などとはケブリもみせず、証拠を提出したのであった。

2013年4月18日木曜日

映画『舟を編む』






映画『舟を編む』
みました。

昨年本屋大賞となった三浦しをんさんの原作
については前に書きました。

 玄武書房に勤める馬締くん
 が主人公。

 コミュニケーション能力が弱く
 営業部では「使えない」。

 辞書編集部にスカウトされ
 新しい辞書『大渡海』の編集に没頭するようになる。

 記号の羅列としての辞書ではなく
 言葉という大海原を渡る舟としての辞書。

 その編集を通じ,言葉を通じてつながる感覚を磨き
 同じ下宿の香具矢さんとも…。

この馬締のキャストとして松田龍平?
と思いましたが,なかなかよかったです。


フェイスブック上で友達が,原作と映画の関係を
熱く議論しています。

よかったとか
がっかりするとか。

最初から別物として鑑賞すべきでしょうね。
ボクはそうしています。

 企画15年の辞書
 はたして完成するのか?

 最後の校正作業に追われるなか
 穴が見つかり,作業をやり直すことに。

 
 アルバイトの学生を含め
 泊まりがけの合宿状態で突貫作業…。

薬害肝炎訴訟で最終準備書面を
書き上げたときの突貫作業を思い出しました。

分野を異なれど,人それぞれのミッションを
完遂しているときこそ至福のときなんでしょうね。

2012年12月26日水曜日

『完全黙秘の女』





法律家の書いた文章は悪文である
と,よく言われる。

そのとおり。
いやになる。

誤解を避けるためといわれる。
ほんとうだろうか。

弁護士には
本を書く人がおおい。

なかには
小説に手をだす人もいる。

でもなんというか
やはり準備書面調。

準備書面は民事訴訟にあって
当事者の主張を詳しく説明するもの。

弁護士の小説も説明であって
表現でないことがおおい。

自費出版の愛好家がおおいことと
相関関係にある。

弁護士としての能力と
小説家としてのそれは別ものだ。


そうしたなか
法坂一広さんの快挙だった。

『弁護士探偵物語 天使の分け前』(宝島社)
『このミス』大賞を受賞。

文章の実力により
本屋で平積みになった。


『完全黙秘の女』(宝島社)は
弁護士探偵物語の第2段。

文章は前作よりこなれて
ますます上手くなった。

1行ごとになにがなんでも
うんちくを語る。

その語り口はあいかわらずだけれど
くさみは減った。(慣れただけかもしれない)

シリーズものの強みで
作品世界に入っていきやすい。

福岡市とその近郊が舞台になっていて
なじみやすい。

弁護士や裁判官の生態,弁護士業界の現況
刑事裁判の問題など,いろいろ勉強になる。

半分ほど読んだところで
犯人がわかってしまうのが難点。

でも犯人がわかっても
人間愛で読ませる。


なにより新人女性弁護士
土田さんの成長物語なのがいい。

法坂先生,こっそり
土田さんのメルアド教えてください。