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2023年11月28日火曜日

わが事務所の新人弁護士指導

 

 わが事務所に新人弁護士が入所する。これで総勢8人に戻る。女性弁護士である。迫田登紀子弁護士の司法修習生だった。弁護修習の際、迫田弁護士の仕事ぶりに惚れて、わが事務所に入所となった。

他方、わが事務所は2年に一度担当替え兼席替えがある。担当替えは、弁護士と事務局の組合せを替えることである。席替えは、1階か2階か、どの弁護士とどの弁護士が1階かとかに関する組合せを替えることである。風通しをよくするために、民族大移動を行う。

これらの事情が重なって、新人弁護士の指導係をおおせつかった。富永弁護士が「直属の上司」であるから細々なことは彼にまかせる。ぼくのほうからは弁護士としていかに生きるべきかといった大局的な話をしていきたい。

とは言っても40年という年齢差がある。世代間ギャップがはなはだしい。よかれと思って言ったことがまったく逆の意味にとられることがないではない。このようなことは若手の弁護士を指導する際にこれまでも感じてきたことだ。

なにせ、われわれは「巨人の星」、「タイガーマスク」、「あしたのジョー」、「アタックナンバーワン」、「俺は男だ」、「エースをねらえ」などをみて育った世代である。

指導相手が言うことを聞かなければ、鉄拳だってくらわせるし、ちゃぶ台だってひっくり返す。もちろん、いまどきそんなことはしないが気分はそうである。

しかし、それだけで指導がうまくいくということはない。高まった緊張をほぐさなければならない。どうするか。夕陽にむかって、砂浜をいっしょに走るのである。えいほ、えいほ、えいほ・・・。これにより毎回、高まった緊張はほどけ、結束がたかまっていくのである(お約束)。

新人弁護士にこのような昔ながらの考えや方法が通用するだろうか。はなはだ不安である。そう思って、いまの若い人たちがどんな番組をみて成長しているのか、秘書さんたちに訊いてみた。

ポケモン、セーラームーン・・。そうか魔法系か。しかし新人弁護士さんはこれらテレビ番組をみて育っただろうか。それともいまはやりのYouTubeとかTik Tokだろうか。ますます不安である。近くに砂浜がほしい。

2021年9月17日金曜日

バベットの晩餐会


  一昨日は茶事にご招待いただきました。参加は7人。ともに食事をし茶を喫することにより、心をくつろがせ共有する感覚はすてきでした。

司法修習生のころ、呉服町のお寺で茶事を体験したことがありました。当時の修習はいまよりずっと人を磨くことに熱心で、能や歌舞伎鑑賞のほかこうした茶事体験もさせてもらいました。

その後は観光地で薄茶をいただく程度で作法などはからっきし。幸い他のメンバーも似たり寄ったりでしたので、厚かましくもくつろぐことができました。

食事を通じて人の心があらたまるといえば、『バベットの晩餐会』を最近BSでやっていました。

珍しくデンマーク映画で、ユトランドの寒村が舞台。老境に達した牧師の娘姉妹2人が主役。神に仕える清貧な生活。そこにパリからお手伝い兼料理人のバベットがやってきました。

 (以下、ネタバレ)

若いころ2人とも美人で、姉にはある軍人が求愛しますが、信仰のため成就しません。妹は声が天使のように美しく、パリで活躍する歌手がレッスンをつけましたが、寒村で信仰に暮らすことを選びます。

・・・ときは経ち、村の信者さんたちの高齢化がすすみ、かつてのような信心を中心とした結束が緩んでいます。

バベットの趣味は堅実なお手伝いでしたが、唯一の趣味は宝くじを買うこと。あるとき当選、みごと1万フランをゲット。姉妹はバベットがパリに帰ってしまうと残念がります。

そんなおり、牧師の生誕100年を晩餐会で祝うことになりました。バベットが晩餐会を企画・実行。ウミガメや生きたウズラがぞくぞくと家のなかに運び込まれます。清貧に生きてきた姉妹や村人たちはなにを食べさせられるのやらと心配でしかたがありません。

姉に求婚した軍人は、軍人として成功し、軍人としては最高位の将軍になっています。が、なぜか、さいきん人生が空しい。そこに晩餐会開催の知らせ、参加してみたくなりました。この感覚はよくわかります。同窓会でむかしの彼女はいまいかに?という感じでしょうか。

晩餐会の参加者は将軍をいれて12人。パリの高級レストランに負けない料理とお酒がぞくぞくと出てきます。その芸術的なおいしさに参加者みなの心はみたされていきます。食後は妹が天使の歌声でみなの心を満たします。

