2011年10月31日月曜日

 岩戸神楽@長野阿蘇神社



 先週末、いつものお仲間で阿蘇山の高岳・中岳に。
 晴男の私ですが、とりあわせの問題か?雨に。

 山行はぜんぶ雨のなかでしたが
 みな元気でした。タフな連中です。

 宿泊は南阿蘇の地獄温泉・清風荘
 混浴・すずめの湯をはじめ、いい温泉です。

 料理も囲炉裏を囲んで
 シシ、カモ、ヤマメや新鮮野菜など。うまい。

 計画になかったのですが、宿から
 「きょう、お神楽があるので行きませんか?」とのお誘い。

 温泉につかってまったりと話すというほうがいいかなとも
 思ったのですが、みなの意見もきいて参加することに。

 これが大正解
 得がたい体験でした。

 場所は、清風荘から車で10分ほど下った
 長野・阿蘇神社。
 
 いくと神楽舞台がしつらえられ
 出店も出るなどお祭り気分がいっぱい。

 観衆は舞台内外に100人弱くらいだったでしょうか
 地元の人とおぼしき人7:観光客3くらいか?

 演目は①八岐大蛇、②剣舞、③天の岩戸、④柴引荒神…
 送迎の関係で、最後の神楽は見損ないました。

 えーと、えーととヘタウマな解説があって
 笛・太鼓の音色に乗せてお神楽がはじまります。

 笛・太鼓というのは
 われわれの古い能や腹を心地よく刺激してきます。

 地元の人たちにとっては、かつて知ったる役者さんたちで
 それが小中学校の学芸会のような雰囲気をかもし、いい感じ。

 写真はヤマタノオロチを退治せんとするスサノオ
 そのあたたかく包み込むような・おおらかな舞はすばらしい。

 剣舞は地元の中・高校生たちが凛々しく舞います。
 親戚一同がはらはらしながら応援している様子が伝わります。

 (中略)

 われわれにとってのクライマックスは柴引荒神
 これが観客参加型の出し物で絶品。

 ストーリーは荒神が柴を集めてきて神前に供えるという
 単純なもの。

 ただし、5本ほど舞台に置かれた柴には、地元の子どもたちが
 「土」として張りつき、抜かれまいと必死の抵抗をします。

 それも、荒神さまは簡単に引き抜きにかかりません。
 じらしにじらし…、子どもたちのバクバクが伝わってきます。

 いざ抜くときは聴衆と舞台が一体となって、かけ声をかけあい
 クライマックスを迎えます。

 途中、餅捲きまであって、私もひとつキャッチできました。
 きっと良いことがあるはず。

 餅捲きをする人も地元の子どもたちで
 「○○ちゃん、こっちこっち。」などと不正?横行もまた楽し。

 思いがけず
 「千と千尋の神隠し」体験でした。
 

2011年10月28日金曜日

 リンドウ



 リンドウ(竜胆)
 多年生の植物。
  
 むかしの人はなんの根でも一度は食べてみたようで
 リンドウの根は非常に苦いらしい。

 その苦さが唾液と胃液の分泌や腸の蠕動を高め食欲を盛んにするので
 漢方では根を(りゅうたん)といい、健胃剤として用いられます。

 その薬効から、日光(二荒)では霊草とされています。
 それにはつぎのような縁起が。

  昔、役小角が日光の奥山道を歩いているとウサギが現れ
  リンドウの根を雪の中から掘り出した。

  ウサギは、主人が病気なのでリンドウを探していたといって
  走り去った。

  役小角が試しに病人に飲ませると優れた効き目があり
  「二荒神のお告げに違いない」と神意を感得した。

 熊の胆(い)も苦いことが知られていますが
 それよりずっと苦いことから竜の胆ださそうです。
 
 われわれも子どものころ、程度が甚だしいことを
 「鬼のように」などと修飾表現していました。

 そこは古代中国ですから、「竜のように」
 と修飾表現していたのでしょう。

 日本(『和名抄』10世紀ころ)では、衣夜美久佐(えやみくさ)や
 爾加奈(にかな)とされていました。

 やはり苦さから、それぞれ笑止草(えやみぐさ)
 苦菜(にがな)から来ているらしい。ほんとうでしょうか?

