2022年6月30日木曜日

Y先生

 


 紅花が咲く季節になった。ジブリ映画『おもひでぽろぽろ』で、生き方に迷った都会のOL主人公が向かったのは山形の紅花畑だった。

今朝はなぜか亡Y先生のことを思い出す。数年前にお亡くなりになった。10年以上先輩で、福岡県弁護士会で何番目かの女性弁護士である。いまでこそ女性弁護士は増えたが、先生が登録されたころは数もすくなく、パイオニア的存在だった。

紛争当事者はいわゆるおっさんも多く、女性とみるだけで侮ってかかることが少なくない。いまでもそうだ。むかしは推して知るべしである。

とはいえ、事件で引き合い(相手方)となることもなく、会務でご一緒することもなかった。ところが、あるとき唯一の接点ができた。お亡くなりになっていることだし、もう時効だからここに紹介してもよかろう。

あるとき、紛議の申立を受けた。紛議とは弁護士の職務遂行の仕方について顧客が弁護士会に苦情申立をおこない、解決を求める制度である。先生はその担当委員になられた。

同事案は、労災事故。一審では事故かどうかの事実論と会社の責任論が厳しく争われた。そこをなんとか勝訴に導くことができた。損害論は争われず数千万円の賠償が認められた。

控訴審では相手方弁護士は作戦と争点を変更して、損害論を争った。当方被害者には既存障害(事故以前からあった障害)があったとして、賠償額の減額を求めた。高裁は和解勧告を行い、損害額は半分に削られた。

依頼人との間で何度も和解を受けるかどうか協議し、方針確認書を3通作成、署名・捺印を得たうえで和解に応じた。

ところが、前記紛議の申立である。このような和解に応じたことには弁護士の職務遂行として問題があるというのである。

高裁の和解に応じたというだけでも弁護士の責任はないと思われるが、方針確認書を3通作成し、依頼人の承諾を(もちろん、署名・捺印も)得ているのであるから、当職に責任はない。そもそも普通の弁護士であれば、一審での勝訴もおぼつかなかったであろう。そう争った。

通例、紛議委員は、相手方の顔もたてて、なかとりの示談を勧めることが多いという。Y先生と協議した。示談を勧められるかなと思ったら、「こんなのに負けちゃダメよ。」と励まされた。

これには感銘を受けた。これほど強い言葉はあまり聞かない。紛議委員という立場上、もっとあいまいな表現になるのが通例であろう。

さすが女性弁護士としてのパイオニア。数々のご苦労をなさってきたことだろう。そのなかで培われた確かな正義感と、それに基づく後輩弁護士への指導と受けとめた。いまでも感謝している(紛議のほうは、しばらく尾をひいたが、申立人が無事あきらめてくれた。)。

2022年6月29日水曜日

シャルトル大聖堂

 

 SNSはときどき過去の投稿を再投稿するよう呼びかけてくる。きょうは10年前の投稿だ。

シャルトル大聖堂。世界遺産。ステンドグラスのバラ窓やコローの絵で有名。
https://worldheritagesite.xyz/chartres-cathedral/
しゃれとる。なつかしい。

シャルトルはパリの南西郊外にある古い街。モンパルナス駅から電車で片道1時間ほど。コローの絵はルーブルにあるから、帰り道に寄るとよいだろう。https://www.musey.net/13546

コロナ禍以降、外国にはまったく行けていない。フランスはもう入国できるのだろうか。ロシアのウクライナ侵略の影響で遠回りにも高額にも不便にもなるのだろう。個人的な用事でイタリアにも行きたいのだが。

2022年6月27日月曜日

アナグマ三兄弟

 


 若い人が知らない事実ランキングという番組をやっていた。シートベルトをしていない時代があったとか、携帯電話が1円で買える時代があったとかで若い人たちが驚いていた。

ランキングの1番は、1回の料金で同じ映画を何度も観ることができる時代があったこと。たしかに、いまのように総入替制ではなかった。

授業時間のあいま、映画館に入る。時間の制約のため、映画の後半から見始めて、次の回の前半を見て、全部見たところで終わり。なんてことがよくあった。それはそれで伏線の回収の仕方がよく分かったりした。

