2021年7月28日水曜日

立石寺ー宇宙の閑かさ

 

 山形領に立石寺といふ山寺あり。慈覚大師の開基にして、殊に静閑の地なり。一見すべきよし、人々の勧むるによりて、尾花沢よりとつて返し、その間七里ばかりなり。日いまだ暮れず。麓の坊に宿借り置きて、山上の堂に登る。岩に巌を重ねて山とし、松柏年旧り、土石老いて苔滑らかに、岩上の院々扉を閉ぢて物の音聞こえず。岸を巡り、岩を這ひて、仏閣を拝し、佳景寂寞として心澄みゆくのみおぼゆ。

 閑かさや岩にしみ入る蝉の声

大石田駅から山形新幹線で山形に向かいます。途中には、さくらんぼ東根駅や天童駅があります。ちかくのスーパーでさくらんぼを買うと、さくらんぼ東根でつくられたものに出会います。天童駅はあの演歌歌手の出身地なのでしょう。

山形からは、仙山線で5駅行くと山寺駅に着きます(仙台からだと15駅目です。)。駅からすぐ正面に山と絶壁が見え、立石寺の院々が山のあちこちにはりついています。

3度行きましたが、いちばんは雪の立石寺です。すばらしい景色でした。蝉の声は聞こえませんが、一見を勧めます。

慈覚大師は、瑞巌寺のところででてきました。最澄の弟子、延暦寺をもり立てた人で、東北各地の寺を創建したといわれています。

閑かさは、長谷川櫂さんにしたがい、宇宙の閑かさと解します。そうしないと、蝉が啼いているのになぜ閑かなのか分からないからです。ミンミンゼミやヒグラシなら別ですが。

宇宙が閑かで心が澄みやすらぐのは、自然と一体であることをよしとする老荘思想のおかげでしょう。西欧の哲学者のように、宇宙の閑かさに神の不在を感じるようだと、戦慄するしかありませんから。

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