帰りぎわ、将軍は姉と結婚せず別れて暮らしてきたけれども、これまでも互いに心は一つであったし、今後もそうであることを確認しあいます。

バベットはパリ時代、高級レストランのカフェ・アングレの一流シェフであったことを明かします。そして、1万フランはきょうの料理に使ってしまっており、パリに戻る気はないとのこと。

われわれは結婚しての同居、軍隊やパリの舞台など仕事や組織での成功、お金、パリの高級店の一流シェフであることなど、人生の価値をそのような目に見えることに置いています。

しかしこの映画は、信仰、親睦、静謐・清貧などにも生きるに値する価値があり、芸術が日ごろ忘れがちなそのことに気づかせてくれるということを教えてくれます。

観たことのないかたは一度どうぞ。

2013年12月3日火曜日

気合を入れて


弁護士業界は,
競争真っただ中だと言われます。

(もっとも,
競争のない業界
の方がありえない気がしますが…)


弁護士の数も増えていますし,
執務の方法も大きく変わってきました。

2000年以前は,
広い規制がかかっていない
法律事務所の広告も解禁されました。


まさに業界は変動時期にあるようです。



…といっている内に
今年度の司法修習生が司法修習をまもなく終え,
裁判官・検察官・弁護士になります。

そして,新年度の修習生も
司法修習を開始しました。


次々と活きの良い新人が入ってきます。

私も負けていられませんね。



よし。
気合を入れるために,
毎朝の乾布摩擦でも始めます!!

(なにかが違う…)

2013年8月1日木曜日

若さゆえ

最近,
「司法修習生」と
お話する機会が多くあります。



「司法修習生」とは,
司法試験に合格した後,1年間,
全国各地の
裁判所,検察庁,法律事務所などで
実地研修等を行う人たちです。

もちろん,私も
司法修習生だった時期があります。



もちろん経験を積んだ弁護士から見ると,
少し頼りなさを感じるでしょう。
ただ,
年齢も経験も
決して開きがあるとは言えない私からすると,

「うんうん,そう思うよね」と

納得してしまうこともしばしば。



いずれにしても,
彼らは,あと半年もしないうちに
法律家として活躍してくれます。


若さゆえに知らないこともあるでしょうが,
熱意と,フットワークの軽さは
ベテラン弁護士にも負けないはず。

良い解決を目指しますので,
いつでもお声掛けください。




……おっと。
司法修習生の話をしていたはずが,
これでは完全に
私の自己アピールですね (笑)





2013年3月15日金曜日

森くん,電話してるってよ。





福岡はきのう,ソメイヨシノの開花宣言。
裁判所裏の並木でははや満開の樹が。

花言葉は,精神美,優れた美人,優美な女性
あなたに微笑む,純潔など。


わが事務所には年に数人,司法修習生や
ロースクール生が弁護実務の研修にやってくる。

いまはT弁護士のところに1人
男性修習生Yくんが。

いまどきの若者にめずらしく,なかなか臆せぬ性格で
毎日,T弁護士らと言語バトルをくりひろげている。



T:森くん(Yくんの言い間違い),あれどうなったかね?
Y:…(沈黙)。

T:おい!
Y:はい。

T:ひとが訊きよるやろが。
Y:あっ,森先生に電話しているのかと思ってました。

(どっと笑)
これは,ありえん。

Yくんの席はT弁護士の隣で,その向こうは壁である。
T弁護士がしゃべればYくん宛と考えるのが普通な状況。

T弁護士は受話器をもっていないし
森弁護士は階がちがう。

あきらかに,T弁護士の言い間違いにかこつけて
すっとぼけたものである。


さいきんの若者にきょうつうする特徴で
ことわざなど知らないことがおおい。

I弁護士なぞ,じぶんが恥をかきそうになると
Yくんに話題をふって,逃げ場にしているくらいだ。


I: 「面目躍如」
 って,知ってる?

Y: お役で,ご免ということ…?。
I: ちがうでしょ(笑)。

I: 「辛酸をなめる」
 って,知ってる?

Y: それなら知ってます。財産関係のことですよね?
I: ちがいます(笑)。

I: じゃ,財産関係で,「恒産なければ恒心なし」
 って,知ってる?

