芭蕉一行は、埼玉から栃木に入り、室の八島明神(大神神社)に参拝しました。最初の歌枕の地。芭蕉はこの旅を通じて、先輩歌人たちが歌に詠んだところを訪ねてまわります。蕉風を深めんとして、先人に学ぼうという気持ちは切実です。
同行曽良は神道や地理にもくわしく、その説明。ここの神さまは、木の花咲くや姫で、富士山麓にある浅間神社とおなじ神さまです(出発の朝、富士の峰幽かに見えたことが思い浮かびます。)。
日向に降臨した天孫・ニニギが姫に求婚しました。父のオオヤマツミは喜んで、姉のイワナガ姫もさしだしました。けれども、ニニギはこの申出を断り、コノハナサクヤ姫とだけ結婚しました。彼らの子や孫の命が岩のように長くはつづかず、花のように儚いのはそのためだとか。なかなか美しい話です。
妻は一夜にして身ごもり、そのため夫は自分の子だろうかと疑いました。なかなか人間臭い話です。
妻は身の潔白を証明するため、夫の子であるから焼け死ぬことはないと誓いをたて、産屋に火を放ちました。新婚早々、激しい夫婦です。炎のなかから無事、火々出見(ホホデミ)の尊が誕生、誓いの火室に花が咲きました。
以上、室の八島の名前の由来です(八島は竈の意味)。ホホデミは海幸・山幸物語の山幸、山幸の孫が神武天皇です。以来、ここは煙のたつところとして歌に詠まれてきました。
いかでかは思ひありとも知らすべき 室の八島の煙ならでは
藤原実方
じぶんの思いをどうしたら伝えられるだろう、八島の煙ならそれができるのに僕にはできない・・・。いまなら煙ではなく、SNSや各種アプリでしょうか。どんなにツールが発達しても、最後は勇気ですかね。さねかたは有名な貴公子なので、覚えておいてください。
コノシロという魚がいます。この地では、焼いて食べることを禁じられています。「この城を焼く」というのが縁起が悪いためだとか、人体を焼くような悪臭がするためだとか、木の花咲くや姫の苦難をしのぶためだとか。
もちろん 木花咲耶姫の無戸室の故事は 九州を舞台とした話ですね。
返信削除つまり[奥の細道]室の八島で 曾良が話した内容は 吉田神道がでっち上げてこの神社に押し付けた でたらめ縁起です。
コノシロの話は 次のことが基になっています。
返信削除秦の始皇帝が旅先で亡くなった時、都に戻るまでその死を隠すために、棺にコノシロを入れ、その腐臭で始皇帝の死をごまかしました。