2021年10月22日金曜日

凛と生きる


  外国人オーバーステイの刑事事件をひきうけている。すでに起訴されているので被告人の立場にある。被告人となると、警察署の留置場から拘置所に移送されるのがふつうだ。理由があって、なお春日警察署の留置場にいる。

それでも何らかの事情でいないこともあるので、事前に電話して在監を確認する。通訳さんの手配も必要だ。そうなると通訳さんとの時間調整・待合せ・費用計算の手続も必要となる。

警察署のロビーで待ち合わせる。通訳さんは外国人の女性だ。それしか分からない。数人の女性が入ってくる。この人かなと思うが、違う。みな車庫証明や事故証明をとりにきた人たちだ。

待合時間ちょうどに、人さがしげな人が入ってきた。この人だろう。日本人ふうで、外国人には見えない。名字が日本名なので、日本人と結婚し、日本にもう長いのだろう。

留置場へはロビー奥のエレベーターに乗る。3階ボタンを押す。閉まる直前に女性がきたので、開(継続)ボタンを押して待つ。背が高く、凛としたたたずまいだ。

警察署ではあまり出会わないタイプだ。行き先を訊くと「3階をお願いします。」と言う。あれ?3階に留置場以外になにかあったっけなと思う。

3階に着いた。われわれのほうがドアふきんにいたので、先に降りてもよかった。でも譲り、先に降りてもらう。「恐れ入ります。」と出て行かれる。

面会受付では、先客がいて、差入れのことでしばらくやりとりをしている。凛としたたたずまいの女性も面会に来たようだ。しまったな、エレベーターの出を譲ったばかりに、面会の順番も譲ってしまうことになってしまった。接見室は2つしかないので、部屋が空くのを待つ必要がある。

そう思っていたところ、女性は先に並ばず、われわれを先に行かせ、自分は列の後ろに並ばれた。

あたりまえといえば、あたりまえだ。もともとエレベーターにはわれわれが先に乗っていたのだし、われわれが先に降りれば、われわれが列の先頭に並ぶことになっただろう。

しかし、きょうび、そうならない残念なことのほうが多い。とくに、警察の留置場で面会前となると、誰しも動揺したりしているので、このような立ち居振る舞いができないことがさらに多い。

それなのに、この立ち居振る舞いである。感心した。凛としたたたずまいの印象はまちがっていなかった。ちゃんとした立ち居振る舞いができる人は、たたずまいも凛としているのだ。

刑事事件の接見となれば、緊張もするし、やるせない気持ちになることが多い。そんななか、一服の清涼剤となった。

※写真はサルトリイバラの実。イバラにトゲがあり、それがひっかかって、サルの身をとらえるから。薬用になり、山帰来(サンキライ)とも呼ばれる。山に入って病となっても、これを服用すれば無事に帰って来られるという。クリスマスのリースとして飾られていることもある。西洋でも聖なる木なのだろう。

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