なので、アナグマ三兄弟とタイトルをかかげつつ、若い人たちは「団子三兄弟」を知っているかなぁと不安になる。『アナと雪の女王』にひっかけたほうがよかっただろうか。

日曜、四王寺山を散策していたら、アナグマ三兄弟に出会うことができた。三匹でじゃれて団子になっている。人が接近しても逃げようとしない。ときどき巣穴と思われるところへ、みなで入っていく。まさに同じ穴のムジナ。

ムジナといえば、ラフカディオハーンの『怪談』、それも英文解釈の副読本にでていたものを思い出す。これまたいまどきの若い人には読書経験がないだろう。

宮崎県の山奥、大崩山の山麓でしか出会ったことがなかったので、太宰府で出会えるとは思っていなかった。驚き。しかしウィキで検索してみると、アナグマは里山にいるものらしい。

里山に野生動物が戻ってきている。先日は篠栗の里山で鹿に出会った。江戸時代の人々と野生動物の間の距離感にどんどんちかづいていっているのではあるまいか。そのうち、孫から「おじいちゃん、アナグマなんて、そんなに珍しくないよ。」と言われるようになるかもしれない。

四王寺山の山中でもネムの花が咲いていた。花言葉は歓喜、胸のときめき。しかしきょうは月曜日。眠い。

2022年6月26日日曜日

オレオレ寄付

 

戸籍を調べたら実は相続人が他にもいた、なんてことはよくある話で・・・。


とある相続のご相談。亡くなった方の子どもが、自宅の名義を移そうとすると、他にも相続人がいることが発覚。

なんとかならんだろうか、ということで弁護士に相談に来られました。


お手紙を出すも、連絡なし。

まあ、お相手にとっては、寝耳に水の相続の話。

弁護士の名をかたる詐欺なんてのもあるでしょうから、連絡がないなんてこともよくある話で。


仕方がないので、遺産分割の調停をすることに。

お相手は、調停期日も不出頭。


とりあえず、お相手に相続分はお支払いして、自宅はこちらの名義にする、という内容(代償分割)で、調停に代わる審判をしてもらいました。


ところが、その審判の送達ができません。

今度は、裁判所から、なんとかならんだろうかと相談がきました。


仕方がないので、敵情視察(お相手の居住調査)に行くことに。


送達場所の調査、というと、裁判をすることを悟られて引っ越されないように、住居の外から、ガスや水道のメーターをみて居住の有無を確認したりするのが一般的です。


ただ、今回は、相続分をお支払いしますよ、という話。

お相手にとっては棚からぼたもち。こちらからすれば、いわばオレオレ寄付。

普通に訪問してきました。


結局、居住の有無は不明。

公示送達(裁判所入口の掲示板に貼りだして送達したことにすること)になりそうです。


相続で、自宅の名義ひとつ変えるのもけっこう大変。

お早めにご相談されることをおすすめします。


富永

2022年6月24日金曜日

ネムの花

 


 この時期雨のなか、福岡市内の街路樹にネムの花が咲く。花を見ると、おくのほそ道・象潟の段を思い浮かべる。そして美女のおもかげに魅かれて鳥海山に登りたくなる。

江山水陸の風光数をつくして、いま象潟に方寸を責む。酒田の湊より東北の方、山を越え、磯を伝ひ、いさごをふみてその際十里、日影ややかたぶくころ、汐風真砂を吹き上げ、雨朦朧として鳥海の山かくる。闇中に模索して「雨もまた奇なり」と・・風景一眼の中に尽きて、南に鳥海、天をささえ、その陰うつりて江にあり・・俤松島にかよひて、また異なり。松島は笑ふがごとく、象潟はうらむがごとし。寂しさに悲しみをくはえて、地勢魂をなやますに似たり。

 象潟や雨に西施がねぶの花


2022年6月23日木曜日

人権のトリデ

 

裁判所は、いわゆる「人権の砦(とりで)」などと申しますけれども。


まあ、なんだかな、と思う判決をもらうと「人権の砦じゃないのかい!」と言いたくなることもあるわけです。


そもそも、裁判所は「人権の砦」って、誰がいった言葉なのでしょうか。

そこは出典にきびしい法律家のわたし。


調べてみますが、よくわかりません。


出典がわからない以上、「いわゆる」人権の砦、ということにしました。

そこは定義にきびしい法律家のわたし。


しかし、なんかもっとキャッチーでポップな言い回しの方が、裁判所も国民から親しみをもってもらえるのでは?

