2023年1月26日木曜日

賃貸借中の土地の明渡事件

 


 土地を賃貸し、賃借人がその土地の上に建物を建築。その方が亡くなり、相続人が複数いらっしゃったが皆、相続放棄をされた。困った賃貸人からご相談・依頼を受けた事案。

賃借人がいなくなった後の賃貸物件の処理をどうするかは悩ましい。がっぷり四つに組まないといけないのは、居住したままの賃料不払い。3ヶ月分滞納したところで催告し、2週間後に契約を解除する。内容証明郵便で。

それでも明渡しがなければ、裁判を起こし、判決をとる。それでも明渡しがなければ、判決に基づき強制執行をすることになる。強制執行は、家財の引越、保管や競売を伴い、手間、ヒマ、費用がかかる力業だ。

夜逃げして行方不明になった場合、もっと悩ましい。契約書には立ち入り、残置動産を処分してもよいなどという約定もある。賃貸人が自分で明渡しを実行してしまうことを、自力救済という。自力救済しても問題とならないケースも多かろう、行方不明なのだから。

しかし弁護士のところへ相談に来られれば、「自力救済は禁じられています。お金と時間と手間はかかるけれども、裁判を起こして判決をとり、これに基づき強制執行したほうがいいですよ。」とアドバイスすることになる。行方不明であるから、裁判は公示送達、欠席判決の方法による。

こんかいは、とても稀なケース。賃貸人が亡くなり、相続人のかたがたが皆、相続放棄をされたのだから。借金などが残るケースでは、相続放棄をすればそれで終わり。しかし、遺産に不動産があるとやっかい。相続財産管理人が管理するまで、それまでの相続人が管理義務を負うことになる。

ある相続人の後見人のかたと協議して、相続管理人を選任してもらい、その方に不動産を管理してもらった。

相続財産管理人は、なんどか現地を訪れ、建物や家財を高く売るべく努力された。しかし、建物は老朽化しており、家財もそれほどペイする見通しはなかった。そのため、建物と家財を賃貸人のほうで買い取ることとなった。代金は滞納賃料と相殺だ。

相続財産管理人は、家庭裁判所が選任する。不動産の売却となれば、家庭裁判所の許可が必要である。もちろん、家庭裁判所の許可を得た上での売買である。

1年ほど時間がかかったが、無事解決した。売買した建物を解体するには相当の費用がかかる。賃貸人としても痛い出費だ。でも納得し満足されたと思う。

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