2021年7月29日木曜日

最上川ー大自然のパワー

(最上川@大石田) 

(最上川@米沢)

 最上川乗らんと、大石田といふ所に日和を待つ。ここに古き俳諧の種こぼれて、忘れぬ花の昔を慕ひ、芦角一声の心をやはらげ、この道にさぐり足して、新古二道に踏み迷ふといへども、道しるべする人しなければと、わりなき一巻を残しぬ。このたびの風流ここに至れり。
 最上川は陸奥より出でて、山形を水上とす。碁点・隼などいふ恐ろしき難所あり。板敷山の北を流れて、果ては酒田の海に入る。左右山覆ひ、茂みの中に船を下す。これに稲積みたるをや、稲船といふならし。白糸の滝は青葉の隙々に落ちて、仙人堂、岸に臨みて立つ。水みなぎつて舟危ふし。

 五月雨をあつめて早し最上川

前半は那須野の段や謡曲『遊行柳』を彷彿とさせますね。旅は人生、俳諧の道も旅の道もおなじということでしょう。貞門・談林の古道から蕉風の新道を切り拓いていきつつある芭蕉。おくの細道において俳諧の新道を指導しているぞという、彼の快感・歓喜が伝わってきます。

最上川の源流は、吾妻山・登山記で紹介した吾妻山です。吾妻山に発し、米沢に流れ下り、山形を貫流して、大石田に至ります。日本三大急流の一つ。あと2つわかりますか。富士川と球磨川です。急流は水害とも裏腹で、球磨川の水害は記憶に新しい。

芭蕉は、最上川という大自然のパワーに翻弄・圧倒され、人為の卑小さを痛感したことでしょう。

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