春秋戦国時代、百家争鳴といわれるほど思想家がたくさん輩出しました。困難な時代こそ、すぐれた人物が輩出するものなのでしょう。なかでも、いちばん有名なのは孔子ですね。孔子が道徳によって国を治める徳治主義を説いたのに対し、法による統治を説いたのが韓非です。われわれ法律家の大先輩です。
彼が書いた『韓非子』のなかに、こんな話がでてきます。
管仲は斉の総理大臣で、名宰相と言われました。敵国をやっつけて国へ帰ろうとしたら、雪で道が分からなくなり迷ってしまいました。そのとき、管仲はひとつ老馬に知恵を借りてみようと言い、老馬を放しました。その後について行ったところ、なんと道をみつけることができました。
このエピソードに基づく四字熟語が老馬乃智(ろうばのち)です。管仲ほどの賢人知恵者であっても、ときには老馬を先生として学ぶことを憚ってはならないという話です。
ここでも芭蕉はなにも語っていませんが、那須野の段の冒頭にはこのエピソードが下敷きとして踏まえられていると思います。そして、われわれに謙虚に学べと呼びかけているのではないでしょうか。甘美なる教えです。
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