一昨日は茶事にご招待いただきました。参加は7人。ともに食事をし茶を喫することにより、心をくつろがせ共有する感覚はすてきでした。
司法修習生のころ、呉服町のお寺で茶事を体験したことがありました。当時の修習はいまよりずっと人を磨くことに熱心で、能や歌舞伎鑑賞のほかこうした茶事体験もさせてもらいました。
その後は観光地で薄茶をいただく程度で作法などはからっきし。幸い他のメンバーも似たり寄ったりでしたので、厚かましくもくつろぐことができました。
食事を通じて人の心があらたまるといえば、『バベットの晩餐会』を最近BSでやっていました。
珍しくデンマーク映画で、ユトランドの寒村が舞台。老境に達した牧師の娘姉妹2人が主役。神に仕える清貧な生活。そこにパリからお手伝い兼料理人のバベットがやってきました。
(以下、ネタバレ)
若いころ2人とも美人で、姉にはある軍人が求愛しますが、信仰のため成就しません。妹は声が天使のように美しく、パリで活躍する歌手がレッスンをつけましたが、寒村で信仰に暮らすことを選びます。
・・・ときは経ち、村の信者さんたちの高齢化がすすみ、かつてのような信心を中心とした結束が緩んでいます。
バベットの趣味は堅実なお手伝いでしたが、唯一の趣味は宝くじを買うこと。あるとき当選、みごと1万フランをゲット。姉妹はバベットがパリに帰ってしまうと残念がります。
そんなおり、牧師の生誕100年を晩餐会で祝うことになりました。バベットが晩餐会を企画・実行。ウミガメや生きたウズラがぞくぞくと家のなかに運び込まれます。清貧に生きてきた姉妹や村人たちはなにを食べさせられるのやらと心配でしかたがありません。
姉に求婚した軍人は、軍人として成功し、軍人としては最高位の将軍になっています。が、なぜか、さいきん人生が空しい。そこに晩餐会開催の知らせ、参加してみたくなりました。この感覚はよくわかります。同窓会でむかしの彼女はいまいかに?という感じでしょうか。
晩餐会の参加者は将軍をいれて12人。パリの高級レストランに負けない料理とお酒がぞくぞくと出てきます。その芸術的なおいしさに参加者みなの心はみたされていきます。食後は妹が天使の歌声でみなの心を満たします。
帰りぎわ、将軍は姉と結婚せず別れて暮らしてきたけれども、これまでも互いに心は一つであったし、今後もそうであることを確認しあいます。
バベットはパリ時代、高級レストランのカフェ・アングレの一流シェフであったことを明かします。そして、1万フランはきょうの料理に使ってしまっており、パリに戻る気はないとのこと。
われわれは結婚しての同居、軍隊やパリの舞台など仕事や組織での成功、お金、パリの高級店の一流シェフであることなど、人生の価値をそのような目に見えることに置いています。
しかしこの映画は、信仰、親睦、静謐・清貧などにも生きるに値する価値があり、芸術が日ごろ忘れがちなそのことに気づかせてくれるということを教えてくれます。
観たことのないかたは一度どうぞ。
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