Y: 降参です…。
みな: あはは。

※らいしゅうは,出張,春分の日やら健康診断やらで
木曜日までお休みさせていただきます。

2013年1月17日木曜日

蛍光灯をかえるべきか悩んだら





きのうの記事は,書いてしまってから
お客さんからクレームが来ないか心配した。

心配したが,仕事の時間になったので
書きかえるヒマもなく,アップした。

さいわい
表だってのクレームはなかった。

みなさまの心のひろさと寛容さに
感謝します。


言葉づかいは難しい。
他意はなくとも誤解されることもある。

他意はないかもしれないが
潜在意識にあることもあろう。


きのう隣席の新人弁護士から
話かけられた。

蛍光灯が
切れてますねぇ,と。

たしかに,われわれの上にある
蛍光灯がきれぎれに点滅している。

むむ。これは
ボクにたいする(婉曲な)要求か?

蛍光灯を変えろ!
ということか?まさか…。

いくら厚かましい新人といえど
25年先輩にそこまでいうか?


先日,司法修習生がたくさん
事務所訪問に来られた。

その際,わが事務所のアピールポイントとして
新人さんは言っていた。

家族的な雰囲気であり
なんでも言える雰囲気である,と。

新人さんは
修習生諸氏になんども強調した。

それって,新人がのさばってる
ともいうよね。

先輩をないがしろにしてる
ともいうよね。

ボクの心には
疑惑がうずまいた。

けれども,お客さまの手前
言うのは控えた。


そこにもってきて
きのうの蛍光灯事件だ。

なんでもいえる雰囲気ってのは
先輩に蛍光灯をかえさせることも含むのか?

