2021年6月17日木曜日

塩竃の夜ー仏果を得ず


 その夜、目盲法師の、琵琶を鳴らして、奥浄瑠璃といふものを語る。平家にもあらず、舞にもあらず、ひなびたる調子うち上げて、枕近うかしましけれど、さすがに辺土の遺風忘れざるものから、殊勝におぼえらる。

平家物語でもなく、幸若舞でもなく、いまの人形浄瑠璃でもなく、当時、奥州で流行していた奥浄瑠璃。いまはもうほとんど演奏されていないそう。まさしく流行。

演目は「牛若東下り」など。芭蕉が聞いたのも、おそらくこれ。浄瑠璃という名前の起源も、浄瑠璃離姫物語だとか。これもまた義経に由来しています。

1174年、牛若丸は奥州の藤原秀衡を頼って東下り。途中、矢作の里で、聞こえてきた琴の音に笛の根であわせたことから、浄瑠璃姫とラブに。しかし追われる牛若は姫をおいて東国へ。姫は悲しみのあまり菅生川に身投げ(流行)してしまいましたーという悲劇です。

いまわれわれが接することができる浄瑠璃は文楽(人形浄瑠璃)ぐらい。人形劇付きの浄瑠璃です。かってNHKで新八犬伝をやってましたが、あれ。べんべん。

博多座に来るのを待つか、大阪の国立文楽劇場まで行くか。吉本新喜劇に行くひまがあったら(笑)、いちどはどうぞ。

橋本大阪市長(当時)が補助金を見直すと言い出して騒動になりました。さらに、コロナ禍のなか、伝統芸能・舞台芸能はどこも青色吐息(桃色吐息じゃないですよ、若い人!)。税金を投じてでも伝統芸能を援助していく価値は十分にあると思います。

そうかな?と思うかたは、三浦しをんの『仏果を得ず』をご一読くだされ。わが事務所には三浦しをんファンが数知れず。あのぶっちゃけトークが炸裂するエッセイ類もだいすきですが、あまり知られていない大事な仕事に光をあてる小説系もだいすきです。しをん様、ラブ!

夜分すみません、ついつい興奮してしまいました。宿の壁うすく、枕近くでかしましかったでしょうけれど、わが国の遺風忘れないよう頑張りましょう。

なお、「仏果を得ず」とは、『仮名手本忠臣蔵』「早野勘平腹切りの段」のなかの名ゼリフから。切腹のさい「仏果を得よ」(=死んで成仏せいよ)といわれたことに対する勘平の返しの言葉。死んでたまるか、死んでも本懐を遂げてやる(敵討ちの御供をする)!という意味です。橋本市長なんかに切られてたまるか!と読むのは読みすぎか。

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