と変な気をおこして、砦(とりで)の言い換えを探してみることに。


すると、「取手市」(とりでし)という自治体をみつけました。

茨城県ですね。


はっ、まさか、取手市にも裁判所があるのでは?

ありました。水戸簡易裁判所の支部である「取手簡易裁判所」(とりでかんいさいばんしょ)。まさに「人権のトリデ」。


いつか、いわゆる「人権のトリデ」で裁判をしてみたいものです。


富永


2022年6月20日月曜日

ナスがこわい

 

世の中には、まんじゅうがこわい、なんて人もいるとかいないとか。


えっ、私がこわいものですか?

ナスがこわいです。

夏はナスの季節。揚げナス、焼きナス、麻婆ナス。ああ、こわいこわい。

お中元にナスが届くことを想像すると、ああ、おそろしくて夜しか眠れません。

弁護士費用も、着手金の代わりに着手ナスで引き受けちゃうくらい、こわいです。

間違っても私にナスは贈らないでください。


あ、でも今は昼ごはんを食べてすぐなので、

ちょっとつまめるくらいの芋けんぴがこわいです。


富永

P.S.

よくわからない人は「まんじゅうこわい」で検索!

若杉山~宝満山縦走(第1回トレーニング)

 




 怪鳥会という山歩き会に所属している。弁護士と新聞記者など10人がメンバーだ。発足して13年目になる。ふだんは九州の山に登り、年に1度は日本アルプスに遠征している。

ことしの夏は、北アルプスの裏銀座縦走を予定している。長野県信濃大町市から烏帽子岳に登り、そこから野口五郎岳、水晶岳、鷲羽岳、三俣蓮華岳、双六岳を経て槍ヶ岳をめざす長大なルートである。3年ほどまえにも計画したが、台風の直撃を受け、烏帽子岳までしか登れなかった。ことしこそは。

日本アルプスにのぞむときは、1か月まえと2週間まえに強化トレーニングをおこなっている。それが宝満~若杉縦走である。「博多っ子純情」にもでてきた博多のクラッシックコースである。太宰府側から宝満山に登り、そこから仏頂山、三郡山、砥石山を経て若杉山まで縦走する。およそ9時間かかる。コースタイムだけでも相当な過酷さだ。

さらなる問題がある。日本アルプス遠征は7月末ころに計画する。梅雨明け10日といって、その間の天候が安定することが多いからだ。逆算してそのまえ1か月、2週間となると、梅雨の最中ということになる。気温は30度を超え、湿度も高い。熱中症となる危険性がたかい。雨のなかを行くことも多い。しかし日本アルプスにのぞむには不可欠なトレーニングであるからしかたない。

ことし第1回目のトレーニングを6月18日(土)におこなった。誰かの発案で若杉側から縦走することになった。なんだかそれのほうが楽なような気がしたからだ。しかしそうではなかった。あたりまえだ。距離も高低差もかわらないのだから。

JR篠栗線の城戸南蔵院前駅を下車する。朝7時30分。むかしは篠栗駅を利用したものだが、さいきんは城戸南蔵院前駅を利用するのがはやりだ。2駅も先へ進むのだから、よけいに遠くなりそうな気がする。

篠栗巡礼の札所の間をすり抜けながら若杉山に登っていく。先頭をいくIくんのヤマップがなければ、どこかで道迷いしてしまいそうだ。基本的に高温で湿度が高い。ときおり涼しい風がとおりぬけていく。天使の息づかいか。

2時間たってようやく若杉山頂についた。故障中ときいていた自販機で、冷たいリアルゴールドを買うことができた。ここのリアルゴールドは日本でいちばん美味しい飲料である。ただし、宝満から縦走してきたときにかぎるのだが。この日は宝満から縦走してきたわけではなかったが、2時間汗をながしてきたので、とてもうまかった。

ここから先へ進んだらもう引き返せない。だがリアルゴールドですこし生き返ったので、先に進むことにした。せっかくかせいだ高度なのに、ショウケ越(若杉山とへむけてどんどん高度をさげていく。

ショウケ越からは砥石へむかって登が続く。そろそろピークかと思うが、その都度裏切られる。若杉から約2時間後、ちょうど昼時に砥石山頂についた。見晴らしはきかない。風もとおらない。しかしもう限界、お昼にしよう。お昼はお湯をわかしてどん兵衛。

