ある委任無効確認訴訟事件について勝訴(確定)したので報告する。
まず前哨戦があった。父が亡くなって、母Yと子どもたち(A、X)で遺産分割調停事件となった。母YとA対Xの争いであった。当職はY、A側から依頼を受けた。
その際、Xが母から預かった遺産資料の返還になかなか応じなかった。そのため、調停が終了した後、YはAに対しXとの間の面会について、いつ、どこで、どのくらいの時間会うのかを調整する権限を委任した。そしてその面会にはAを立会人とする条件をつけた。
Xはこれに反発し、Xは子どもとして母Yと自由に面会することができる、そのためYがAに対して行った上記委任契約は無効であることの確認を求めるとの裁判を提起した。
本件でもY、Aから依頼を受けて応訴した。Xは子どもが母と面会を自由におこなうことができると主張した。裁判例も数例援用した。
高齢化社会の反映だろう。子が親と面会を求める裁判例が数件あった。どれもが認知症等により親の判断能力が疑われる事案であった。
たしかに、国家や自治体が母子の面会を理由なく制限すれば、それは人権侵害だろう。しかし、とうの母親が子と会いたくないと思っているときに、子が母と会うことは自由だといえるだろうか。それは逆に母の自由を不当に拘束することになるだろう。そう論旨を展開した。
さらに、本訴はXがYに会うことを請求するという方法ではなく、過去にY・A間で締結した委任契約の無効確認を求めたことが議論をややこしくした。
500万円を払えとか、家の登記手続をせよとか、相手方に給付を求める請求訴訟をおこすことが一般的である。しかし、前哨戦での経過から、本件ではY・A間に上記委任契約が締結されていたため、その無効確認を求める裁判となったのである。
さきにも報告したとおり、遺言無効確認訴訟というのは認められている。遺産のそれぞれについて給付を求めるのは煩雑であり、遺言の無効を確認できれば一括して紛争が解決できるからである。
本件ではどうだろう。当該委任契約の無効を確認したところで紛争の解決になるだろうか。つまり、われわれの言葉でいう「確認の利益」の有無が争われた。
結論。当方が勝利した。裁判所は本訴について確認の利益がないとした。相手方も控訴せず、一審で確定した。
当然のことながらまだ続きがある。確認の利益がないことの理由として、上記委任契約はXを拘束するものではないとの説示があった。相手方はそれを根拠として面会の自由があると主張した。
物件と異なり債権は第三者を拘束しない。これは債権の一般論である。判決はこの一般論を述べたにすぎない。そのことからただちにXがYと自由に会えるとの結論を導くことはできない。そう反論した。
とりあえず、この論争がつづくことを避けるため、当職が上記とおなじ内容の委任を受けた。
弁護士が受任した以上、その頭越しに本人と交渉をすることは許されない。このことは弁護士法が存在する以上、一般的に認められているところである。
さて、この問題はこんごどうなるであろうか。いまだ進行中である。
※写真は大垣おくのほそ道むすびの地の芭蕉と木因。
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