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2011年10月17日月曜日

 珍妃の井戸



 (夜明けの八ヶ岳と富士山)

 ひきつづき浅田次郎さんの
 「珍妃の井戸」(講談社文庫)。

 オビに「蒼穹の昴」シリーズ第二部!と銘打たれていますが
 それはちょっと大げさ。

 「蒼穹の昴」と「中原の虹」との間の
 間奏曲くらいの位置づけでしょう。

 「蒼穹の昴」の道具立てと登場人物を利用しての
 幕間のお芝居という感じです。

 浅田さんとしても、手すさびというかこんな器用な芸もできるよ!
 というくらいの遊び心から執筆されたものでしょう。

 背景はあの「北京の55日」=義和団事件
 その最中、光緒帝の美妃が井戸に投げ込まれて殺害されました。

 犯人は誰か?
 大英帝国を筆頭に独、露、日の4カ国の調査団が編成されます。

 物語の構造は芥川龍之介の「藪の中」そっくり
 真相は藪の中か井戸の中か?

 調査団は証人や容疑者をつぎつぎに尋問していきますが
 おのおのの証言はすべて別方向を指し示しています。

 そして結末で明かされる犯人は
 誰か?

 推理小説の犯人としては禁じ手のはずですが
 事件の背景からして犯人はこれ以外にありえないでしょう。
 

2011年10月14日金曜日

 蒼穹の昴



 弁護士になってから数件
 日本人男性と中国人女性の離婚事件を手がけました。

 最初のころは中国がいまだ発展途上国みたいな情況で
 離婚後の中国人女性の立場は非常に弱いという感じでした。

 最近は中国の経済的発展もめざましく
 離婚をめぐる情況も変わりました。

 離婚して中国に帰ることになっても
 それほど困らないのではないかという感じなのです。

 われわれの仕事も時代の情況とともに
 変化するなぁと感じた次第です。

 そんななか、ある人の薦めで
 浅田次郎さんの「蒼穹の昴1~4」(講談社文庫)を読みました。

 中国清朝末期、戊戌(ぼじゅつ)の政変がバックグラウンドに
 若者たちの生きざまと友情を描いています。

 戊戌の政変は1898年、西太后が、栄禄、袁世凱らとともに
 武力をもって戊戌の変法(改革)を挫折させた、反変法のクーデター。

 日本でいうと安政の大獄あたりに当たるものでしょうか
 新しい体制をめざす改革勢力を旧勢力が弾圧した事件です。

 私たちが子どものころ、義和団事件(1900年)を背景とした
 「北京の55日」という映画がありました。
 
 少し時代はくだりますが南京事件(1927年)を背景とした
 「砲艦サンパブロ」という映画もありました。

 いずれもアメリカの上から目線で描いたもので
 いたいけな僕らはそのような中国観を形成させられたものでした。

 その後、坂本龍一さんの音楽も記憶にのこる「ラストエンペラー」を経て
 「蒼穹の昴」。

 そこで描かれる若者群像は、日本の維新前夜のおける若者らの活動
 となんら変わりありません。

 あたりまえというべきか
 「壬生義士伝」における浅田節とおなじ心情なのです。

 広大な蒼穹のなか、昴に導かれ、あるいは、昴をめざす心意気に
 国、人種、時代の違いはないんですね。