(夏沢峠、霧氷、向こうは硫黄岳爆裂火口)
(硫黄岳北斜面、右下が夏沢峠、正面は根石岳)
(雪雲を吐き出す赤岳)
(赤石の頭から硫黄岳)
年末年始は3年ぶりに行動制限がないということで、白銀の八ヶ岳に登り縦走した。
八ヶ岳は日本アルプスではないけれども、最高峰の赤岳は標高2899メートルで、ほぼ3000メートル峰だ。北は長野県から、南は山梨県まで南北に長く連なっている。こんかいは南部、硫黄岳、阿弥陀岳、赤岳、横岳を縦走する計画を立てた。
八ヶ岳のよいところは、この時期、晴れる確率が高いことだ。天気予報を見ていると、日本海から北西の季節風が吹き付けている。北陸や北日本はほぼ雪マークだ。
しかし、北西の季節風は北アルプスを越える際に大量に雪を落とし、八ヶ岳では晴れていることが多い。ことしの年末年始も晴マークが並んでいた。
そのこともあり、八ヶ岳には冬期も開業している山小屋が多い。年末年始はさらに開業している小屋が増える。登山者も多く、トレース(踏み跡)もしっかりついている。雪山初心者からステップアップをめざす人までお奨めの山域なのである。
こんかいは初めて、八ヶ岳の東側にある稲子温泉から入山することにした。羽田空港から新宿へ。新宿から特急かいじに乗って甲府へ。
特急かいじは、全席指定。富士山方面へ向かう観光客(大月までおなじ列車)であふれ、指定がとれず、デッキで立っていた。
途中、南側に白銀の富士山が広大な裾野をひろげてそびえていた。八王子あたりから見えなくなったものの、甲府手前からまた山頂部を拝むことができた。
いちど富士が見えるところで住んでみたいものだ。さぞやおごそかで清々しい気分で過ごせるのではなかろうか。
甲府をすぎると、列車進行方向の左手に南アルプスの山々が白く輝いてみえる。北岳や荒川の山々だろうか。その右は鳳凰山だ。さらに右手には甲斐駒ヶ岳。さらに右は目指す八ヶ岳。なんという贅沢な景色。山梨に住むのもいいなぁ。
甲府から普通電車で小淵沢駅へ。そこでJR最高点を走る小海線(八ヶ岳高原線)に乗り換え松原湖駅まで。
・・と書くと簡単なようだが、実際は重い荷物をかかえて、年末年始に移動する人並みにもまれた。キップひとつを買うにも長蛇の列に並び、発車まぎわの列車に飛び乗るようにして、ようやくたどりついた。
そこからバスはなくタクシーで稲子温泉へ。あたり一面雪景色。そこで一泊。ひなびた山宿で廊下などでストーブが焚かれている。それでも寒い。
翌日、シラビソの樹林帯のなか2時間の登りでみどり池・しらびそ小屋。みどり池は、苔や藻で緑なのだが、この時期は全面氷結している。白き・みどり池である。しらびそ小屋は薪ストーブが燃え、リスや野鳥が観察できるのであるが、今回はスルー。池越しに、ガスにけぶる天狗岳がおごそかに鎮座している。こちらも今回は登らない。
そこから1時間で本沢温泉。本沢温泉は日本最高所にある野天で有名。男性入浴の時間だったが、先をいそぐ旅だったので入浴は断念。
途中、登山道の右手下100メートルに湯船が見えた。男性2人が入浴中だった。これって女性入浴時間だったら、女性が入浴しているのかしら。などと考えつつ、霧氷で美しく変身したシラビソ樹林帯を登る。
1時間ほどで夏沢峠。ようやく八ヶ岳の稜線にでた。ヒュッテ夏沢と山びこ小屋がある。どちらも休業中のようだ。西にすこし下るとオーレン小屋がある。
夏沢峠で数グループの登山者と行き交う。若い登山者と情報交換して、12本歯アイゼンに履き替える。いよいよ硫黄岳の本格的な登りだ。
樹林帯越しに、硫黄岳の爆裂火口が見え隠れする。樹林帯は霧氷に覆われ美しい。しかし、氷結した爆裂火口はすごい迫力だ。ひるがえると根石岳の樹林帯が美しい。
森林限界から先、吹きっさらしとなり、北西の季節風に急速に体温を奪われる。降り積もった雪も風でとばされ、登山道はザクザクしている。アイゼンでは歩きにくい。
上部はガスっている。道を見失わないか心配だ。しかしケルンがあるはずだし、大丈夫だろうと思って登る。3パーティほどと行き交う。小学生と思われる子どもを連れたパーティもいた。足下がおぼつかない子どもを励ましながら下っていく。
1時間ほどで頂上にでた。なんとそれまでのガスが晴れていった。横岳、赤岳、阿弥陀岳が美しく連なっている。赤岳が雪雲を吐き出している。なんという美しさ。
風景を堪能したのちは赤岩の頭へくだる。振り返ると、硫黄岳が長大な登り稜線が美しい。ガスが覆っては晴れたりを繰り返していた。外人女性とガイドさんのパーティが登っていく。
赤岩の頭から樹林帯に入り、ほっとする。1時間余で本日の宿泊地・赤岳鉱泉。まわりにはテントが張られ、アイスクライミングを楽しんだ人々でにぎやかだ。