 そのリンとした姿に由来するものでしょうか
 「誠実」「正義」「貞節」という花言葉を贈られています。
 
 赤、黄、白色の花も楽しく明るい気持ちになりますが
 きれいな紫~青色の花も魅力的。

 その色に由来するものでしょうか、「あなたの悲しみに寄りそう」
 だとか「悲しんでいるときのあなたが好き」など物語的な花言葉も。

 山でも、他の花が枯れてしまったなか
 リンと咲くリンドウを見かけます。

  草の花は、なでしこ。唐のは更なり、大和のもいとをかし。
  女郎花。桔梗。朝顔。刈萱。菊。壷すみれ。

  竜胆は、枝ざしなどむづかしげなれど、他花のみな霜枯れたる中より
  いと花やかなる色合ひにて、さし出でたる、いとをかし。…

                        清少納言・『枕草子』
 

2011年10月27日木曜日

 ムラサキシキブ



 きのうは女性のお客さま(と後輩)から
 本ブログを読んでいるとお声かけいただきました。

 「お気に入り」に入れていただいているそうです。
 まいどありがとうございます。

 女性読者からのお声がけは、ほんに励ましになります。
 男性のはまぁないよりましぐらいでしょうか(失礼)。

 これで
 またしばらく書きつづける意欲がわいてきました!

 さて、今週はなんとなく花木シリーズになっているので
 きょう、あすと、あと2つ見つくろいましょう。

 京都つながりで、ムラサキシキブはいかがでしょう?
 いまの季節、花木というより実木ですが。

 もちろんムササキシキブ=紫式部ですが
 もとは紫の「シキミ」=重る実=実がたくさんなるという意味だとか。

 「日本人なら知っておきたい日本文学」の紹介により
 『堤中納言物語』のアンチョコを読んだことはまえに書きました。

 このつながりでいま読んでいるのが
 ビギナーズ・クラッシクス『源氏物語』(角川書店=編・角川文庫)。

 むかしむかし与謝野晶子の訳で読んだのですが
 細部はまったく記憶にございません。

 いまの年齢になって読むと
 すごく感慨深い。

 こんな高貴なイケメンの女性遍歴の話を中宮をはじめ宮中の女性たちが
 きゃあきゃあいいながら読んでいたのですから。

 その盛名は上総(千葉県)の田舎(失礼!)まで鳴り響き
 夢おおき少女・菅原孝標の娘の心までわしづかみにしたのですから。

 そして『更級日記』を書かしめ
 ふしぎちゃん一家の生態をわれわれに伝えてくれているのですから。

 各帖のタイトルがそれぞれ深い意味や象徴性をもっていることも
 当然といえば当然でしょうが、トリビア満載。

 「帚木」=遠くからは箒を立てたように見えるが、近づくと見えなくなる
 信濃国の伝説の木=求愛にこたえるように見せかけて、実は冷淡な人。

 同名の作家がおられますが、やはり実は冷淡なのでしょうか?
 「葵」=「あふひ」=「逢う日」。

 「賢木(さかき)」=「榊」(神事に用いる神木)
 =嵯峨野にある「野の宮」。

 「須磨」=罪・けがれを除く意味の「澄ま(す)」
 =源氏が禊ぎをする地。
 
 「明石」=「明かし」(明るくするとの祝意)
 =源氏の運命を向上させる、いわゆる「あげまん」な女性。

 ダジャレ好きにとっては
 たまりません。

 源氏は、政敵・右大臣一派の圧迫が強まるなか
 朧月夜との密会をフライデーされ、やむなく須磨へ下る。

 そして須磨で罪・けがれを澄ませ
 明石で運気を向上させて京都中央政界への復帰をはたします。

 この話
 現代政界の誰かさんに似てません?

