2011年10月17日月曜日

 珍妃の井戸



 (夜明けの八ヶ岳と富士山)

 ひきつづき浅田次郎さんの
 「珍妃の井戸」(講談社文庫)。

 オビに「蒼穹の昴」シリーズ第二部!と銘打たれていますが
 それはちょっと大げさ。

 「蒼穹の昴」と「中原の虹」との間の
 間奏曲くらいの位置づけでしょう。

 「蒼穹の昴」の道具立てと登場人物を利用しての
 幕間のお芝居という感じです。

 浅田さんとしても、手すさびというかこんな器用な芸もできるよ!
 というくらいの遊び心から執筆されたものでしょう。

 背景はあの「北京の55日」=義和団事件
 その最中、光緒帝の美妃が井戸に投げ込まれて殺害されました。

 犯人は誰か?
 大英帝国を筆頭に独、露、日の4カ国の調査団が編成されます。

 物語の構造は芥川龍之介の「藪の中」そっくり
 真相は藪の中か井戸の中か?

 調査団は証人や容疑者をつぎつぎに尋問していきますが
 おのおのの証言はすべて別方向を指し示しています。

 そして結末で明かされる犯人は
 誰か?

 推理小説の犯人としては禁じ手のはずですが
 事件の背景からして犯人はこれ以外にありえないでしょう。
 

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