2011年2月24日木曜日

 大峰山(つづき)



 翌朝暗いうちに一丸旅館を出発
 登り口は大峯(清浄)大橋。

 「懺悔懺悔、六根清浄(さんげさんげ、ろっこんしょうじょう)」
 と先達のリードで繰り返し唱えながら登ります。

 六根とは、視、聴、嗅、味、触覚の五感と意識
 六根清浄とは、我欲などの執着を断ち、魂を清らかな状態にすること。

 しだいにトランス状態になり
 セロトニンが分泌されます。

 大峰山は、いまなお宗教上の理由から日本で唯一、女人禁制の山
 登山道からすぐのところに「これより女人結界」の門があります。

 男女共同参画社会基本法に抵触するかどうか頭をよぎりましたが
 トランス状態のまま通過。
 (女性の読者のみなさま、あいすみません)

 おそらくはご異論もあるのでしょうが
 心弱き男どもは女人といっしょでは魂が清らかにならぬのでせうね。

 途中、一の瀬茶屋跡、一本松茶屋という茶屋が設けられ
 しばらく行くと「役行者お助け水」と称する水場があります。

 尾根筋まで登ると洞辻茶屋があり
 いよいよ世界遺産の大峯奥駈道と合流。

 そこからはいわゆる表行場で
 難所の連続です。とくに高所恐怖症の人にはお勧めしません。 

 まずは鐘掛岩。釣鐘状の巨岩に登っていくのですが
 右左の足を出す順序を間違うと、行き詰まり進めなくなります。

 つぎが西ノ覗岩。断崖絶壁から真下を覗き見る修行
 その名も捨て身行。

 「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」という空也聖人の歌がありますが
 身を捨てて生まれ変わる(再生する)行。

 命綱ひとつに身と命をゆだねて、断崖絶壁の先に身を突き出されます
 綱はランドセルのひものように肩にかけるだけで、いまにも外れそう…。

 この状態で、後ろから突き出している人がいろいろと要求してきます
 「親孝行するかぁ!」「夫婦仲よくするかぁ!」…

 「はいっ!」と答えないと、数センチほど先へ押しやられます
 これはもう「はいっ!」と答えるしかありません。

 山の神に誓ったことではあるものの
 強迫による意思表示なので取り消すことができるはず(民法96条)。

 などと考えているうちにほどなく、世界遺産登録の大峯山寺に着
 役小角(えんのおづぬ、役行者)を伝承的な開祖とする修験道の寺院です。

 ここで朝食
 あたたかい味噌汁が疲れた体と心を解放します。

 1007年、かの藤原道長が山頂に自筆の般若心経などを銅の筺に納めて
 埋経しました。「御堂関白記」の記載のほか物も出土しているとか。

 ひといきついたのち、裏行場を巡拝し、山頂で記念撮影
 そして登ってきた道を引き返します。

 同行のKさんが、あとすこしで女人結界というところでおおきく転倒
 みなから「邪心、邪心、まだまだ修行が足りぬ」と冷やかされていました。

 下山後は温泉で汗を流し、鯉料理に舌鼓をうったのち帰路
 橿原神宮で近鉄特急、京都から新幹線に乗って帰福。
 
 修行の数々により、懺悔懺悔、六根清浄
 下界のうさを忘れることができました(ほんのいっときですが)。
 

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