2010年12月10日金曜日

 マイブーム~丸谷才一さん~


                 (有明海越しに雲仙岳を望む。)

 最近のマイブームは丸谷才一さん
 結婚式等でおこなつた挨拶をまとめた新作「あいさつは一仕事」
(朝日新聞出版)
 これにはまりました。
 
 以前にも、いくつかたのしく読んだことはあつたのものの
 今回がいちばんおもしろく感じました。

 なぜいまブームなのか?
 年齢のなさるわざか、それとも…(ほかに思ひつきません)。

 丸谷さんとしては、力を入れてゐる長編小説ではなく
 余技のひとつにすぎない挨拶集をほめられても不本意でせうが。

 1 学識は鹿爪らしくて苦虫を噛みつぶしたよふなものでなく
  明るくて、陽気で、機嫌のいいものだという考え方

 2 評論は読んでよくわかつて一向さしつかへないこと

 3 口ぎたなく罵らなくても
  文学と人生を批評する鋭い切れ味をみせることができること

 4 俗であること、あるいは世俗に対して激しい関心をいだくことが
  上品さ、高潔さときれいに両立すること

 5 変な遠慮や勿体のつけ方をせず
  まことに勇敢に女および女性的なものすべてを取り上げること

 6 遊び心を奔放に発揮することが
  すなわち人間と世界の新しい探求となり得ること

 いずれも私に親和的で、読んでいてじつに気持ちいい。

 丸谷さんの挨拶は、主役の人となりや業績を
 まことに的確にとらえて話をされてゐます。
 
 挨拶も、批評のひとつ
 批評とは、よひ点・悪ひ点などを指摘して、価値を決めること。
 (岩波・国語辞典)

 こつは
 1 「よひ点」はご本人ならびにまわりが納得するようなところを
  的確に・十二分にほめること

 2 「悪ひ点」はじようずに回避すること
  せひぜひが遠回しに指摘するにとどめること
 にあるようです。
 
 なるほど、ひごろの人つきあひにも十分つかへそうです。
 さすが一流の批評家はちがひます。
 毎日新聞の書評欄をながらく主催されただけのことはあります。

 「批評は近代には大いに力を振るつたが
 21世紀の今、批評が果たす役割がいかばかりなのか疑問ももたれてゐる。
 ことにインターネットの日常化により
 批評家といふプロの存在が危うくなつてゐるかもしれない。」
 (はてなキーワード)などといわれてゐますが、はたしてそうでせうか?

 たしかに、家電量販店などにいくとランキングNo.1、売れ筋No.1といふ
 アイテムが安心感があり、これにしたがって購入したりします。

 しかしながら本や人、業績となるとちよつとちがう感じ
 家電とちがい、読み方にはレヴェル・深さの問題があるからです。

 それぞれの読みでいいことは否定しませんが
 達人に読み方を教えてもらふと、深く味はへることがあります。

 また未知の世界へも連れていってもらへます
 先達はあらまほしきことなり、です。  

 弁護士という仕事がら、挨拶をおおせつかる機会がときどき
 ですが、これがなかなかにむずかしひ、たしかに一仕事。

 うまくいつたと感じられるのは、せひぜひ3回に一度てひど
 用意したジョークがすべると、かならずダメですね
 野球選手ならこれくらいの成績でよいのでせうが。

 さすがの丸谷さんでも失敗することがときどきあるとか
 すこし慰められます。
 

0 件のコメント:

コメントを投稿