怪鳥会という山歩きグループに所属している。コマドリ会やライチョウ会などのかわいいネーミングもあったと思うが、怪鳥会。会長の口運び、足運びが怪鳥を思わせる会である。
弁護士や新聞記者など9人がメンバー。九州近辺の山に年数回登り、年に一度はアルプスを目指している。結成して12年になる。
連絡はSNSのグループページで行っている。だいたいは山行や亡新年会の計画や報告である。が、ときどき、山にまつわる読書報告がなされる。
先般は『残照の頂 続・山女日記』(湊かなえ著・幻冬社刊)の紹介がなされた。11月10日第1刷という新刊。休日にそれほど期待しないで読んだところ、意外と突き刺さったという。
知っている人は知っていると思うけれど、NHKのBS3チャンネルで1か月くらいまえからドラマでもやっていた。プレミアムドラマ『山女日記3』。
工藤夕貴主演、中村俊介、田中健、若村麻由美、本仮屋ユイカらが脇を固める。われわれぐらいの年齢だと、工藤夕貴より若村麻由美のほうがよいなぁなどと思いながら観ていた。
SNSに投稿したメンバーにたいし、原作も読んだほうがいいかな?と尋ねた。ところが投稿者はドラマのほうは観ていなかった。コメントを付けくわえたメンバーもドラマは観ているけれども、原作は読んでいないとのことだった。
ドラマ派の二人で、田中健はしぶいだとか、古手川祐子がうらやましいなどと他愛のないやりとりをして、その場はそのままになった。
すると、怪鳥会のメンバーではない稲村弁護士が原作を読んだ、よかったとの感想をもらした。「こ、これは。」、読めという天啓だろうと思い、さっそく裁判所帰りに薬院の書店で購入した。
目次は「後立山連峰」「北アルプス表銀座」「立山・劔岳」「武奈ヶ岳・安達太良山」。つまり、この4本の連作短編から成り立っている。
最後の短編がコロナ禍後に書かれたことは内容から明らか。その前3つの執筆時期はコロナ禍前だろう。
ドラマの原作だからほぼほぼドラマどおりの内容かと思いきや、かなり違う印象を受けた。原作のほうが数倍よかった、感動したとだけ述べておこう。
『山女日記』は、さきの田中健ファンのメンバーによれば、登山のデトックッス効果について書かれたものである。つまり、都会で、仕事で、体内に溜まりに溜まった悪いものを登山によりデトックスするというストーリーである。
本編はタイトルが示すとおり、登山の残照効果について書かれたものである。残照とは、あたりが暗くなってもなお、山頂などに照り映えて残っている夕日の光のことである。
物語の主人公たちは、残照の山頂で、過去を振り返り、整理し直して、あらたな旅に出発していく(再生)。
立山や羽黒三山が生まれ変わりの山であることは、古来いわれてきたことである。それを他の山々にまで押し広げたところが本書の主張だろうか。まてよ、『君の名は。』でも前前前世なんてやっていたなぁ。よく分からない。
ところで、後立山連峰(五竜~鹿島槍縦走)、北アルプス表銀座(燕~大天井~槍)、立山・剱岳、武奈ヶ岳・安達太良山、いずれも登ったことがある。本書をすべて味わいつくすには、これら山々に登ったことがあることがベターだろう。
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