鉾立にある象潟口登山口を出発し、賽の河原を経て、2時間登ると御浜小屋に着く。小屋裏から西を望むと、鳥海湖がある。深いブルーに輝いている。その奥には月山が遠く裾野をひろげている。西側には庄内平野が広がっている。ちょうど稲穂が垂れ、黄金色に波打っている。その右手は日本海だ。
この一望で、日本海から冬の季節風が月山と鳥海山に大量の雪を降らせ、その雪解け水が川や伏流水となって庄内平野をうるおし、それがおいしい米を育てていることが分かる。庄内平野の右手前が酒田の町だ。酒田は庄内米を上方に運び、廻船問屋が繁盛した。
御浜小屋から、扇子森を経て、八丁坂を登り、七五三掛まで1時間余。そこから右手の外輪山コースと左手の千蛇谷コースにわかれる。千蛇谷にいったん下る。雪渓をわたると、あとは山頂手前の大物忌神社まで1時間20分の登りである。中央のギザギザが山頂。山頂部までなだらかな稜線が美しい。紅葉まであとすこし。右上に見えているのは外輪山である。
大きな岩がゴロゴロ積み重なるなか、両足両腕を総動員して30分登ると、新山山頂である。2236メートル、東北第2位の高峰だ。雲海のうえに突き出て、まるでナウシカかラピュタな景色が爽快だ。新山は1801年の噴火の際、隆起したもの。火山の歴史からすれば新しく、まだ岩だらけだ。「北アルプスの岩稜よりすごい!」と、登頂した人たちが興奮している。
外輪山の稜線からは、東のほう、岩手の山々がのぞめるはずだが、きょうはどこまでもつづく雲海におおわれている。それもまた気持ちがいい。
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