 ところで、むかしむかし読んだ本の訳者・与謝野晶子の
 お孫さんが与謝野馨さん。

 薬害肝炎事件における福田総裁の政治決断に際しては
 ご尽力をいただきました。

 源氏を読んだむかしむかしに
 そのような数奇なめぐり合わせになるとは夢にも思いません。

 さすがのムラサキシキブも
 ビックリされたことでしょう。
 

2011年10月26日水曜日

 ハ ギ



 ハギ(萩)は、マメ科の落葉低木。
 おとといのフジバカマとおなじ秋の七草の1つ。

 荒れ地に生えるパイオニア植物で
 万葉の時代から親しまれてきました。

 花札ではハギにイノシシ
 歌ではハギにシカのとりあわせでです。

 山上憶良の歌では
 ハギとフジバカマをとりあわせたものも。

   萩の花 尾花 葛花 瞿麦の花

        女郎花 また藤袴 朝貌の花

              万葉集・巻八 1538

 山上憶良はむかしの福岡県知事
 太宰府文壇で大伴旅人に刺激をうけ、多くの和歌を残しています。

 ここで歌われた萩の花も
 太宰府の野辺に咲いていたものでしょうか。

 太宰府近辺には山上億良の歌碑が
 たくさんあります。

 太宰府政庁跡ちかく学校院跡には
 有名な「子等を思ふ歌」の歌碑も。

   瓜食めば 子ども思ほゆ 栗食めば まして偲はゆ

   何処より 来りしものそ 眼交にものな懸りて 安眠し寝さる

  反歌

   銀も金も玉も何せむに勝れる宝子に及かめやも

 万葉の時代にこんな和歌が詠めるなんて
 山上億良もパイオニアだったんですね。 

 ハギの花言葉は
 「思案」「思い」「柔軟な精神」。
 

2011年10月25日火曜日

 ホトトギス



 ホトトギス(杜鵑草)
 ランの仲間かとおもいきやユリ科。

 天竜寺の
 秋の日陰に咲いていました。

 名前は、花にある斑点模様が
 鳥のほうのホトトギスの胸にある模様と似ていることから。
 
 花言葉は「秘めた意志」
 わたくしの秘めたる意志は…。

 書けません。
 書いたとたん、秘めたる意志ではなくなるので(笑)。

   ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば

              ただ有明の 月ぞ残れる

                      後徳大寺左大臣 

 きのうジュンク堂に行ったら
 「ツレうつ」の原作が文庫(幻冬舎)で平積みにしてありました。

 漫画なので
 さっと読めました。

 うつからの回復が、たんにモトの状態に戻ることではなく
 タケ的人間からヤナギ的人間への変容であるように受け取れました。

 本人だけでなく
 配偶者をはじめとする、まわりの人間関係を含めての。

 うつに悩むみなさんにとって、わずかであっても
 光射す方を指し示し、励ましになればいいなと思います。
 

2011年10月24日月曜日

 フジバカマ



 フジバカマ(藤袴)は、キクの仲間
 秋の七草の1つ。

 かつては日本各地の河原などに群生していたそうですが
 今では環境省のレッドリストで準絶滅危惧種に指定されています。

 花言葉は「ためらい」
 「優しい思い出」。

 写真は京都嵯峨野にある天竜寺に
 咲いていたもの。

 天竜寺は、開基が足利尊氏、開山が夢窓疎石とされるも
 フジバカマは万葉の昔から日本人に親しまれてきました。

 少なくとも、源氏物語の第30帖のタイトルになっているので
 王朝の時代にはポピュラーだったはず。

 「藤袴」のタイトルは
 物語のなかで夕霧が詠んだ和歌から。

   同じ野の 露にやつるる 藤袴 
 
          あはれはかけよ かことばかりも

  (あなたと同じ野原で露にぬれてしおれている藤袴です。

    せめて、あはれだと同情の言葉をかけてやってください。)