そこから1時間半で三郡山、1時間で宝満山、1時間半の下りで下山・・・。というコースタイムなのだが、厚さでバテバテとなり、休憩がどんどん多く、長くなっていく。16時30分下山予定が17時50分になってしまった。ふう。

いまの季節、あまり花はないのであるが、ヤマツツジはたくさん咲いていた。それに、なにかのベリー、ウノハナの残り(と蝶)、ブナの新緑、下山道にユキノシタ。そうそう若杉の札所の各所にアジサイも咲いていた。これら花々がつらい山行中、われわれを慰めてくれた。つぎはまた2週間後だ。

2022年6月16日木曜日

疲れてます?

 

忙しいときや疲れているときは、なにかと笑顔を忘れがちです。

笑顔かどうかをどのように認識するか、というと、


①口角(こうかく)が上がっている。

②歯が見えている。

③目尻(めじり)が下がっている。


の3点なのだそうです。


ところが、昨今は、コロナ禍で、みなマスク姿。①も②も見えないから難儀(なんぎ)です。


弁護士もサービス業。気持ちのよいサービスは、気持ちのよい笑顔から。

と、思うのですが、なかなかいつもニコニコとはいかず。

せめて、目尻を下げようと努めているわけです。


先日のご相談でのこと。

ひととおりお話をお聞きし、とるべき方針をご説明します。

もめごとはご相談者も気が滅入りますから、せめて相談を受ける弁護士はにこやかであろうと思うのです。

ところが、ご相談者から「先生、疲れてます?」とひとこと。聞くと、疲れ目に見えたよう。


ち、ちがいますよ。目尻を下げようとしただけです汗。


富永


P.S.

最近の読書から

「楽しいときは思いっきり、しんどいときもそれなりに笑っておかなきゃ」

ー 瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』



人生における引越-幸せを求めて


(花言葉:移り気)

 九州国立博物館でおこなわれていた「北斎展」が終了した。北斎は天才肌だと思っていたけれども、90歳まで生き、最後まで努力の人であったことに感銘を受けた。有名な「神奈川沖裏波」の画もパッと描けたわけではなく、それに至る数々の挑戦があったことが分かった。

北斎は他方ですごい引越魔だったらしい。人生で93回、ひどいときは1日に3回も引越をおこなったという。海外でいえば、ベートーベンも引越魔だったらしい。かれらは天才というギフトと引き換えに、環境にうまく馴染めない、あるいは、世俗的な忍耐力に乏しいという性格でもあったのかもしれない。平々凡々な人生のほうがよいような気がするのは、わが凡人の凡人たるゆえんか。

日本弁護士連合会の月間誌『自由と正義』に、中原阿里弁護士が「幸せって何だろう?」という文書を書いている。同弁護士の経歴がすごい(女性の年齢を書いてよいものか迷うが、ネット情報によると50歳)。

大学卒業後、社長秘書から給食調理員まで様々な職を経験。中でも5年間、大学の医療事務職を勤めた。そこで社会的支援の重要さを思い知り、法知識ゼロからロースクールをめざし弁護士に(このとき40歳)。

弁護士になって、改めて「幸せとは何か」を問い直し、ウェルビーイングという言葉に出会う。それは肉体的、精神的、社会的に充たされた状態をいう。

心の幸せを理解したいと思い、臨床心理学、発達心理学、行動経済学、ポジティブ心理学など多様な学びに猛進し、そこからさらにコーチングを学んだ。

コーチングの手法は、傾聴、承認、そして質問。離婚紛争で夫の悪いところに焦点化されていた依頼人の関心を「質問」によって未来へ向け、本当の解決へ向けた回答を引き出すことができたという。

コーチングの魔法は弁護士のウェルビーイングにも効く。「弁護士は感情労働でもあり、依頼者対応や重圧のストレスは侮れず、私自身、心が疲弊しきった時期があります。コーチングを学んでからは聴く疲れが激減し、当事者の負の感情に巻き込まれにくくなりました。私自身を悩ませていた過度な不安癖も手放せるようになりました。一言でいうなら、生きやすくなったのです。」

