2010年12月26日日曜日
メメント・森
「ノルウェイの森」を読んでいてまずひっかかるのは
直子は僕を愛していないのか?
愛していないのに、なぜ、僕と寝たのか?
ということでしょう。
このことについて、僕と直子は「阿美寮」で
つぎのような不思議なやりとりをしています(6章)。
「でも僕は…本当に心からそう思うんだよ。自分が普通の人間だって。
君は僕の中に何か普通じゃないものがみつけられるのかい?」
「あたりまえでしょう」と直子はあきれたように言った。
「あなたそんなこともわからないの?そうじゃなければどうして
私があなたと寝たのよ?…」
これからすると、直子が僕と寝た理由は
「僕の中に何か普通じゃないものがみつけれられる」から。
じゃ、この「僕の中の何か普通じゃないもの」ってなんでしょう?
キズキが死んだあと、僕の中に
「何かぼんやりとした空気のかたまりのようなもの」が残った
とされています(2章)。
そのかたちを言葉におきかえると
「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している。」
そうだとすると、直子は僕の中に「死」、あるいは、「キズキ」
をみつけたがゆえに、僕と寝たといっているわけです。
そういえば、時々直子はとくにこれといった理由もなく
何かを探し求めるように僕の目の中をじっとのぞきこんでいました。
(3章)
「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している。」
というのはゴシック文字になっているので、大事なことのはず。
これからまず思い浮かべるのはメメント・モリですね。
メメント・モリ(Memento mori)は、
「自分が(いつか)必ず死ぬことを忘れるな」とか
「死を記憶せよ」とかいう意味の警句。
芸術作品のモチーフとして広く使われ、文学上でも重要なテーマ
「ノルウェイの森」においても重要なテーマなんですね。
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