 当然、玉鬘はソデにします。
 こんなメメしい口説き文句ではねぇ。

 ま、この種の男のメメしさは、王朝時代からモテキまで
 絶滅することなく連綿とつづいてきたことは確かなようです。
 

2011年10月21日金曜日

 離婚にいたる難路 



 さいきん離婚事件が2件解決しました。
 どちらも子どもが2人いるケースです。

 1件はまだ小・中学生
 1件はもう成人されています。

 離婚事件では、離婚するかどうかのほか
 親権、面接交渉の決め方がむずかしい。

 それまでの共同体をできるだけ動揺させないよう
 わかれるのが子どものためになります。

 でも最愛の伴侶を離婚により失うという事態は
 自己のアイデンティティを根本から動揺させる悲劇。

 心のなか、頭のなかでは、正負の感情がたえず渦巻き
 子どもたちの運命も小舟のごとく翻弄されます。

 こんかいは両親とも子どものことを最優先させ
 円満な妥結をはかってくれました。

 あとは財産分与、慰謝料、養育費などお金の問題
 これらは子どもの問題とちがって調整がしやすい。

 もちろん、配偶者の職業、地位、性格などによっては
 もめることもあります。

 子どもの問題で譲歩したことが
 思わずお金の問題となって噴出することもあります。

 そのような難路をとおって
 なんとか目的地に着くことができました。

 弁護士としてできることはここまで。
 あらたな幸せを是非つかんでほしいと願っています。
 

2011年10月20日木曜日

 一歩、一歩



 ちくし法律事務所ニュースのことしの新年号に
 ご寄稿いただいた黒川徹先生が本を出版されました。

 「一歩、一歩 小児神経科医のあゆみ」
 (慶應義塾大学出版会)です。

 国立療養所西別府病院と医療法人誠愛リハビリテーション病院の
 院長当時、職員むけに話した原稿を中心にまとめられたもの。

 黒川先生らしい気さくな人柄とユーモア
 あふれる文章で、読んでいて楽しくなります。

 なかでも恩師との交情、ご家族への愛情などは
 さすがという感じです。

 海外留学や海外視察のレポートも軽快で
 ときになされる文明批評はなるほど。

 そうした先生の小児神経科医としての一歩、一歩のあゆみを
 知ることができました。

 さて我田引水のきらいはありますが、なんと
 当事務所ニュースになされた寄稿も掲載されています。

 「パウロ・ロムブロソー先生の太宰府訪問の際に」という文章で
 その際、黒川先生と私の話したことが記されています。 

 光栄です。
 また医学界の大先生がたが居並ぶなか、大変恐縮です。

 パウロ先生はエール大学で児童精神医学を講じられ
 日本小児神経学会総会で特別講演をするために来日。

 黒川先生の恩師のご子息にもあたられます。
 九大講演のため来福のおりには太宰府天満宮にもご案内されました。

 ところで、犯罪とはなにか?
 について、刑法理論では大きな2つの考えがあります。

 人は自由な意思によって犯罪をおかすのか?
 性格的に犯罪をおかしてしまうのか?

 カントをはじめとして自由意思を前提に刑法理論があったところ
 19世紀に都市化・工業化がすすむなか犯罪と再犯者が激増。

 自由意思を前提とする刑法理論では
 時代に対応できなくなりました。

 こうしてイタリアのチェザーレ・ロンブローゾという精神科医が
 犯罪は人は生まれつきのものだという問題提起をされたわけです。

 以来、犯罪とはなにか?刑罰とはなにか?
 について双方の立場で議論がなされるようになりました。

 このように刑法の教科書に書いてあります。
 いまの教科書は知りませんが、大塚先生のご著書には書いてありました。

 そこで、おなじロンブロソーという名字だけれども
 なにか関係がおありですかと、黒川先生に尋ねました。

 すると、チェザーレ先生は黒川先生の恩師の方の祖父
 パウロ先生の曾祖父のあたられるとのことでした。

 教科書に出てくる19世紀の大学者と黒川先生がご縁があると知り
 正直、びっくりしました。
 
 それで話がおおいに盛り上がったわけですが
 黒川先生のご寄稿はそのときのことを書かれたものです。

 ただし、それにとどまりません。
 先生はチェザーレ先生のお弟子のことにも言及されています。

 イタリア最初の女性医師マリア・モンテッソーリ(1870~
 1952)です。

 この方は心理学や教育学でも有名な方で
 私も存知あげていました。

 彼女はありがちなことながら、初の女性医師として不遇ななか
 人間の才能を伸ばすうえで環境の重要性を発見します。

 師弟のあいだで
 生来vs.環境という正反対の見解となったわけです。

 このような数奇な関係があることは知りませんでした。
 教えていただき、大変勉強になりました。

 断片的な島状の人間関係や知識がつぎつぎとつながっていくのは
 とてもスリリングで興奮します。

 少なくとも人間のDNAにそのような特徴が生来的に
 そなわっていることは間違いないようです。
 

2011年10月19日水曜日

 虫愛づる姫君 



 10月3日の記事で、蛇蔵&海野凪子さんによる
 「日本人なら知っておきたい日本文学」を紹介しました。

 知っておきたいとされるのは、ヤマトタケル、清少納言、紫式部
 藤原道長、安倍晴明、源頼光、管原孝標女、鴨長明、兼好など。

 せっかくだから何か読んでみようかな~と思いながら
 帰り道を歩いていたら、写真のバッタくんたちが登場。

 そうか!お薦めは『堤中納言物語』の
 「虫めづる姫君」か!

 といっても原文で読むのは大変なので、角川文庫のビギナーズ・
 クラシックス日本の古典シリーズ(阪口由美子さん編)の現代文で。

 これがめっぽうおもしろい。
 学校で習ったはずだけど、こんなおもしろい話だったかな?

 「蝶よ花よ」と育てられ~という表現がありますが
 ひょっとするとその語源は虫めづる姫君か?姫君いわく。

 「人々が、『蝶よ花よ』と誉めるこそ、考えが浅く奇妙なことです。
 人間というものは、誠実さがあり、物の実体を探し求めてこそ」。

 私が人生50年をかけていまだ悟りえぬ真実を
 その若さにして達観した姫君、端倪すべからざる能力に脱帽。

 かとおもうと、「鬼と女は人に姿が見えないのがよい」などと
 平安貴族の娘らしい意外と古風なお考えも。

 姫をとりまく侍女たちの口さがないおしゃべりも、いまふう。
 辣腕女社長の連ドラに出てくるOLのセリフとして立派に通用しそう。

 10月3日の記事でも、「気になる続きは二巻で!!」というすごい
 終わり方をするのに続かないという、すごい話だとは紹介しました。

 でも本体の『堤中納言物語』もそうとう。
 この物語にはなんと堤中納言さんが登場しません!?