自身も認めているように、このような転職や関心のありどころの頻繁な変化(いわば人生目標の度重なる引越)には、過度な不安癖も一役かっているだろう。しかしたかだか30年弱の人生でこれほど多様な挑戦をつづけてきたというのもすごい。尊敬します。

2022年6月10日金曜日

訂正します。

 

昨日のブログで、2階MVPに選ばれたIさんが「事務所内に侵入したイモリを素手でつかんで外に逃がしてやった」とお伝えしましたが、正しくは、「イモリ」ではなく「ヤモリ」でした。


お詫びして、イモリつかまえてきます。


富永

2022年6月9日木曜日

ニュースをお伝えします。

 

わたくし、富永が、6月9日(木)の朝のニュースをお伝えします。

1 開票遅報(かいひょうちほう)
 おととい7日、事務所会議にて、ホメアオウスタシス運動の選挙が行われました。

 それぞれ、お互いをほめあおうということで、今月のMVPと思う人に一人一票で投票するというものです。
 選挙管理委員のわたくし、富永が、厳正に開票を行いました。
 事務所の1階と2階の各フロアごとにMVPを選出しました。

 2階MVPはIさん、1階MVPはYさんが選ばれました。おめでとうございます。

 2階MVPに選ばれたIさんによりますと、事務所内に侵入したイモリを素手でつかんで外に逃がしてやったことが、今回の得票につながったのではないか、とのことです。


 なお、当日の開票速報となるはずが、2日遅れの遅報となったことについて、選挙管理委員のぼくは、「だって忙しいっちゃけん、しかたなかろうもん。」と、あやしげな博多弁でコメントしています。

2 フセイ選挙①
 つづいてのニュースです。
 先日の選挙で、ワイロの受け渡しがあったもようです。
 投票日である7日に、富永がケーキを買いに行き、事務所全員にふるまっていた、という目撃情報があります。
 富永容疑者は、犯行を認め、「若い人にも関心をもってもらい、選挙の投票率を高めたかった。誰かに投票を誘導する意図はなかった。」と釈明しています。

 なお、7日の午前中には、二日市のケーキ屋さんで、上下黒のスーツにネクタイ姿の男が、ショーケースの端から端までケーキを買い占めるあやしげな取引現場も目撃されています。

3 フセイ選挙②
 ここで、臨時ニュースです。
 フセイ投票があったもようです。
 投票用紙のMVP欄に斜線をした上で、同じ筆跡で3票もの投票がされていたことが発覚しました。同一人物による複数回の投票があった可能性があるとして、捜査をすすめています。
 同じ筆跡で投票があった3枚の投票用紙には、以下のようなことが書かれていました。

〇 Oさんに、午前中にお願いした仮処分命令申立書を午後にはすぐ出してもらって助かりました。大変だったと思います。お疲れ様でした。
〇 Iさんに、外国語で書かれた文法めちゃくちゃな手紙を解読してもらって助かりました。
〇 Hさんに、交流会のメーリングリスト参加者名簿をチェックしてもらって大変助かりました。ありがとうござました。

 これに対しぼくは、「だってみなさんにお世話になっとるけん、MVPなんて決めきらんもん。」と悪びれることなく犯行を認めています。
 なお、複数回にわたる投票は、いずれもMVP欄の記載がなかったとのことで、選挙結果への影響はないようです。

 以上、ちくし法律事務所ニュースをお伝えしました。

富永

2022年6月8日水曜日

夢また夢ツアー


  (半夏生)

 昨夕は事務所会議のあと、久しぶりの事務局参加の懇親会。二日市のイタリアン・アズーロで。コロナ禍となって後、大人数での会食はむずかしかったが、すこしずつ日常を取り戻している感じだ。

前回の事務所会議ではパワハラ研修を行った。酒宴の席であっても、セクハラ発言は許されない。おりから法律事務所の職員による調査結果が報告されていた。「自動車なにを買ったの?」などと弁護士からプライベートなことを訊かれるのはいやだという意見もあれば、一日中雑談もなく仕事のことしか話さないのは苦痛だという意見もあった。この二つの意見の間の隘路を通過しなければならない。とても不安だ。

話題は、直前に行われた事務所会議のことから。この点は、あとでトミーが報告してくれることだろう。

不参加のメンバーが4人ほどいたのだが、なんでも体育館の裏でなにやらやらかしているらしい。わが事務所裏にはスペースがあって、実はそこでのことらしいのだが、パワハラ防止のため監視カメラが必要かもしれない(ジョークです。)。

