2021年10月6日水曜日

鳥海山登山記(2)


  鉾立にある象潟口登山口を出発し、賽の河原を経て、2時間登ると御浜小屋に着く。小屋裏から西を望むと、鳥海湖がある。深いブルーに輝いている。その奥には月山が遠く裾野をひろげている。西側には庄内平野が広がっている。ちょうど稲穂が垂れ、黄金色に波打っている。その右手は日本海だ。

 この一望で、日本海から冬の季節風が月山と鳥海山に大量の雪を降らせ、その雪解け水が川や伏流水となって庄内平野をうるおし、それがおいしい米を育てていることが分かる。庄内平野の右手前が酒田の町だ。酒田は庄内米を上方に運び、廻船問屋が繁盛した。


 御浜小屋から、扇子森を経て、八丁坂を登り、七五三掛まで1時間余。そこから右手の外輪山コースと左手の千蛇谷コースにわかれる。千蛇谷にいったん下る。雪渓をわたると、あとは山頂手前の大物忌神社まで1時間20分の登りである。中央のギザギザが山頂。山頂部までなだらかな稜線が美しい。紅葉まであとすこし。右上に見えているのは外輪山である。

 大物忌神社で休憩。
 大きな岩がゴロゴロ積み重なるなか、両足両腕を総動員して30分登ると、新山山頂である。2236メートル、東北第2位の高峰だ。雲海のうえに突き出て、まるでナウシカかラピュタな景色が爽快だ。新山は1801年の噴火の際、隆起したもの。火山の歴史からすれば新しく、まだ岩だらけだ。「北アルプスの岩稜よりすごい!」と、登頂した人たちが興奮している。


 新山登頂後は、大物忌神社まで引き返して昼食。そして神社の裏にまわって、外輪山の急坂を登る。きょう最後の登りだ。
 外輪山の稜線からは、東のほう、岩手の山々がのぞめるはずだが、きょうはどこまでもつづく雲海におおわれている。それもまた気持ちがいい。


 外輪山を時計回りに周回する。20分ほどで伏拝岳に達する。いま登ってきたばかりの地元のご夫婦が絶景に歓喜している。独り占めもいいが、感動は共有するとより大きくなる。

 名残りおしいが、ここから川原宿・湯ノ台方面に下山だ。固有種であるチョウカイアザミが咲くことから名付けられた薊坂をぐんぐん下る。心字雪渓を下る必要はなかった。1時間15分で、ようやく河原宿。さらに湯ノ台道を下る。こんなに長い坂だったか。7年前の記憶と照合するが、うまくあわない。30分ほどで下山口の滝の小屋到着。ふう。

 すばらしい一日だった。
 写真では100分の1の爽快さも伝わらないかもしれないが、イメージをひろげてくだされ。

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