 その理由については諸説あるようですが
 みなさもも謎解きに挑戦してみてください。 

 物語は短編物語集。編者は不詳。
 10編の短編物語および1編の断片からなっています。

 ラインナップはつぎのとおり。
 (タイトルだけでも魅力的。)

 「逢坂越えぬ権中納言」
 「花桜折る少将(中将)」
 「虫愛づる姫君」
 「このついで」
 「よしなしごと」
 「はなだの女ご(花々の女ご)」
 「はいずみ」
 「ほどほどの懸想」
 「貝合はせ」
 「思はぬ方にとまりする少将」
  未完断片

 秋の京都に行きたくなりました。
 そうだ!…
 

2011年10月18日火曜日

 ツレがうつになりまして。



 映画「ツレがうつになりまして。」(佐々部清監督)
 観ました。キャナルで。

 「猿の惑星 創世記(ジェネシス)」かどうちらか
 と思って行ったところ、時間の関係でツレうつに。

 こういう情況に流された選択も悪くありません。
 実際、正解でした。

 夫の鬱病と向き合って生きる夫婦の物語
 宮崎あおいさんと堺雅人さんのコンビで。

 堺さんは、倒産しそうでリストラつづきの外資系ソフト会社の
 電話苦情窓口という誰でも鬱になりそうな職場と仕事。

 日ごろ几帳面な性格もわざわいして、病状が悪化
 寝ぐせに気が回らないほど。

 宮崎さんは、売れない漫画家。経済的に追い詰められて編集者に
 仕事を懇願するはめに。

 その際に、出た言葉がタイトルの「ツレがうつになりまして。」
 これこそ、鬱に正面から取りくむ心からの言葉なのでした。

 骨董のガラスビンについての比喩、「割れなかったから今ここにある」
 というのは宮崎さんのお気に入り。

 私も下り坂のときはできるだけ何もしないでやりすごし
 あまり藻掻かないようにしています。
 
 宮崎さんと堺さんのコンビは、じつにほのぼの。
 これだったら、鬱からの回復は容易でしょう。

 でも宮崎さんがつれ合いだったら
 そもそも鬱になどならないような気もします。
 

2011年10月17日月曜日

 珍妃の井戸



 (夜明けの八ヶ岳と富士山)

 ひきつづき浅田次郎さんの
 「珍妃の井戸」(講談社文庫)。

 オビに「蒼穹の昴」シリーズ第二部!と銘打たれていますが
 それはちょっと大げさ。

 「蒼穹の昴」と「中原の虹」との間の
 間奏曲くらいの位置づけでしょう。

 「蒼穹の昴」の道具立てと登場人物を利用しての
 幕間のお芝居という感じです。

 浅田さんとしても、手すさびというかこんな器用な芸もできるよ!
 というくらいの遊び心から執筆されたものでしょう。

 背景はあの「北京の55日」=義和団事件
 その最中、光緒帝の美妃が井戸に投げ込まれて殺害されました。

 犯人は誰か?
 大英帝国を筆頭に独、露、日の4カ国の調査団が編成されます。

 物語の構造は芥川龍之介の「藪の中」そっくり
 真相は藪の中か井戸の中か?

 調査団は証人や容疑者をつぎつぎに尋問していきますが
 おのおのの証言はすべて別方向を指し示しています。

 そして結末で明かされる犯人は
 誰か?