つづいて、シェフによる料理の説明。時節柄、イタリアからの食材の輸入はどうなっているのか質問してみた。われわれもイタリアに絵本を送ろうとして苦労しただけに、シェフの説明にも共感した。

さらに近況報告。子育て。幼稚園、学校、PTA、思春期。みな子育てしながら苦労しているようだ。なかでも、I弁護士は子連れ参加だ。ときおり鳴き声が聞こえてくる。

その後はもうてんでばらばら。仕事柄、ヤミ金や難しい相手方との電話対応、ユニークな顧客対応などの話題が多い。穏やかに受け流すのか、強硬に対抗するのか、人それぞれ。

法律事務所には、弁護士の顧客というより、事務局のファンも多い。顧客のほか、郵便局員、宅配業者をはじめ多数の人間が出入りする。そのなかで、懇切な対応をしてくれた事務局のファンができても不思議ではない。

自分一人では思い出せないが、みなで話題を共有すると、つぎからつぎへと思い出されてくる。学生時代の悪行や、中洲での悪行までも。お鉢が回ってこないよう祈る。

さらに事務所旅行の思い出。ハイライトは南仏(一般コースから外れてマティスの教会へ行った。)や北陸旅行(N弁護士が他団体のおじさんとチークを踊り、母姉を心配させた。)について。わが事務所の最初の事務所旅行は四国めぐり。高知では、どうしても温泉に泊まりたいという所長の要望から、夢の温泉に泊まった。公民館のような建物だけが記憶に残っている。

そこから、事務局が行った夢巡追荘の話へ。それこそ外観は貧弱でがっかりしたらしい。ところが、中を進むにつれ、そのサービスや設備の充実に最初の評価はつぎつぎと裏切られる展開になるらしい。最後は、大満足な結果に。

今年は、夢タウンに集合して出発、1泊目は夢巡追荘、2泊目は夢の温泉という、夢また夢ツアーが計画されるらしい。・・・かくてコロナ禍も半分ぐらい解放された気分になったのだった。

2022年6月7日火曜日

今度生まれてきたら


  NHK-BSでやっている内館牧子原作のドラマ『今度生まれてきたら』にはまってしまった。毎週欠かさず楽しみにみている(リアルタイムではなく録画でだが)。

主役は松坂慶子、風間杜夫の70代夫婦。その他、松坂の姉である藤田弓子と平田満の夫婦など。若者とちがう、あけすけな会話が小気味よい。内館牧子の筆力なのか、ベテラン俳優陣の演技力なのか、妙なリアリティを感じる。

70代にもなると、過去の選択に対する後悔はたくさんあるけれど、将来の選択肢はすくない。なにをするにも「先が見えている」。どのセリフのあとにも、「と言ったって、先は知れているけどね。」とか、「と言ったものの、どこかで聞いたセリフね。」みたいな感慨が漂う。

そうした枠組みのなかでなされる主人公たちの「最後の」あがきの滑稽さが笑わせるけれども、人間存在の素晴らしさをおしえてもくれる。

同窓会に参加した平田満が学生時代のマドンナと再婚しようと、藤田弓子と離婚を言い出す。マドンナはジュディオングで、学生時代は自分のことをバンビちゃんと呼び、「わたし、日本食食べらんない~」などと甘え言葉で言い、男子には超人気があったけれど、女子には嫌われていた存在。あはは。いたね、そういう子。

離婚を切り出された藤田弓子のふてくされた演技が秀逸。それを他人事として感想を述べる松坂慶子の「人生って、いろいろね~」みたいなセリフが笑わせる。番組のはじめのほうで、藤田弓子が別の文脈でおなじセリフを言っている伏線がとても効いている。あはは。

松坂慶子は「今度生まれてきたら、この人とは結婚しない」とつぶやいたけれど、みなさんはどうでせう?

