2011年10月20日木曜日
一歩、一歩
ちくし法律事務所ニュースのことしの新年号に
ご寄稿いただいた黒川徹先生が本を出版されました。
「一歩、一歩 小児神経科医のあゆみ」
(慶應義塾大学出版会)です。
国立療養所西別府病院と医療法人誠愛リハビリテーション病院の
院長当時、職員むけに話した原稿を中心にまとめられたもの。
黒川先生らしい気さくな人柄とユーモア
あふれる文章で、読んでいて楽しくなります。
なかでも恩師との交情、ご家族への愛情などは
さすがという感じです。
海外留学や海外視察のレポートも軽快で
ときになされる文明批評はなるほど。
そうした先生の小児神経科医としての一歩、一歩のあゆみを
知ることができました。
さて我田引水のきらいはありますが、なんと
当事務所ニュースになされた寄稿も掲載されています。
「パウロ・ロムブロソー先生の太宰府訪問の際に」という文章で
その際、黒川先生と私の話したことが記されています。
光栄です。
また医学界の大先生がたが居並ぶなか、大変恐縮です。
パウロ先生はエール大学で児童精神医学を講じられ
日本小児神経学会総会で特別講演をするために来日。
黒川先生の恩師のご子息にもあたられます。
九大講演のため来福のおりには太宰府天満宮にもご案内されました。
ところで、犯罪とはなにか?
について、刑法理論では大きな2つの考えがあります。
人は自由な意思によって犯罪をおかすのか?
性格的に犯罪をおかしてしまうのか?
カントをはじめとして自由意思を前提に刑法理論があったところ
19世紀に都市化・工業化がすすむなか犯罪と再犯者が激増。
自由意思を前提とする刑法理論では
時代に対応できなくなりました。
こうしてイタリアのチェザーレ・ロンブローゾという精神科医が
犯罪は人は生まれつきのものだという問題提起をされたわけです。
以来、犯罪とはなにか?刑罰とはなにか?
について双方の立場で議論がなされるようになりました。
このように刑法の教科書に書いてあります。
いまの教科書は知りませんが、大塚先生のご著書には書いてありました。
そこで、おなじロンブロソーという名字だけれども
なにか関係がおありですかと、黒川先生に尋ねました。
すると、チェザーレ先生は黒川先生の恩師の方の祖父
パウロ先生の曾祖父のあたられるとのことでした。
教科書に出てくる19世紀の大学者と黒川先生がご縁があると知り
正直、びっくりしました。
それで話がおおいに盛り上がったわけですが
黒川先生のご寄稿はそのときのことを書かれたものです。
ただし、それにとどまりません。
先生はチェザーレ先生のお弟子のことにも言及されています。
イタリア最初の女性医師マリア・モンテッソーリ(1870~
1952)です。
この方は心理学や教育学でも有名な方で
私も存知あげていました。
彼女はありがちなことながら、初の女性医師として不遇ななか
人間の才能を伸ばすうえで環境の重要性を発見します。
師弟のあいだで
生来vs.環境という正反対の見解となったわけです。
このような数奇な関係があることは知りませんでした。
教えていただき、大変勉強になりました。
断片的な島状の人間関係や知識がつぎつぎとつながっていくのは
とてもスリリングで興奮します。
少なくとも人間のDNAにそのような特徴が生来的に
そなわっていることは間違いないようです。
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