2023年1月31日火曜日

一片の氷に世界を見る(2)

 


 ブレイクの詩の題は「無垢の予兆(Auguries of Innocence)」。全132行からなる。岩波文庫・松島正一編に紹介されているのは、その最初の4行。

  To see a World in a Grain of sand
  And a Heaven in a Wild Flower,
  Hold Infinity in the palm of your hand
  And Eternity in an hour.

  一粒の砂にも世界を
  一輪の野の花にも天国を見,
  掌のうちに無限を
  一時のうちに永遠をつかめ。

山歩きをする者としては、やはり2行目に惹かれる。

この4行が「無垢の予兆」の初めであるとともに全体の要約でもある。
「一」と「全」の同時把握が求められている。「一」と「全」は一粒の砂と世界、一輪の花と天国、掌と無限、一時と永遠。詩の構成もそうかな。

実はこの考えはブレイクの独創ではなく、日本にも古くからある。

2023年1月30日月曜日

一片の氷に世界を見る(1)

 


 高校時代の同級生がSNSに、氷の写真を投稿した。大雪予報だったにもかかわらず、大阪市内では雪が降らなかった。けれども、氷ははったということだった。

この写真の美しさはどうだろう。氷だけにフォーカスして、背景に広がる大阪市内はボカシている。いつも写真にセンスを感じる。

なにかものを言いたくなったので、「一片の氷に世界を見る(Wブレイクふう)」とだけコメントした。これだけでは意味が分からないかもしれないけれども、くどい説明は嫌味かなと思ったのだった。

すると高校時代の恩師が、解説のコメントをつけてくださった。

To see a World in  a Grain of Sand
And a Heaven in a Wild Flower
(一粒の砂に世界を見、野の花に天国を見る)
ウィリアム・ブレイク( イギリスの詩人)
補足説明をばさせていただきました。

たしかに、先のコメントだけでは意を尽くしていない。いつも、ご配慮ありがとうございます。

先生のアシストもあり、その後のやりとりも盛り上がった。インターネットの普及により、人間の嫌な面が増幅されるようにもなった。しかしそれまでにはなかった楽しい交流が果たされることもある。利用する側の心しだい。

2023年1月27日金曜日

ある交通事故損害賠償請求・交渉事件(車両価格、後遺障害認定、整骨院治療費)

 


 ある交通事故による損害賠償請求事件について、示談解決の運びとなった。主な争点は3つ、車両価格、後遺障害認定、整骨院治療費である。

追突された側で受任。責任は追突した側が100%、過失相殺はない。医療過誤などと比べて交通事故の話が容易であるのは自賠責法があるから。追突の場合はその議論も必要ない。

問題は損害論。まず物損。修理代が車の値段より高くなると、保険会社は車の値段しか認めない。そうすると、車の値段はいくらかということになる。保険会社はレッドブック(中古車の価格本)にしたがい損害額を提示。

むかしはこれで終わりだったけれども、最近はネットの発達により中古車市場が形成され、われわれも簡単に検索することができる。当方はこれで提示。保険会社もこれを認め、依頼者の納得も得られたので、物損はこれで解決。

つぎは人損。整骨院の治療費が問題となった。保険会社は、整形外科の治療費は3か月以内であれば原則としてこれを認める。しかし、整骨院の治療費は整形外科医の処方がないとこれを認めない。整骨院だって、柔道整復師法によるれっきとした国家資格であるが、一段低くみられているのである。

本件では、仕事帰りに通院するのに、整形外科の診療時間に間にあわず、やむを得ず整形外科医の「許可」を得て、整骨院で治療を受けていた。

ところが、保険会社の照会に対し、整形外科医が「許可」はしたが「指示(処方)」はしていないなどと回答したらしく、紛争化した。保険会社は整骨院への支払いをしないまま推移し、依頼人は焦燥した。

最後に問題になったのは後遺障害認定。整形外科医は腰椎捻挫等の症状がなお残っているとして後遺症診断書を作成した。事前認定はいったん後遺障害の認定を否定。

不服申し立てをおこなった。当初救急搬送された病院、その後の整形外科、またその後の整形外科などから診療録等をとりよせた。また医師の意見書もとりつけた。・・結果、後遺障害14級の認定となった。

さてこれに基づく示談交渉。保険会社もせからしいと思ったのか、整骨院治療費も認めてきた。依頼者も喜んでくれた。「先生には感謝しかありません。」と。

2023年1月26日木曜日

賃貸借中の土地の明渡事件

 


 土地を賃貸し、賃借人がその土地の上に建物を建築。その方が亡くなり、相続人が複数いらっしゃったが皆、相続放棄をされた。困った賃貸人からご相談・依頼を受けた事案。

賃借人がいなくなった後の賃貸物件の処理をどうするかは悩ましい。がっぷり四つに組まないといけないのは、居住したままの賃料不払い。3ヶ月分滞納したところで催告し、2週間後に契約を解除する。内容証明郵便で。