心はちぢに
乱れたのであった。

まるで
切れかけの蛍光灯のように。


そうやって心がつかれたときは
三浦しをんのエッセイが効く。

このところ
心が疲れるとしをんに逃避する。

いつもなら
読破して終わりだ。

でも,しをんのエッセイのばあい
ちょっとちがう。

心を癒す薬のような作用があるため
一気に読み終わらないよう注意している。

心が疲れたときだけ
ちびちびと読む。

できるだけ途中で
他の本を読んだりして。

それなのに,ああ
読んでしまった。

『乙女なげやり』
(新潮文庫)。

かのじょのエッセイ
残りがすくなくなってきた。

もう少しペースを
落とす必要がありそうだ。

2012年9月20日木曜日

『細雪』by.福岡県筑紫野市の弁護士




きょうはもうずいぶん秋の気配が濃厚
さらに季節をさきどりして『細雪』の話題。

せんじつ,後輩の弁護士と司法修習生と
話をしていました。

たまたま僕がその修習生の実家のある地方を
尋ねたばかりでした。

そのため修習生を法律事務所に採用するにあたり
身元調査をしたと疑われたらどうしよう?という冗談になりました。

谷崎潤一郎の小説『細雪』のなかに
身元調査の話がでてきます。

4人姉妹の3女,雪子の見合話を
身元調査の結果が悪かったとして断るくだりです。

そのことを後輩弁護士と修習生にいうと
2人ともぽかんとした顔をしています。

どうやら谷崎の『細雪』を読んだことがないレヴェルではなく
小説の存在じたいを知らないようなのです。

これにはびっくり。
ふたりとも立派な大学の文系です。

小説が売れなくなったといわれて久しいですが
たしかにこれではねぇ。

さいきんの若者はなってない!
とまぁ,ふつうだったらなるのでしょう。

でもこれもせんじつ
ある講演のきいた話。

われわれの年齢の人間はどうあがいても
あたらしい時代の徴候がみえない。

ものの見方が固定化してしまっている。
あたらしい見方は若い人でないとできない。

それゆえ,あたらしい時代のあたらしい見方を
得るには若者にすすんで教えてもらう必要がある。

云々。
というお話でした。

僕はその話を思い出し
『細雪』も知らんのか!というのをぐっとこらえました。

それにしても
もったいない気がします。

そもそもいまの日本から失われてしまった(?)
古きよき日本を彷彿とさせるよい小説なのですがねぇ。

                        弁護士 浦田秀徳

2011年8月29日月曜日

 九州大学法科大学院エクスターンシップ



 先週から九州大学法科大学院(ロースクール)の大学院生が
 エクスターンシップで当事務所に研修に来られています。

 エクスターンシップというのは、ロースクールにおける座学
 だけでなく、法律事務所で実務を学習・体験するというものです。

 先週来られたO君は社会人経験があり
 なかなか頭も切れるし人格者でした。

 毎日、その日に学んだことをレポートしてくれるのですが
 その中には、事案の概要や対処だけでなく、寸評もあります。

 なるほど、私のアドバイスはそういう意味もあったのかと
 逆に気づかされ、こちらが勉強になります。

 講義形式にないOJT(On the Job Training)の醍醐味は
 そういうところにあるのかなとも思います。

 法律家の卵である司法修習生をお預かりするのとは異なる
 緊張感があります。

 司法修習生の場合は、司法試験には合格しているので
 実務家としての練習みたいなものです。

 エクスターンの場合は、1年後、あるいは2年後の司法試験
 合格に向けて勉強中ですから、その刺激と励みになればと思います。
 
 彼が司法試験に合格って、一緒に仕事ができる日が早くくることを
 心から祈っています。
 

2011年2月26日土曜日

 やけに滑ると思ったら



 インターネットやフェイスブックによる情報共有の力が
 中東に民主化のうねりをおこしています。

 ハンセン病訴訟や薬害肝炎をたたかうなかで
 メールなどの威力は知っているつもりでしたが、ここまでとは…。

 われわれの人生の後半になってこれらツールが普及してきたわけですが
 若いころにあったら人生が変わっていたでしょうか?

 これらツールによって知識がより豊富になり
 人生が豊かになっていたでしょうか?必ずしもそうでないかも。

 若い弁護士と山に登っていて閉口するのは

 御嶽山の話をしていて
 木曽節(木曽のなぁ~御嶽山はなんじゃらほい)を知らない!

 羅臼岳にいっしょに登っていて、知床旅情(しれ~とこ~の岬に~
 はななす~の咲くころ~)を知らない!

 ことですね。

 また若い弁護士+司法修習生と話していて、「夜目遠目傘の内」とか
 「コタツのなかはなぜ赤い?」等の雑学を知らないのにもビックリ。

 わたくしの冗談はよく滑るのですが、できが悪いのは甘受するとして
 共通の素養が欠けているために滑ることが多いと勘ぐってもいます。

 共有している(はずの)言葉の意味をズラすことによって生じる違和感を
 笑いの源泉にしているのに、そもそも言葉を知らないでは話になりません。

 インターネットってあんまり知識拡大には役立ってないのかなぁ?
 とか思います。そんなときには。
 

2011年2月19日土曜日

 休日のちくし法律事務所



 ちくし法律事務所は1階から3階まであり
 1階と2階が執務スペースと相談室
 3階は会議室と書庫になっています。

 弁護士8人と事務局11人の19人体制なので
 各階弁護士4人、事務局5~6人の配置。

 写真は1階の執務スペース
 手前が事務局、奥が弁護士の執務スペースです。

 よくテレビドラマなどででてくる法律事務所とは
 イメージがちょっと違うと思います。

 むかしながらの法律事務所はいまも少なくありませんが
 執務上の機能性と事務所の結束を重視したレイアウトにしています。

 写真のさらに右側に相談室が3つ(2階は4つ)
 待合室が1つあります。

 現在の弁護士の配置は
 1階が浦田、迫田、田中、井上
 2階が稲村、吉野、徳田、落合となっています。

 いまはプラスして1階に司法修習生
 2階にロースクール生が来られています。

 3階の会議室では当事務所の事務所会議、弁護士会議のほか
 士業交流会、有明訴訟など弁護団会議や顧問先の研修などを開催。

 地域の催しや学習会などで会議室がご入り用のときは
 お声かけください。

 休日、事務所は閉めていますが
 何人かの弁護士は執務していることがほとんど。
 
 事務所ではなくとも会議やイベントに出ていることも
 少なくありません。

 ウイークデーは電話がほぼ鳴りっぱなしですが
 休日はときどき留守番電話が応接するぐらいで静かです。

 いつもわれわれを完璧にサポート、バックアップしてくれている
 事務局がいないと心許ないオフィスです。

 BGMは有線で、いまはビーズのオルゴール曲が流れています。
 う~ん、ちょっと曲名を思い出せません。

 休日に電話されて留守電が応接したときは
 写真のような状態とご容赦ください。

 屋上は、晴さんの強い希望で焼き肉パーティくらいはできる
 ようになっていますが、いまだ実現していません。

 これから花見の季節
 ぜひとも実現したいものです。
 
 