 推理小説の犯人としては禁じ手のはずですが
 事件の背景からして犯人はこれ以外にありえないでしょう。
 

2011年10月14日金曜日

 蒼穹の昴



 弁護士になってから数件
 日本人男性と中国人女性の離婚事件を手がけました。

 最初のころは中国がいまだ発展途上国みたいな情況で
 離婚後の中国人女性の立場は非常に弱いという感じでした。

 最近は中国の経済的発展もめざましく
 離婚をめぐる情況も変わりました。

 離婚して中国に帰ることになっても
 それほど困らないのではないかという感じなのです。

 われわれの仕事も時代の情況とともに
 変化するなぁと感じた次第です。

 そんななか、ある人の薦めで
 浅田次郎さんの「蒼穹の昴1~4」(講談社文庫)を読みました。

 中国清朝末期、戊戌(ぼじゅつ)の政変がバックグラウンドに
 若者たちの生きざまと友情を描いています。

 戊戌の政変は1898年、西太后が、栄禄、袁世凱らとともに
 武力をもって戊戌の変法(改革)を挫折させた、反変法のクーデター。

 日本でいうと安政の大獄あたりに当たるものでしょうか
 新しい体制をめざす改革勢力を旧勢力が弾圧した事件です。

 私たちが子どものころ、義和団事件(1900年)を背景とした
 「北京の55日」という映画がありました。
 
 少し時代はくだりますが南京事件(1927年)を背景とした
 「砲艦サンパブロ」という映画もありました。

 いずれもアメリカの上から目線で描いたもので
 いたいけな僕らはそのような中国観を形成させられたものでした。

 その後、坂本龍一さんの音楽も記憶にのこる「ラストエンペラー」を経て
 「蒼穹の昴」。

 そこで描かれる若者群像は、日本の維新前夜のおける若者らの活動
 となんら変わりありません。

 あたりまえというべきか
 「壬生義士伝」における浅田節とおなじ心情なのです。

 広大な蒼穹のなか、昴に導かれ、あるいは、昴をめざす心意気に
 国、人種、時代の違いはないんですね。
 

2011年10月13日木曜日

 山の夜は眠れない



 まえに笠ヶ岳山荘の夜を書いたところ、女性読者から強い反応があったので
 今回も五竜山荘の夜の実態をなまなましくレポートしたいと思います。

 私が振り当てられた部屋は「イワカガミ」という部屋の下段
 高山植物の名前もかわいい部屋ですが、花の愛らしさとは縁遠い雰囲気。

 写真の右隅のほうに寝台列車の階段みたいなのが写っていますが
 上段の人はこれで上に行きます。

 ご覧のとおり足の踏み場もないほどびっしりと
 布団が敷き詰められています。

 それでもこの下段に敷ける敷き布団は全部で7枚
 この日はこの下段に10人が泊まることに。

 笠ヶ岳山荘のように2人で布団1枚という混雑ではなかったものの
 3人で布団2枚という混み具合。

 何人かが布団と布団の境界に寝なければならないのですが
 この日、私はそこで寝ることになりました。

 それでも2人で布団1枚の前回よりマシだと
 ポジティブにシンキングすることにしました。

 食事は17時からで17時30分には終了します。
 それからが長い…。

 山小屋で男どもはすることがありません。
 テレビもないし、本を読むには暗すぎる。

 小屋によってはテレビルームみたいなのがあるのですが
 笠ヶ岳も五竜山荘もありません。

 この点、女性はおしゃべりができるのでうらやましい。
 女性部屋からは「アラ還」のおばちゃんたちの声がかまびすしい。

 男性もあいさつはかわすし、適当に情報交換などもするのですが
 女性のノリで数時間もおしゃべりは続きません。

 消灯は21時なのですが
 やることないので早寝を決め込む人がおおい。

 これがまた苦渋の選択。18時ころ寝てしまうと夜半に
 目が覚めてしまい、その後がながい。

 どうしようかなぁと思ってうつらうつらしていると
 両隣の男性は眠ってしまいました。

 幸い、後ろの男性がナマあたたかい息を
 吹きかけてくることはありませんでした。

 やったー!
 今夜は眠れそう。

 と思いきや
 左隣の男性がブーッとおおきなのを1発。

 うわーっと思ってしばらくすると
 今度は右隣の人がブッ・ブッ・ブッと連射。

 しばらくするとまた左隣がブオーッツ。
 すると右隣が…

 かくて今夜も眠れそうにありません。
 
 (この夜も操はまもられました。
  念のため。)
 

2011年10月12日水曜日

 山の高齢者は元気



 八方尾根から唐松岳にのぼり、長い稜線を経て
 五竜岳山荘につきました。

 チェックインしようとすると
 なんだか困惑顔の先客が順番待ち。

 なんだろう?と思うと、70歳くらいのおばあちゃんが
 窓口の若いおにいちゃんと話ちゅう。

 きくともなくきいていると、いまから(2時ころ)
 五竜岳の山頂にのぼるべきかどうか協議中。

 山頂ふきんは数日前に降った雪がのこり
 特に早朝は凍結してすべりやすく危険。

 なのできょうのうちに登った方が安全であると
 おにいちゃんはいっしょうけんめい説得しています。

 でもおばあちゃんは、わしゃ長いこと歩いてきたけん
 疲れとんじゃ~などとなかなかこれに応じません。

 …5分けいか、…10分けいか
 どうも話がおわりそうにありません。

 山にのぼるべきかどうか結論をえるよりも、どうやら
 おばあちゃんは若い男性との会話を楽しんでいる様子。

 たしかに、われわれも窓口の若い女性との会話を
 楽しみむことがあります。

 でも、おばあちゃん
 はよ終わって。
 

2011年10月11日火曜日

 山の秋は駆け足



 この連休、すばらしい天気でしたね。
 みなさま、どこかへ出かけられました?

