(夜明けの八ヶ岳と富士山)
ひきつづき浅田次郎さんの
「珍妃の井戸」(講談社文庫)。
オビに「蒼穹の昴」シリーズ第二部!と銘打たれていますが
それはちょっと大げさ。
「蒼穹の昴」と「中原の虹」との間の
間奏曲くらいの位置づけでしょう。
「蒼穹の昴」の道具立てと登場人物を利用しての
幕間のお芝居という感じです。
浅田さんとしても、手すさびというかこんな器用な芸もできるよ!
というくらいの遊び心から執筆されたものでしょう。
背景はあの「北京の55日」=義和団事件
その最中、光緒帝の美妃が井戸に投げ込まれて殺害されました。
犯人は誰か?
大英帝国を筆頭に独、露、日の4カ国の調査団が編成されます。
物語の構造は芥川龍之介の「藪の中」そっくり
真相は藪の中か井戸の中か?
調査団は証人や容疑者をつぎつぎに尋問していきますが
おのおのの証言はすべて別方向を指し示しています。
そして結末で明かされる犯人は
誰か?
推理小説の犯人としては禁じ手のはずですが
事件の背景からして犯人はこれ以外にありえないでしょう。
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