契約は約束の一つだ。子どものころ、約束は守りましょうと言われた。民法は1000以上の条文があるが、一言でいえば約束は守ろうということだ。
約束は口頭でもかまわないとされる。しかし、紛争になれば、相手方はそのような約束の存在を否定するので、それを打ち破る証拠が必要である。それが契約書である。
従来は、紛争が起きたときの証拠とするために契約書を作ることが推奨されていた。最近は、紛争の発生を予防するために契約書を作ることが推奨されている。
問題は約束のなかみである。民法の考え方は契約当事者の立場の互換性。ある人が買主にもなれば売主にもなる。それを前提に、売主にとっても、買主にとっても、酷な内容にならないようルールは作られている。
これに特約といって、特段の事情に対する特別のルールを手当することが一般的である。
紛争を予防する契約書を作成するには、当該業界において発生しがちな紛争を把握する必要がある。これは弁護士には分からない。当該業界に詳しい依頼人、あるいは、他の専門家に訊く必要がある。そうすれば、予想される紛争の解決ルールを定めることができる。予想できなかった紛争が発生したときは、民法の基本に戻って解決ルールをさぐるしかない。
最近は、IT化を背景に、ソフトの開発契約のリーガルチェックが増えた。はて、どう考えたものだろう。ソフトの開発というと難しく感じる。しかし基本は請負か委任である。請負は建物の建築契約など、委任は弁護士への委任契約など。
仕事の完成を目的とするのが請負で、仕事の遂行を目的とするのが委任である。ソフトの開発は請負だと思うのだが、業界のひな形は委任型となっている。完成しなくてもよいのであろうか。
建物の完成であれば建築図面があり、完成したかどうかはシロウトにも分かりやすい。ソフトの開発にも設計図のようなものはあるが、われわれシロウトには完成したかどうか分かりにくい。そこはITの専門家に判断を委ねるしかない。そういえば、建築紛争も一級建築士さんの判断に委ねている。
弁護士は法律の専門家にすぎない。他の分野については、餅は餅屋である。そのことを依頼人にも理解してもらい、協働作業が必要になるのである。
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