2022年6月6日月曜日

六月博多座大歌舞伎


  雨の日と日曜日は博多座。ということで、大歌舞伎の観劇。コロナ禍後、初かな。お客さんもやや少なめ。

昼の部の演目は、橋弁慶、鷺娘、義経千本桜からすし屋の段。鎌倉殿の影響だろうか、義経にはじまり義経に終わる。間奏は菊之助の鷺姫。暗闇でしか見えぬものがある、暗闇でしか聞こえぬ歌がある。カムカムの桃剣さんと同一人物とはおもえぬ女方舞踊。

義経千本桜といいつつ、すし屋の段には義経はでてこない。でてくるのは死んだはずの平維盛。絶世のイケメンだったらしい。鎌倉殿では濱正悟が演じていた。

死んだはずというのは、平家物語によるから。一の谷の戦から戦線を離脱した維盛は熊野灘で補陀落をめざして自死したことになっている。しかし、そこははっきりしないらしい。そのため、義経千本桜の作者らの創作意欲を刺激のだろうか。

すし屋の段の主役は維盛でもない。すし屋のドラ息子のいがみの権太。かれは母は騙してお金をせびりとったり、親不孝の数々。この日は父親がかくまっていた維盛とその妻子を鎌倉方に売り渡してしまう。これに怒った父は彼を斬ってしまう。

・・・。刃傷で息も絶え絶えとなった権太は、大どんでん返しの真相を語る。ここは菅原伝授手習鑑の寺子屋の段によく似ている。江戸期の庶民はこのような、ほんとうは自己犠牲で義理堅い、どんでん返し、取り返しがつかない、といった場面が好きだったんでしょうね。

ちなみに、「維盛」を追い、その首を受け取った鎌倉殿の武将は梶原景時。演じるのは中村芝翫。私生活も忙しいらしい。NHKドラマでは中村獅童がしぶく演じている。

2022年6月2日木曜日

最近の交通事故事件ー弁特の効用


  戒壇院の菩提樹の花。花言葉は夫婦愛、結婚。

  ♪Am Brunnen vor dem Tore
  Da steht ein Lindenbaum~

 さて最近の交通事故の損害保険には弁護士特約(弁特)がついている。交通事故が発生したとき、損害賠償を請求したり、されたりする際の弁護士費用も保険会社がみてくれる。

弁護士費用は、着手金と報酬に分かれ、弁護士に交渉を頼めば、最初と最後に11万円、合計22万円はかかることになる。個人でこれを負担するとなると、賠償額が50万円以下の事件などはなかなか頼みにくい。それがかっての状況だった。いまはこの問題はほぼ解消された。

利用者側からすればこのように便利になった。が、弁護士側からすると価格交渉権を損保会社側に握られ、安く使われていることも否めない。それだけならよいのだけれども、保険会社が説得に失敗した難しい事件をやらざるをえないことも多い。

事件は勝ち筋と負け筋とその中間に分かれる。勝ち筋は7割くらい勝ちそうという事件、負け筋は7割くらい負けそうという事件、その中間は勝ち負け5分5分という事件である。

一般の事件の場合、勝ち筋の事件は進んでお引き受けする。しかし、負け筋の事件はお断りすることが多い。勝ち負け5分5分の事件は、それを承知で依頼をしていただくことになる。負け筋の事件において、弁護士費用の負担を考慮すると、あきらめる方向に作用することになる。

ところが、弁特となると、負けても自分の腹は痛まないので、負け筋でもやってくれと言われることが多い。これはなかなかツライ。裁判所にでかけていくと、いきなり裁判官から説教されたりする。

交通事故事案は、他の事件と異なり、類型化が進んでいる。裁判を起こさずとも、結論はほぼ予測できる。それなのに、なぜ無理筋で裁判を起こしたのだ?と、お叱りを受けるのである。ですよね。わかっちゃいるんですが。

・・・と、まぁ、弁特事件には気の進まぬことが多いのであるが、この間、予期せぬご褒美があった。しかも2件続けて。

1件目。子どもさんを後部座席に乗せていたところ、追突事故に遭ったという事案。物損と人損。車の修理代と治療費・慰謝料・休業損害である。一般には、弁護士費用は1件分である。子どもさんの分は別だから2倍です、などと顧客様に言えるわけがない。

ところが、弁特の規約によると、子どもの件も1件としてカウントされる。なので、2件分の費用をちょうだいすることができた。しかも、損保会社からそのように教示された。予期していなかっただけに有難い出来事だった。

