新大阪駅の文楽ポスターの俤(おもかげ)付けで、能観劇の話。
日曜日は大濠公園能楽堂で観世流の特別公演。昨年いっぱい同能楽堂の耐震工事やコロナ禍のため公演はなく、ひさしぶり。
お能には上掛二流(観世・宝生)と下掛三流(金春・金剛・喜多)の5流がある。
観世流は室町時代の観阿弥が初代。その息子が有名な世阿弥。室町幕府三代将軍・足利義満に認められ、世阿弥が能を完成させた。現在の宗家は二十六世・観世清和氏。昭和三十四年生まれだから、同い年だ。
正月公演なうえに、大濠公園のリニューアル記念公演でもあり、演目は『翁(おきな)』『鶴亀』『狂言 福の神』『老松』『石橋(しゃっきょう)』など、めでたいものづくし。「うわぁ、お能のおせち料理や~(彦摩呂ふうに)」。
『翁』は古態を残していて、〝能にして能にあらず”といわれる。翁、千歳(せんざい)、三番叟(さんばそう)の三役がめでたい謡と舞を重ねる。「うわぁ、めでたい舞の三段重ねや~(彦摩呂ふうに)」。三番叟は、みなさまも柳川さげもんで見たことがあるでしょう。
『福の神』は出雲大社に初詣にでかけた二人組が福の神から生き方の指導を受ける。豊かになりたいという二人にご託宣。いわく、金銀ではなく、心の持ちようという元手が必要であると。なるほど。
〆は『石橋』。中国・インドの仏跡をめぐる寂昭がワキ僧。中国の清涼山をおとずれたところ、深い谷にかかった細く長い石橋が行く手に。橋のむこうは文殊菩薩の浄土。寂昭が渡ろうとすると、生半可な者には渡れないといわれてしまう。
橋上で紅白の牡丹のあいだを紅白の獅子が華麗に舞い遊んで終局。めでたきものとして「唐獅子・牡丹」のとりあわせは有名であるが、典拠はこの『石橋』である。また歌舞伎の連獅子の元もこれ。
登山をしていると「蟻の戸渡り」などという両側が切れ落ちた断崖絶壁を行くことがある。今後そのような場所で牡丹と獅子があらわれたら、先へすすむことを断念するとしよう。
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