2011年2月5日土曜日

 春立ちぬ



 きのうは立春、「寒さがあけて春に入る日」
 いわば春の初日、こよみどおり暖かくなりました。

 丸谷才一さんの「新々百人一首」より春の歌。

  雪のうちに 春はきにけり うぐひすの

            氷れる泪 いまやとくらむ

                      二条后

 うぐいすは春告鳥なので
 春を告げます。

 「法、法華経(ホー ホケキョ)」と鳴き
 鳥ながら法を説きます。

 法を説くのであれば、泣いて泪することもあるでしょう。

 二条后は藤原高子(たかいこ)で
 清和天皇の女御。

 むかしのイケメン在原業平に略奪されて駆け落ち
 許されぬ悲恋に生きます(伊勢物語)。

   あなたにさらわれて~
   センチメンタル・ジャーニー

 むかしの松本伊代ちゃんのセンチメンタル・ジャーニーは
 略奪愛に成功したのでしょうか?

 業平は失敗し、「京にはあらじ、東の方に住むべき国求めに」とて
 傷心のセンチメンタル・ジャーニー(東くだり)。

 隅田川の河畔まで来た業平は
 高子のことを想って歌を詠みました。
 
   名にし負はば いざ言問はむ 都鳥
 
           わが思ふ人は ありやなしやと

                      在原業平

              (注:都鳥はユリカモメのこと)

 ユリカモメのいる隅田川といっても、新橋~お台場のあたりではなく
 もっと上流、浅草寺の東のあたり。

 隅田川にかかる言問橋はこの歌にちなんで命名されたもの
 一青窈さんの「一思案」の歌では、娘が初恋を落とした場所です。

  花に鳴くうぐひす 水に住むかはづの声を聞けば
  生きとし生けるもの いづれか歌をよまざりける(古今集・仮名序)

 春の隅田川、名にし負う都鳥、娘が初恋を落とした言問橋とくれば
 生きとし生けるもの、いづれか歌を詠まざりける。

 ちかくに東武伊勢崎線の業平橋駅があり
 春ならぬ東京スカイツリーが立ちつつあります。

 業平なら、高い塔をみて高い子を想い
 もう一首歌を詠んだでしょうか?
 

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