 山もすばらしい天気でした。
 写真を撮りすぎて、まだ全然整理できません。

 山の頂のほうは、はや冬支度
 うっすらと雪化粧をしていました。

 あれま?
 紅葉を愛でにきたのに。

 山の秋は駆け足
 先週の週末はまだまだと思っていたら

 今週の週末はもう終わっていた
 なんてこともあります。

 われわれのように休日を利用して登山する者には
 週末に秋が来ないと取り逃がしてしまいます。

 今年は取り逃がしてしまったのか?
 …

 ようやくアルプス平の辺で、つかまえた秋が写真。
 

2011年10月7日金曜日

 トモキ?



 映画「モテキ」が公開されています。
 映画紹介によると…

  藤本幸世(31歳)。
  金なし夢なし彼女なし。

  派遣社員を卒業し、ニュースサイトのライター職として新しい生活を
  踏み出そうとしているが、結局のところ新しい出会いも無いまま。

  だが、ある日突然、「モテキ」が訪れた!
  みゆき、るみ子、愛、素子。…

 私はじつはパソコンの壁紙にしているほどの長澤まさみさんのファン
 なので、見に行きたい。でも山も呼んでいる…。

 それはともかく、最近の私は昔の友達、やや前の友達、ちょっと前の友達
 との交友があいついで復活。

 ややこれは「トモキ(友期)」か?
 という状況です。

 もちろんフェイスブックによるものもありますが
 そうでない偶然によるものもあります。

 それぞれ映画、小説、生活スタイルといったちがう分野で
 刺激をあたえてくれています。

 おかげでリラックスし
 なんか先のほうに日が差してきたような気分です。

 映画「かもめ食堂」で、小林聡美、片桐はいり、もたいまさこが互いに
 癒され、活性化していったように。

 「かもめ食堂」のように、その明るい気分を
 他の人々とも分かち合えるといいですね。
 

2011年10月6日木曜日

 肺炎・多臓器不全で亡くなった事案で和解



 入院中の母親が肺炎による多臓器不全で亡くなったとされ
 原告はその子どもたち、被告は入院先の医療機関。

 診療義務違反があったとして損害賠償を請求していたところ
 昨日、和解が成立しました。

 咳症状がつづき、胸の痛み、食欲なし、倦怠感、黄色の痰が出ていて
 死亡診断書には肺炎→多臓器不全→死亡という機序が記載されていました。

 他方、剖検がされず、レントゲン検査等の結果によれば
 重症の肺炎像が見られなかったことなどから、機序が争点になりました。

 この点、故人にはコントロール不良の糖尿病が基礎疾患としてあり
 後医に転送されたさい重度のアシドーシスになっていました。

 糖尿病患者は、感染症(肺炎を含む)が重症化する危険があり
 糖尿病の悪化はアシドーシス、昏睡、多臓器不全になる可能性があります。

 こうしたことから
 裁判所は和解案において当方の主張する機序を支持しました。

 進行がはやかったことから
 診療義務違反と死亡との間の因果関係も争点になりました。

 喀痰細胞診検査で強い炎症背景が認められた時点で、血液検査を実施し
 抗菌剤投与、インスリン療法を開始すれば死亡が回避できたはず。

 この点も裁判所はわれわれの見解を支持しました。
 こうしてわれわれの請求を基本的に認める和解案が示されました。

 これを医療機関側も受け入れ
 昨日の和解成立となりました。

 医療過誤裁判は人の生命、医療という専門分野にわけいって
 真相をさがし、あきらかにするという非常に困難な訴訟です。

 でもご遺族たちの和解後のお顔を拝見すると
 取り組んでほんとうに良かったなと思いました。
 

2011年10月5日水曜日

 一人一人が生き生きと働くために



 3日(月)は福岡中小企業家同友会の
 研修会でした。

 同友会の例会では仲間の経営者が体験報告をおこない
 それを題材に自社の問題をグループで議論します。

 そのグループでの議論の仕方について、いかにすれば
 より掘り下げた議論ができるのか?についての研修会でした。

 ただ抽象的に議論をしても上滑りするので、有限会社Branches
 権藤光枝さんに経営体験をまず報告してもらいました。

 テーマは「社員の一人一人が生き生きと働くために」
 
 権藤さんは自信が美容師時代に、保育所のサービスが不十分で
 うまく働けなかった体験をもとに認可外の保育所を起業しました。

 利用者の目線で保育所のサービスを見直すという
 経営理念で現在4か所の保育所を経営されています。

 とはいってもそれは実際には24時間保育の実現であったり
 土・日も保育を実施することであったりするわけです。

 これは保育所で働く人にとっては
 なかなか大変なことです。

 お金のためにしかたなしに働く
 というだけではつらくてしかたないでしょう。

 そこをどうしているのか?

