傾山のセンゲン尾根へ下ること1時間、九折越に。前回とちがい、明るいうちにたどり着くことができた。キャンプ場と無人小屋がある。誰もいない。この日は終日、他の登山者に会うことはなかった。
まずは水場へ向かう。宮﨑方面へくだるくだる。こんなに遠かったかな。ようやく見つけた。ななんと水場は涸れていた。試行錯誤のすえ、わずかな流れにパイプを挿して、なんとか水を確保することができた。煮沸必須である。
小屋に入る。誰もいない。3人で三隅をぜいたくに占拠する。灯りはなく、持参のヘッドランプだけが頼りだ。お湯を沸かし、夕食づくり。荷物軽量化のためレトルトのドライカレーと豚汁、そしてお茶。
食後はなにもすることがないので就寝。エアマットを膨らませ、寝袋に入る。明日の予想気温は2度だったので、着込めるだけ着込む。
前回来たときは、シカの群れが周辺を駆け回り、ひづめの音が響いていた。シカの食害対策が進んでいるせいか、今回、シカの気配はない。
その代わり雨だれの音が大きく響く。夜半、風が強くなり、山を鳴らした。
目が覚めると0時過ぎ。窓からは月明かりが煌々と照らしていた。明日は予報どおり、風は強いものの晴れるようだ。最近の天気の的中度はすごい。
翌朝、祖母山へ向かうかどうか議論する。気温2度、風速18メートル。体感温度はマイナス16度である。稜線上の風と寒さは厳しく、低体温症が心配された。われわれは大事をとって下山することにした。
下りは九折コース。コースタイムは2時間35分。稜線上は風がきつかったが、ほどなくおさまった。右手の尾根上にヤマザクラ、アケボノツツジが咲いている。
さらにオオカメノキも花をつけている。きのうはまったく展望がきかなった。きょうは傾山の坊主頭が望める。ヤマザクラ越しの撮影。ブナの新緑がまばゆい。苔も新芽だろうか、文字どおりモスグリーンに輝いていた。
山が深い、谷も深い。浸食がすすみ、勾配もきつい。油断すると転げ落ちそうだ。右手ふかく谷川の音が響く。下山するにつれ、それが近づいてくる。
この日、登ってくる登山者は3グループ4人だった。彼らの安全を祈る。福岡から遠いし厳しいので、多くの人が登れる山ではない。玄人向きの山である。
山懐の深さに比例して、わが心の奥深くまで沁みた。来年もまた来たいものだ。
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