それでも明渡しがなければ、裁判を起こし、判決をとる。それでも明渡しがなければ、判決に基づき強制執行をすることになる。強制執行は、家財の引越、保管や競売を伴い、手間、ヒマ、費用がかかる力業だ。

夜逃げして行方不明になった場合、もっと悩ましい。契約書には立ち入り、残置動産を処分してもよいなどという約定もある。賃貸人が自分で明渡しを実行してしまうことを、自力救済という。自力救済しても問題とならないケースも多かろう、行方不明なのだから。

しかし弁護士のところへ相談に来られれば、「自力救済は禁じられています。お金と時間と手間はかかるけれども、裁判を起こして判決をとり、これに基づき強制執行したほうがいいですよ。」とアドバイスすることになる。行方不明であるから、裁判は公示送達、欠席判決の方法による。

こんかいは、とても稀なケース。賃貸人が亡くなり、相続人のかたがたが皆、相続放棄をされたのだから。借金などが残るケースでは、相続放棄をすればそれで終わり。しかし、遺産に不動産があるとやっかい。相続財産管理人が管理するまで、それまでの相続人が管理義務を負うことになる。

ある相続人の後見人のかたと協議して、相続管理人を選任してもらい、その方に不動産を管理してもらった。

相続財産管理人は、なんどか現地を訪れ、建物や家財を高く売るべく努力された。しかし、建物は老朽化しており、家財もそれほどペイする見通しはなかった。そのため、建物と家財を賃貸人のほうで買い取ることとなった。代金は滞納賃料と相殺だ。

相続財産管理人は、家庭裁判所が選任する。不動産の売却となれば、家庭裁判所の許可が必要である。もちろん、家庭裁判所の許可を得た上での売買である。

1年ほど時間がかかったが、無事解決した。売買した建物を解体するには相当の費用がかかる。賃貸人としても痛い出費だ。でも納得し満足されたと思う。

2023年1月25日水曜日

胃カメラ検査受診記

 


 胃カメラ(内視鏡)検査を受けた。先日の人間ドックで要精密検査となったためだ。

人間ドックでは、バリウムを飲んで造影したうえで胃X線検査だった。造影してはいるが、その所見は影にすぎない。なんか凸凹しているなぁぐらいな感じである。なので、胃の中を直接見ることができる胃カメラ検査が必要となった。

検査は受けたくなかったが、後にガンと判明したときの痛恨を思い、しぶしぶ予約の電話をかけた。年末だったため、年内には双方の都合で予約できず、年明けとなった。ガンだったら進行してしまうところだ。

前日午後9時から絶飲食。この時点から緊張がはじまる。あらためて受診案内をみると、人間ドックの紹介状を持参するよう指示がある。あした忘れないようにしないと。

検査医院は人間ドック施設の紹介による福岡市内の胃腸内科医院。予約は午前10時。15分前には受付を済ませるよう指示があった。検査結果の説明は午後0時を過ぎることもあると説明があった。検査時間は5分ほどらしい。2時間もなにをするのかな。

自分で検索した場所に行ってみると見当たらない。あらためて検索すると、北へ500メートルほどのところ。前の検索の際、住所を打ち間違えたようだ。時間がせまり、あせり走る。血圧があがってしまうな。はあはあ。

医院に着くと、はや4~5人が待っている。受診案内、紹介状と保険証を提出する。

問診票を書くよう指示される。ふむふむ。特に思い当たる自覚症状はない。人間ドックで要精密検査とされただけだ。これまで大病を患ったこともない。糖尿病等もない。人間ドックでは血圧やや高めだったが、その後の歩きや走りが効いたのか正常値になっている。待つこと30分。

問診。以前に胃カメラを飲んだことは2回(たぶん。依頼人にはそんな特異な経験の記憶はあるでしょうと言う。が、自分の記憶は意外とあいまいだ。)。直近は5年前か、一番最初は太くて飲み込むのに苦労した。いまのは別物らしい。またしばし待たされる。

看護師さんに呼ばれる。その指導で、ベッドに横向きに寝かせられる。口横にタオルがおいてあり、そこへ涎をたらすことになるなどと説明される。えっ、そんなぁ。

まず水様の薬を飲まされる。昨日から絶飲食なのだけれど、これは飲んでもいいのだろうか。

つぎに咽喉が麻痺するような薬剤を渡され、咽喉奥で保持するよういわれる。口に含んで、飲み込んでしまわないよう、咽喉の奥へ移動させる。このあたりでよいのだろうか、もうすこし奥までやったほうがよいのだろうか、でもこれ以上飲むと飲み込んでしまいそうだし、とあれこれ心配。医療機関の受診はなんにせよ、不安や心配だらけだ。

最後に点滴開始。眠剤らしきものを時々添加。●●添加しましたなどと医師に報告をしている。医師はちゃんと聞こえているのだろうか。心配。そうしているうちに意識が遠のく。・・・