2件目。そう思っていたら、別のかたの事故のうち、自動車の名義が違うと言われた。たしかに、人損被害は依頼人のものだが、運転していた自動車の名義は子どものものだった。この件も2件分の費用をいただけることになった。ありがたいことだ。

ものごとには必ず良い面と悪い面がある。悪い面があれば良い面もあるものだ。人生をハッピーに生きるには、できるだけ良い面に注目して生きていくことだ。いつも顧客様にアドバイスしていることだ。自分にもあらためて言い聞かせよう。

 ♪Und seine Zweige rauschen
   Als riefen sie mir zu
   Komm her zu mir,Geselle
   Hier findst du deine Ruh'~

2022年6月1日水曜日

出張わびさび相談会

 

先日、筑紫野市生涯学習センターにて、無料出張相談会を開催しました。

ちくし法律事務所ブログ: 無料出張相談会を実施しました(5/28) (chikushi-lo.jp)


相談に来られたのは1組。相談以外の時間はのんびり本を読んでいました。

最近は、NPOや他士業の先生方も無料相談会などなどをしておられるようで、競合も多いみたいです。


これは広告を工夫しないといけないかなあとか、開催時間や場所を考えた方がいいかなあとか、いろいろ思っていたわけです。


そうしていたところ、先日お会いした方に、こんなことを言われました。


「弁護士ですか。弁護士は言葉が大切ですよね。」


ここまでは、よく言われます。特に、私はぱっと見でも若い弁護士ですから、他業種の諸先輩方にはそういうお言葉をいただくことがあります。


ただ、この方は、


「言葉は刺身みたいなものですからね。」


と続けられました。

頭に「?」が浮かぶ私。


「刺身はそのままで食べない。わさびがいります。言葉もわびさびが大事だと思いますよ。」とのこと。


ピリッとしたアドバイスに、鼻の奥がツンっ、じゃなくて背筋がピンっとなりました。


わびさびかあ。よし、じゃあ次の出張相談会は、日本庭園で開催しますね(迷走)。


富永

幹を理解する


 きょうから6月。6月は恋愛の季節だと言っていたが、ほんとうだろうか。ギリシア・イタリアのように乾燥した気候ならともかく。暑くてしょうがない=アツくてしょうがないという洒落かな。

写真は戒壇院のクワの実。赤い実と紫の実がなっている。ギリシア神話には「ピュラモスとティスベ」という悲恋話がある。それによると、赤と紫は二人の血の色らしい。桑の花言葉は「知恵」。

さて一般に弁護士の仕事は相談からはじまる。警察に逮捕されたから留置場に面会にきてくれというのは例外だ。

六法というのは文字どおりルール・ブック。野球やサッカー、将棋やトランプのルールとおなじだ。ルールを曲げることはできない。何百人もの国会議員がつくった法律を1人の裁判官が曲げることはできない。難しくいれば三権分立だ。

相談からいきなり裁判を起こすということはない(起こされている場合は別だ。)。まずは交渉してみる。しかし、交渉で解決しなければ裁判になる。その場合、裁判官がルールを曲げることはないとなれば、交渉だからといってルールを曲げることはできない。

まずはそのことを理解してもらう必要がある。たとえば、共同相続。農家の長男からすれば、納得できないかもしれないけれども、このルールは曲げられない。それはおかしいと何度も押し問答になる。しかしここは譲れない。

紛争の構造は、概ねツリー状になっている。話せば長くなるけれども、要はこうだと幹をとらえてほしい。それなのに、枝葉に気をとられて、なんど説明しても幹を把握できないことがある。

最近は、インターネットの普及により、事前に学習してこられる方が増えた。当該ケースでは無関係の質問をたくさんされる。それにお答えしてもよいのだけれども、脇道にそれてしまって、根幹の理解がおろそかになってしまう。そのようにご説明するのだけれども、枝葉への興味が尽きない。・・・

問題解決は引越とおなじですよ。まずは大きな家具の置き場所を決めないと、ゴミ箱はあとからでもよいでしょ。そのようにも説明する。人間の思考にはメモリィなどの制約から、すべての問題をいちどに考えることができない。それで問題解決にはプライオリティを決めることが重要になる。それでも、どうしてもゴミ箱をどこに置くかが気になってしょうがない。・・・

弁護士37年。弁護士の仕事でいちばん難しいのは、やはり相談だと思う。