2021年9月10日金曜日

エアープランツが芽をだした


 エアープランツが芽をだした。事務所の階段室の窓辺にしばらく前から飾られていたものである。芽をだすまではいつも、ほんとうに芽を出すのだろうかとドキドキする。けれどもいつもちゃんと芽を出してくれる。

エアプランツは土がなくとも、あるいは水やりをしなくても芽を出す不思議な植物だ。植物にもいろんな生き方があるものだ。

秘書さんの一人が自発的に事務所に飾ってくれている。職場環境をすこしでも潤いのあるところにしたいという気持ちのあらわれだろう。ありがたい。

考えてみれば、1日24時間から睡眠時間をのぞいた16時間のうち、8時間働くとすれば、人生の半分は事務所で暮らすようなものだ。そこがすこしでも潤いのある場所となることはありがたい。

話は飛ぶが、エアー○○と言われてすぐに思い浮かぶのはエアーロープだ。

われわれは山登り仲間で、怪鳥会なる組織を結成している。発足メンバー9人のうち、なんと3人が高所恐怖症である。高所恐怖症なのに山登りが好きな人たちである。ズバリ変態である。人間にもいろんな生き方があるものだ。

うちの事務所の迫田登紀子弁護士もそうだ。事務所旅行で大雪山の黒岳に登ったことがあった。黒岳へは層雲峡からロープウエイとリフトを乗り継いで8合目まで行くことができる。ところが、高所恐怖症なのでリフトに乗ることができない。しかたなくヘロヘロになりながらリフト下の道を登った。このとき、高所恐怖症の恐怖を心底あじわったのだった。

12年前怪鳥会を結成してみると、高所恐怖症のメンバーが3人もいるではないか。会長である怪鳥こと八尋光秀弁護士もそうなのである。困ったものである。

当初、怪鳥はアマチズムというワザを生み出した。そして高所恐怖症を克服した。ぼくはよく知らならないが(笑)、むかし天知茂という俳優がいて、「昭和ブルース」という歌を歌っていたらしい。

危険を感じるポイントに達すると、怪鳥は低音をきかせて、やおらこの歌を歌い出す。

 ♪生まれたときが悪いのか~、それとも俺が悪いのか~。

この歌を歌うと、不思議と恐怖に追いつかれないそうだ。恐怖とは追いつかれるものなのだ。他の高所恐怖症のメンバーもこの歌を聴くと苦笑して、緊張がほぐれるようである。

ただし、副反応もある。副反応が強くでるのは、われわれ高所恐怖症ではないメンバーたちである。われわれはもともと緊張しているわけではない。危険箇所でもリラックスして、うまくことに当たっている。しかし、この歌を聴かされると脱力してしまって、うまく力が入らなくなるのである。

しばらくこのワザにより、怪鳥らは恐怖心を克服していた。そうこうするうち、怪鳥はエアーロープというワザをあみだした。♪テレテレッテレ~(レベルアップ効果音)。

岩場にはロープが張られていない。が、それがあるかのように振る舞うのである。「エアロープ、エアロープ」などと言いながら、右手でそのロープをつかんでいる。なんと、それで体幹を安定させ、恐怖心を克服できるらしいのだ。

このワザのよいところは、アマチズムよりわれわれの脱力を招く程度がすくないことである。

このワザがあみだされてから、それまで不可能といわれていた槍ヶ岳や剱岳など、岩稜の山々にも登ることができた。効果絶大である。

このワザが生み出されてから、アマチズムについて考えた。「昭和ブルース」を歌ったからといって恐怖に追いつかれないわけはなかろうと、かつては思っていた。

しかし、恐怖は心のスキをついてくるのだ。だから「昭和ブルース」だろうと、エアーだろうと、なにかで心を満たしてしまえばよい。そうすれば恐怖がつけいるスキがなくなるのだ。たぶん。

かくて登山者にもいろんな生き方があるものだ。そしてなかにはエアークライマーもいる。
・・・というまとめは、いささか強引だろうか。

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