2021年5月20日木曜日

信夫の里・しのぶもぢ摺りの石(6)

 

さいきん同行トミーの姿が見えぬなぁと心配して、信夫の里で長居をしておりましたら、昨夜の弁護士会議でそろそろ書きますと反省の弁を述べておりました。もうまもなく追いつくことでしょう。乞うご期待!

さて、なんでしったっけ?そうそう、源氏が若紫を垣間見て、惚れてしまうやろ~と言ったところでしたね。「ちら見」で惚れてしまうのは、日本人の美意識とも関係しているかもしれません。「秘すれば花なり」といいますから(世阿弥「風姿花伝」)。

断っておきますが、のぞきは現代では犯罪となりえます。正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者は、拘留又は科料に処せられます(軽犯罪法1条23号)。

ですが、美少女の若紫は源氏に垣間見られてマイ・フェア・レディになりました。のぞくは恥だが役に立つというわけです。

脱線がながくなったので、そろそろ出発しましょう。最後に、むかし男に関するクイズを2つ。1つ、むかし男は信夫の里に行ったことがあるのか。2つ、むかし男は太宰府に来たことがあるのか。

まず、むかし男が信夫の里に行ったことがあるのか。『伊勢物語』に、信夫の里に行ったとの記述はないのですが、すぐ西にある「しのぶ山」に行ったことがあるとの記述はあります(15段)。なので、おそらく行ったことがあると思われます。いわく。

むかし、陸奥にて、なでふことなき人の妻に通ひけるに、あやしう、さやうにてあるべき女ともあらず見えければ、
 しのぶ山忍びて通ふ道もがな 人の心の奥も見るべく
かぎりなくめでたしと思へど、さるさがなきえびす心を見ては、いかがはせむ

つぎに、むかし男は太宰府に来たことがあるのか。この点は筑紫に行ったと『伊勢物語』に明記されています(61段)。「東へ西へ」、色男・好き者は忙しい。いわく。

むかし、男、筑紫まで行きたりけるに、「これは、色好むといふ好き者」と、簾のうちなる人の言ひけるを聞きて、
 染河を渡らむ人のいかでかは 色になるてふことのなからむ
女、返し、
 名にし負はばあだにぞあるべきたはれ島 浪の濡れ衣着るといふなり

天満宮参道甘木屋角を南に下ると光明禅寺があります。寺に入らず、国博通りをそのまま西に50mほど行くと、左手に藍染川が流れていて、これが『伊勢物語』にいう染河だそうです。

藍染川の端には、玉垣に囲まれて梅壺侍従蘇生の碑があります。ここは謡曲「藍染川」の舞台で、その筋はこうです。

京都の女性・梅壺は天満宮の神官・中務頼澄を慕って筑紫に下ってきました。しかし彼女は彼に会えず、悲しみから藍染川に身を投げました。頼澄はそれを知り天神様に祈ったところ、彼女は生き返りました・・とさ。もとい、げな。

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