2011年2月2日水曜日

 今さらジロー(2)



 「おまえとは父でもなければ子でもない。」
 ドラマで親子喧嘩のさいによくあるセリフです。

 実際、不良の息子と縁を切りたいとの相談は
 少なくありません。

 しかしむかしのような勘当という制度は現行法にはなく
 実親子関係を破棄することはできません。

 実親子関係をどうしても否定したければ
 嫡出否認か親子関係不存在確認訴訟によるほかありません。

 むやみに訴えを許すと子の立場が不安定になってしまうので
 嫡出否認の訴えは子の出生を知ってから1年内という期間制限があります
 (民法777条)。

 婚姻中又は離婚後300日以内に生まれた子どもの場合
 嫡出否認の訴えによることが原則です。

 嫡出の推定が働く場合に、親子関係不存在確認訴訟をおこしても
 不適法として却下されます。
 (そうしないと、嫡出否認を限定的に認めた趣旨が没却されるので)

 本件東京高判ケースの場合、婚姻中に生まれているので
 本来であれば、不適法として却下されるべき事案だったようです。

 それではなぜ判決がなされたのか? 

 法律にはかならず例外があります。
 夫の長期海外出張、受刑、別居など

 妻が夫の子を妊娠する可能性がないことが客観的に明白である場合は、例外
 夫の子であるとの推定を受けないことになるからです。

 ただし本件の場合、夫の長期海外出張、受刑、別居などでもなさそう
 産院での取違えとありますが、これを主張・立証したわけでもなさそう。

 それではなぜ??
 
 嫡出否認の訴えの制限は子の立場を守るためのもの。そうだとすると
 関係者が了解しさえすれば裁判を認めてもよいと考えられます。

 本件では兄が了解したために、1審で親子鑑定を実施したもよう
 兄としても真相を知りたかったということでしょう。

 そもそも弟らがなぜ血縁関係がないと考えたのか?
 判旨からは不明です。

 血液型のちがい?それとも外貌が著しくちがったのでしょうか?
 性格や能力などのちがいからはいえないと思うのですが…。

 ともあれ遺伝子鑑定の結果、実子でないことが判明しています。
 (産院での取違えというのは、この結果からの推測のようです)
 こうして一審・東京家裁は親子関係を否定し、弟らの勝訴。

 そこで兄は控訴しました。

 (つづきはまた明日)
 

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