2023年1月13日金曜日

香りの世界

 


 わが法律事務所ではときどき外部講師をお招きして研修を行っている。先日はレクリェーションを兼ねて、講師の先生からアロマオイル(精油・エッセンシャルオイル)についてお話を聞き、それを使ったワークショップを行った。

アロマオイルには、ラベンダー、ローズマリーなどハーブ系のものや、オレンジやグレープフルーツなどフルーツ系、それらをブレンドしたものなど数十種類もある。それぞれ精神・神経を覚醒させたり弛緩させたりする。

弛緩させるというとあまりイメージがよくないが、いわゆるリラックス作用である。覚醒剤が精神・神経を覚醒させ、大麻がそれらを弛緩させるのと同じだ。もちろんよりマイルドな効き目である。

アロマオイルや薬剤が人間にとって有用であるのは、人間の精神・神経がここぞというときに弛緩していたり、必要もないときに緊張したりしているものだからだ。

ワークショップといっても難しいものではなく、多種類あるアロマオイルを数種類ブレンドして、ベースとなる素材と混ぜ、①ルームフレッシュナー、②携帯ハンドソープ、③とろとろハンドローション、④バスボムを作る作業。RPGでMPを回復する薬草をブレンドして、より強力な効き目の薬草を作るようなものである。

正直いって企画段階ではあまり興味がなかったが、やってみていろいろ勉強にもなり面白くもあった。香りに関し、豊かな世界が広がっていることを実感することができた。

刑事手続に検証がある。テレビドラマやニュースで現場検証と呼んでいるやつ。検証とは、裁判官がその五感の作用によって、直接に事物の性状、現象を検査してその結果を証拠資料にする証拠調べである。

ここでいう五感とは、視覚にかぎらず、聴覚、味覚、嗅覚、触覚を含む。われわれ現代人は視覚を多用し、せいぜい時に聴覚等他の感覚を働かせているくらいである。しかし、人類の歴史のなかでは、視覚のみならず、聴覚、味覚、嗅覚、触覚が大事な働きをしてきた。

刑事や探偵が事件を解決するうえで発動する第六感は、こうした人間に一般に備わっている五感を超えた能力を発揮すること。岩波新書で中村雄二郎『共通感覚論』を読んだ。これは五感に共通する感覚のことである。

むかしNHKのドラマで「時をかける少女」にはまった。筒井康隆原作で、その後、原田知世主演で映画化された。大林宣彦監督の尾道三部作の二作目。アニメにもなった。時をかける際の重要アイテムがラベンダーの香りである。ラベンダーの香りにはリラックス効果、抗不安効果があるようだ。

筒井康隆の脳裏にあったと思うが、この話はプルーストの『失われた時を求めて』そのものである。ある寒い日、主人公が母に奨められたプチット・マドレーヌを紅茶とともに口に触れたとたん、失われた時が復活するエピソードはあまりにも有名である。

プレバトをみていると、夏井いつき先生が五感の切替の鮮やかさを賞賛することがある。情景描写から音や匂いへの発想を飛ばす。それが快感をもたらす。

味覚・嗅覚・触覚はひごろはあまり稼働していないかもしれないが、人間の深いところとつながっている。その稼働をきっかけとして古い懐かしい記憶を発動させることもある。

山歩きをしていると、ときに甘い香りがする。秋の紅葉した川沿いであればカツラであるし(写真下、これは春)、針葉樹林帯であればシラビソである。

カツラ(桂)の香りはメープルシロップのそれにそっくり。秋の登山道でカツラの香りに包まれるとノスタルジックな気分になる。

シラビソはどちらかといえば覚醒系だろうか。殺菌作用があり、天然除菌剤として販売されている。シラビソはこの成分を分泌することにより、細菌から身を守る免疫作用を発揮しているのであろう。

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