気がつくと、どうやら検査は終わったらしい。胃カメラを飲ませるのに苦労した医療側は患者を寝かせて、その間に検査することを思いついたようだ。

またまた待つこと数10分。呼ばれて結果の説明を受ける。動画を見せられる。正常。すこし荒れていますが。ま、現代人で、弁護士やってて胃がなんともないという人もすくなかろう。勲章のようなものか。

記念なのか、検査実施の証明なのか、検査中の写真を数葉わたされる。名前が書いてあるわけでもないので、自分の胃かどうかはわからない。でもひと安心。ふう。

2023年1月24日火曜日

『孤高の人』

 


 新田次郎の小説『孤高の人』(上下巻、新潮文庫)を読んでいる。以前は中学時代か高校時代に読んだと思う。漫画にもなっているので、若い人たちはそちらのほうを読んだことがあるかもしれない。

今般、怪鳥会では春の合宿として神戸の六甲山全山縦走を計画中である。自身は先日、淡路島に行った際、明石海峡ごしに須磨・一の谷あたりを眺めたので、『源氏物語』や『平家物語』との関連ばかりが思い浮かんでいた。

そうしたら、メンバーのひとりが「『孤高の人』に出てきましたね。」と指摘した。なるほど、そのとおりだ。あまりにも昔に読んだため、すっかりその関連を失念していた。

読み始めてみると、なるほどこういう小説だったのかと思う。以前読んだときはあまりにも子どもだったので、ふたつのポケットに煮干しの魚と甘納豆を入れて行動食にする点に感心し、そのようなことしか覚えていなかった。

読み直しをしてみて、大正末から昭和初の時代、関東大震災前後の不安な世相が背景にあったことを知った。

主人公の加藤文太郎は実在の人物。恐らく三菱造船と思われるが造船会社に勤めていて、労働運動や社会主義運動の渦中にある。

山陰の寒村出身で、大学を出ていないことから、技師にはなれない。そうした制約を越えて、山の魅力にとりつかれている。

普通は2日かかる六甲山全山縦走を1日でなしとげ、しかも宝塚から会社のある和田まで歩いて帰る。和田は平清盛が日宋貿易の拠点として開発した大輪田の泊の場所だ。

初の北アルプスは、表銀座から槍ヶ岳、そこから大キレット通って穂高連峰、さらに西穂まで縦走。あまりにもさらりとやってのける。ほんとうだろうか。実話がベースになっているので、ほんとうなのだろう。

当時、日本人は誰もヒマラヤの高峰を踏んでいない。造船についても登山についても、欧州の知識と技術を輸入吸収している時代。そんななか、ひとりヒマラヤをめざす。

次に目指したのは雪の八ヶ岳。夏沢鉱泉から夏沢峠、硫黄岳、横岳、赤岳の往復。今年の年末年始に歩いたところと重なる。小説では強風に吹かれ苦しんださまが生々しく描かれている。

中・高校生時代に読んだときは、これら高峰はすべて未踏だった。今回は、これらのコースはみな踏んだことのあるコースばかりだ。とてもリアルかつ身近に感じられる。

六甲山は、須磨寺に行ったときに稜線の一部を歩いたことがある。街に近く、道もよく踏まれていて四王寺山のようだった。春合宿が楽しみだ。

2023年1月23日月曜日

ある不貞慰謝料被請求事件

 

 不貞を理由とする慰謝料の請求を受けたある事件。夫と子どもがいて共働きだったところ、妻が仕事先の男性と浮気。夫が妻と男性を訴え、慰謝料等440万円を請求した。

妻側で受任。裁判は和解で解決した。和解内容は、男性が夫に180万円を支払う。妻は男性に、そのうち90万円を支払う。ただし、月2万円ずつ45回の分割払いである。

こういう場合、妻と男性の行為は、夫に対する共同不法行為。慰謝料の支払義務は連帯責任・連帯債務である。どちらかが全額支払えばそれで終わり。ただし、内部的に求償の問題が残る。本件に即していえば、180万円の連帯債務、これを男性が全額支払い、妻が求償金90万円を支払うこととなった。

不貞慰謝料の金額は、浮気の結果として夫婦が離婚に至ったかどうかが大きい。離婚に至らなければ慰謝料も低くおさえられることが一般的である。その他、そもそもの夫婦関係(そもそも破綻していれば損害はない)、不貞に至った経緯(どちらが誘ったのか)、不貞期間・回数等が慰謝料額を左右する。

本件では、双方の主張がでそろった段階で、裁判所が一定の解決案を示し、それをめぐって和解協議が重ねられた。

依頼人が福岡に居住していなかったため、打合せがたいへんだった。DV案件で警察の介入もあったため、住所情報の秘匿にも苦労した。

弁護士費用は法テラスを利用されたので、着手金も報酬金も法テラスが決めた。依頼人は月1万円ずつほど法テラスへの返済義務も負うこととなった。