以前、高齢者の方の交通事故で、刑事裁判になり、国選弁護人に選任されました。
刑事裁判といっても、逮捕・勾留されているわけではなく、自宅で生活しておられて、裁判の日に呼び出しを受ける、というものです。「在宅起訴」といいます。
国選弁護人に選任されて、被告人の方にお電話すると、足が不自由で、裁判所には介助者の方が付き添って来られるとのこと。
事前に裁判所に連絡し、その旨をお伝えしました。
刑事裁判では、起訴された事実に争いのない事案では、通常1回目の期日でひととおりの証拠調べと被告人質問などを行い、2回目の期日で判決となることが多いように思います。
もっとも、今回は、足が不自由で、出頭するのも大変なため、できれば即日判決をもらいたいと裁判所に伝えていました。
迎えた第1回期日。車いすで介助者の方とともに、被告人の方が裁判所に来られました。
車いすで法廷に入りますから、傍聴席の側から、検察官や弁護人席のあるバーの内側に入るのも一苦労です。
なんとか、車いすから、弁護人席の隣に座っていただきました。
通常、被告人質問などは、その都度、法廷の真ん中の証言台に移動して行います。
もっとも、今回は、裁判官も、被告人の方が「よっこいしょ!」と言って弁護人席の隣に座られる様子を見ておられますから、「その場でいいですよ。」と言ってくださり、弁護人席の隣に座ったまま、被告人質問などをすべて行いました。
判決も、即日で出してくれ、裁判官、裁判所の配慮をとても感じました。
判決を受けてすべて終わり、帰るのがこれまた一苦労。
なんとか車いすに移動し、介助者の方が後ろ向きのまま、車いすを引いて、法廷から出ようとします。
ですが、後ろ向きのため、このままでは法廷の扉を開けられない。
すると、裁判官が、
「介助者の方、ちょっと待って下さい。」
と声をかけられました。
ま、まさか、壇上の裁判官席から降りてきて扉を開けてくれるのか、なんてイケメンな裁判官なんだ、と思っていると、
「ちょっと待って下さい。今、弁護人が扉を開けますから。」とのこと。
まあ、そうですよね。はい、ただいま。
最後に私の過剰な期待は裏切られましたが、裁判官の配慮により、つづがなく刑事裁判を終えたのでした。
富永
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