 まず、働く母親が利用者ですから
 保育を通じて彼女たちを支援するわけです。

 そこの理念の尊さを社員のみなさんに
 理解してもらいます。

 さらに、ここがすごいところですが
 社員さんとともに人生の目標を一つ一つ確認します。

 仕事、家庭、健康、教養、精神、経済という
 6分野にわたって。

 この作業を通じて
 自分の人生と仕事の目標をリンクさせていくわけです。

 やらなければならないことをリストアップし
 優先順位をつけ、目に見えるようにして実現していきます。

 こうして社員さんたちにとって
 仕事が楽しくやりがいのあるものへ。

 一人一人が生き生きと働ける職場づくりがなされ
 それがより良い保育サービスの実現に結びついていきます。

 これにより09年全国商工会議所女性連合会主催「第8回女性企業家大賞」
 最優秀賞・日本商工会議所会頭賞を受賞されています。

 わが事務所ももっと一人一人が生き生きと働ける
 職場に変えていく必要があるなぁと教えられました。
 

2011年10月4日火曜日

 百日絶食の碑~宝満山の碑~



 筑紫野市の吉木集落を抜け
 本道寺のバス停から左折

 しばらく道なりに登っていくと
 シラハケ尾根、提谷新道の登り口があります。

 提谷新道のほうを登っていくと
 滝が連続して現れ、興趣があります。

 しばらくいくと
 ふたたびシラハケ尾根コースと合流します。

 そこにあるのが
 百日絶食記念碑。

 宝満山は明治初期の廃仏毀釈までは
 修験道がさかん、いろいろな修行がおこなわれたのでしょう。

 ただこの石碑は昭和5年とあるので
 廃仏毀釈以後のものです。

 10日絶食でも死にそうなので
 いかなる精神力のなせる技だったのでしょうか。

 ダイエットをする人には
 お奨めのパワースポットでしょう。
 
 人間の予備能の大きさに驚嘆します。山小屋で2日ほど眠れなくとも
 人間そう簡単には死なないもんだとおまじないになります。

 登山グループの山ガールは、山道具ショップで
 道具をついつい買いすぎ、金欠状態で100日絶食が必要だとか。
 
 順序が逆。あまた商品を前にしても買いすぎないよう
 まず山で精神修養することが先でしょう。
 

2011年10月3日月曜日

 「日本人なら知っておきたい日本文学」



 この間まで暑い暑いと思っていたら
 いつのまにやら季節がめぐっていたという感じ。

 大雪山が紅葉したとか、岩手山が初冠雪したとか
 毎日のように、秋が深まっていきます。

 さて山ばかり登ってないで
 読書の秋、芸術の秋も楽しまないと。

 でも時間がないという方にお奨めの一冊が
 これ。

 蛇蔵&海野凪子さんによる
 「日本人なら知っておきたい日本文学」。
 漫画なので
 さっと読めます。

 「ヤマトタケルから兼好まで
 人物で読む古典」というわけです。

 ほかに清少納言、紫式部、藤原道長、安倍晴明
 源頼光、管原孝標女、鴨長明が登場。

 みなさんは
 誰のファンですか?

 作者はどうやら
 管原孝標女のファンのよう。

 やはり好きこそものの上手なれなのか
 これがめっぽうおもしろい。

 管原孝標女が源氏オタクということは学校で習いますが
 管原道真の子孫だということは初めて知りました。

 太宰府天満宮のおひざもとで生活するわれらとしては
 これは知っておかなければ。

 学問に名高い管原家なのに、父親の天然ボケぶりは笑えます。
 義母もそうとう。姉も「不思議ちゃん」。

 4人の漫才で
 4人ともボケキャラみたいなもんです。

 しかたないので
 場外から作者がしきりにつっこみをいれています。

 これがまた絶品
 本文よりつっこみのほうがおもしろい。

 かくて、あっというまに読み終わり
 続きがまたれるわけですが

 乄のお話は「堤中納言物語」の
 〈虫めづる姫君〉。

 「気になる続きは二巻で!!」
 というすごい終わり方をするのに続かないという、すごい話。

 この続きが気になって生まれたのが
 宮崎駿さんの「風の谷のナウシカ」らしい(ほんとうか?)。

 これが一番のトリビアでした。

 モノは二人でわかちあうと半分になるけど
 本を読んだ感動は2倍にも3倍にもなります。

 秋の夜長
 誰かと感動をわかちあいたいなぁ~。