2021年10月8日金曜日

鶴岡ーおくのほそ道拾遺②

 





 芭蕉一行は、最上川をくだって、羽黒三山へ行った。しかし今回の旅はそこまで足をのばす時間がなかったので、そこは鳥海山から望む月山で。

 雲の峰幾つ崩て月の山

 羽黒を立て、鶴が岡の城下、長山氏重行と云物のふの家にむかへられて、俳諧一巻有。左吉も共に送りぬ。川舟に乗て、酒田の湊に下る。

鶴岡のくだりはこれだけ。50文字弱。鶴岡観光協会としては、もっと書いておいてくれというかんじだろう。

芭蕉は、羽黒をくだり、左吉の案内で鶴岡にやってきた。左吉は羽黒のところで出てくる。長山宅に来たのは、左吉と縁者だから。

当方は最上川くだりを終えて、古口駅から余目駅をへて鶴岡駅に到着。途中、庄内平野の収穫前の稲穂の波がみごとだった。

鶴岡駅前には、稲穂をかつぐ親子のモニュメントがある。そして民謡が流れている。さすが庄内平野、米どころだ。

鶴岡には過去3回来たことがあった。2度は羽黒三山に登ったとき、1度は朝日連峰を縦走したときだ。いずれも素通りで、市内観光は初めて。

駅前をまっすぐ歩くと、やがて山王日枝神社につく。神社の脇に、芭蕉の句碑がある。

 珍しや山をいで羽の初茄子び

またしばらく街中を歩く。文化の香りのする街とそうでない街がある。鶴岡は前者だ。人口12万人余だから筑紫野市とそう変わらない。しかし立派な古本屋がある。文化の香りがする街と認定しても間違いなかろう。

古本屋からすぐのところに長山重行宅跡がある。といっても、すこし探した。途中、2か所ほど案内板があった。いたってシンプル。「長山重行宅跡」とだけある。芭蕉ファンでなければ、なんのことか分からないだろう。

長山重行宅は「物のふの家」というからには武家だったろうが、いまは狭い庭ふうのしつらえがあるだけ。そしてまた句碑がある。ここもやはり

 珍しや山をいで羽の初茄子び

この句は実際にはここで詠まれたもの。出羽三山をでて鶴岡に来たので、山をいで羽。鶴岡名産の民田茄子。江戸人にはめずらしかったろう。ご馳走ありがとう。俳諧一巻有とあるが、ここに3日間逗留している。

酒田へは川舟を利用している。長山邸ちかく、内川に橋がかかっている。ここにある乗船地も史跡になっている。芭蕉がとおれば、乗船地さえすべて史跡となるのだ。すごい。

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