男池から風穴まで片道2時間、往復4時間のコースタイムである。しかし途中、紅葉をめでたり、写真をとったり、休憩や食事をとったりで、1.5倍の6時間くらいの時間をみておきたい。
その週の水曜日、刑事事件の法廷帰りに裁判所のまえで左足首を捻挫してしまっていた。翌日は痛みで革靴がはけず、草履で通勤しなければならなかった。それから4日後のことであり、最後まで歩けるかどうか不安があったが、ツアーガイドでもあるし、無理して参加した。
男池を出発すると、あとはもうずっと原生林がつづく。原生林の極相はブナやミズナラとなるので、基本的な色調は黄色や茶色である。いわゆる黄葉。
赤いのはコミネカエデである。京都嵐山のように植林されたわけではないから、全山真っ赤になることはない。ところどころに赤い点景がある。それが貴重で、慕わしい。
中間地点は、ソババッケである。左に黒岳、右手は手前が平治岳、奥が大船山という、登山道の交差点である。右に登れば大戸越があり、そこからさらに右に登れば平治岳、まっすぐ下れば坊がツル、左に登れば北大船山である。ソババッケをまっすぐすすめば、目的地である風穴がある。黒岳へは風穴から左手の急坂を1時間登らなければならない。
ソババッケはむかしソバ畑だったらしい。それがナマっての名前の由来である。昔の人は、このような山奥にまで畑をつくり、貧しさとたたかっていたのだ。感慨ぶかい。去年の土石流で荒れてしまったものの、いまでも紅葉の絶景ポイントである。
紅葉を愛でるのに、やはり太陽の光はかかせない。くもりでも紅葉狩りはできるだろう。が、日の光をあびて輝く紅葉は格別だ。葉がキラキラ輝くと、心もキラキラする。
太陽の光があるということは、青空もあるということだ。曇天のグレーとでは紅葉がひきたたない。晴天と紅葉のコントラストが美しい。雲の白、空の青、紅葉の赤、黄葉の黄、4色の配合がまことに絶妙で、美しい。
感動で血流がよくなったせいか、左足首の痛みも遠慮して襲ってこなかった。
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