2011年2月16日水曜日

 武士と遊女と自由



 いま、ちくし法律事務所には司法修習生、九州大学のロースクール生の
 それぞれ1名が研修にきています。

 彼女・彼とはなしをすると、記憶がタイム・スリップし
 つい受験時代のことを思い出してしまいます。

 話を戻すと、「漂砂のうたう」です。

 主人公の定九郎は、根津遊郭の妓楼の立番という
 底辺の生活からいつ逃げだそうかときっかけをさぐる毎日です。

 しかし物語がすすむにつれ、定九郎の逃げ道はつぎつぎに
 ふさがれてしまいます。
 
 定九郎はもと武士ですから、手っとり早い逃げ道としては
 西南戦争で反政府軍に参加することです。

 賭場で働いていた同僚の山公は
 これに参加していきます。
 
 しかし「戊辰の戦で官軍の先頭にいた西郷は『賊』となり、田原坂や
 山鹿の戦いも、新聞各紙は西郷たち賊軍を無様に報じる」情勢に。

 かくて時代に逆行し、武士に戻るという逃げ道は断たれてしまいます。

 他方、小野菊ら遊女には、芸娼妓解放令が明治政府からくだされます。
 明治5年(1872)、遊女の人身売買の規制などを目的とした法令です。

 ペルーのマリア・ルーズ号事件がきっかけ。同船で苦力として捕らわれ
 ていた清国人が横浜港の英国船に助けを求めました。

 英国代理公使は明治政府に「人身売買は違法であるからペルー船を差し
 止めるように」と命じます。

 アヘン戦争(1840-42)の余燼さめやらぬころのことですから、代理公使の
 腹には人権のほかに関心があったはずですが、それは書かれていません。  

 明治政府はペルー船に対し、苦力を解放するよう申し渡しました。
 すると、ペルー側は日本も人身売買を行っているではないか!と反論。

 明治政府は、それならばということで
 芸娼妓解放令をだしたわけです。

 外国にいわれて付け刃で形だけ自由を差し下す姿勢は
 明治のはじめからのことのようです。

 問題は、前借金を免除させる理由で
 「娼妓芸妓は牛馬と同じ。牛馬に借金の返済を迫る理由はない」とか。

 「牛馬解き放ち令」と揶揄されるゆえんです。

 令を発した司法卿(法務大臣)は江藤新平。さすが佐賀藩士
 芸人はなわが知っていれば「佐賀県」の歌詞になったことでしょう。

 江藤じしんは明治6年に下野、翌7年いわゆる佐賀の乱をおこし
 西郷より先に刑死しています。

 政治の世界が「一寸先は闇」であることも
 明治のはじめからのことのようです。
 

2011年2月3日木曜日

 今さらジロー(3)



 日本百名山の一つ、北アルプスの鷲羽岳に源を発し
 黒部川は一路北へ日本海をめざします。

 川が削った黒部峡谷はV字谷となり
 日本の秘境100選のひとつです。

 途中、雲ノ平、薬師岳を迂回して黒部湖・黒四ダムに至ります。
 その難工事は「黒部の太陽」として、小学校の教科書に載っていました。

 立山・黒部アルペンルートがここを東西に横断し
 みどころの一つですから訪れたことがあるという方もおおいでしょう。

 黒部ダムからさらに西に剣、東に鹿島槍、五竜、白馬などの山塊を削って
 富山湾のほうへ下ると、欅平、黒薙温泉をへて宇奈月温泉にいたります。

 昭和のはじめ、この温泉場で熱いたたかいがくりひろげられ
 大審院(当時の最高裁)判決が形成されました(宇奈月温泉事件)。
 
 民法判例百選のはじめに紹介されている判例であるため
 3日ぼうずの法学部生でも一度は読んだことがあるものです。 
 
 宇奈月温泉は7.5Km上流にある黒薙温泉から
 引湯管を使いお湯を引いていました(いまもそう)。

 引湯管は黒部峡谷の急傾斜地につくられていたところ
 2坪だけ利用権を得ていない他人の土地を横切っていました。

 その土地の所有者が引湯管の持ち主に、土地を高額で買い取るか
 所有権に基づく妨害排除として引湯管の撤去等を求めた事件。

 これに対し、大審院は
 ①所有権が侵害されてもこれによる損失がいうに足りないほど軽微
 ②撤去することが著しく困難で莫大な費用を要するような場合

 ③不当な利益を獲得する目的で、その除去を求めるのは
 権利の濫用にほかならないと判示しました。

 その妥当な結論に誰もが「うなづき」ました。
 この結論を導いた法律論が権利の濫用の法理です。

 戦後の民法改正のとき、権利の濫用はこれを許さない。
 と明記されました(民法1条3項)。

 法を適用する裁判所が判例という形で法を形成し
 法をつくる国会が後追いした例です。

 とはいっても、民法は基本的には権利の行使を擁護する法律ですから
 権利の濫用が認められることはきわめて例外的とされています。 

 司法修習生時代、研修所の民事裁判のK教官が
 「権利の濫用を言い出したらそちらの当事者の負けだ」
 と断言されていました。

 そうはいっても弁護士たるもの
 権利の濫用を主張せざるをえないこともあります。

 K教官はしばらく福岡地裁で部総括(部長)判事をされていましたが
 もちろん、その時でさえも。

 (つづきはまた明日)