六甲山全山縦走2泊3日の2日目の天気予報は雨。そのため、2つのグループと個人に分かれることになった。1は、鵯越から記念碑台まで縦走を続けるグループ、2は、横尾忠則展など美術館めぐりをするグループ、3は、このあたりの西国三十三所を巡礼する者である。ぼくは最後の1人。
兵庫県にも西国三十三所の寺院が5つあり、このうち3つは回れそうだと判断した。コンプリート好きですねと、他のメンバーからからかわれた。
まず目指したのは播州清水寺。京都にも清水寺があるので、区別するため播州をつける。
JR線で三ノ宮から尼崎まで行き、福知山線に乗り換え、相野へ行く。そこからはバスだ。バス便は一日2便しかない。例によって、とても不便だ。バス停で話したおじさんは高砂から来られたらしい。
バスで40分ほど揺られて、山門前に着く(1枚目の写真)。境内はヤマザクラが終わりかけで、シャクナゲやハナズオウなどが色鮮やかに咲いていた。
薬師堂は撮影可となっており、薬師如来ほか十二神将が祀られていた。十二神将の作者は、あのせんとくんを彫像した彫刻家の藪内佐斗司(やぶうちさとし)である。せんとくんと似ている。十二神将は干支をもとに造形されている。2枚目の写真は子(ね)。
次の寺は花山院(3枚目の写真)。ここは三十三所の番外であるが、三十三所めぐりをはじめられた花山院の菩提寺である。
花山院といえば、「大鏡」で騙されて出家させられた天皇である。騙されるというところはあったものの、信仰には厚かったらしい。歴代のなかでも、三十三所の創始者として名を残した。
福知山線を三田まで戻り、そこからはタクシー利用だ。ここもバスが一日2本くらいしかなく、待っていると日が暮れてしまう。雨のせいか、参拝者も2,3人である。途中、左手に有馬富士が美しい山容を見せていた。
3つめの寺は中山寺(4枚目の写真)。福知山線をさらに戻って、ずばり中山寺駅。こちらは歩いて行ける距離である。境内に入ると、多数の人だかり。
なにかというと、西国三十三所草創1300年記念・結願法要が執り行われていた。どうやら、花山院が観音霊場の三十三所をめぐってから1300年の節目の年にあたるようだ。
ところで、前日、鵯越から乗車した神戸電鉄有馬線の車中で、ある女性と話すことができた。
神戸市街は、福岡とちがって坂が多く、かつ急坂で、市街を歩いてきたわれわれはヘロヘロな状態であった。そんな様子を見て声をかけてこられたのだと思う。
その女性はポスティングの仕事をしているという。週6日毎日歩いて、1日3~4万歩にもなるという。雨の日も雪の日も。赤銅色に日焼けした顔が仕事の厳しさを物語る。
そんなポスティングの仕事は、われわれには到底つとまらぬ厳しくつらい仕事に思える。しかし、同人は幸せな毎日であると、明るい笑顔で語った。
そう、仕事がつらいかどうかは、心の持ちよう次第なのだ。
山で修行し、寺で祈願をするわれわれだが、市井にまぎれた菩薩様に悟りを授けられることもある。