福岡市立美術館から東へ移動するとアジア美術館。地下鉄でいくと、大濠公園→赤坂→天神→中洲川端と3駅の移動だ。
わずか3駅だが、そこには広大な地球を4分の1周してしまう「大シルクロード展」が待っている。
シルクロードはご承知のとおり、古代から交易の路として栄え、各地で多様な民族が興亡し、多彩な文化が花開いてきた。
シルクロードといえば、正倉院の宝物、中島敦『李陵』、井上靖『楼蘭』、『敦煌』、玄奘三蔵法師・『西遊記』など、われわれにも親しい。
最近ブラタモリで「奈良・正倉院~なぜ1,300年もお宝を守れた?」をやっていた。番組のテーマは副題にあるとおりだったが、冒頭、あの螺鈿紫檀五絃琵琶が登場した。撥面には螺鈿でラクダが描かれている。シルクロードの砂漠を行き交ったラクダだ。
https://shosoin-ten.jp/articles/detail/000177.html
またBSでは佐藤浩市が趙行徳を演じた映画「敦煌」をやっていた。北宋の時代。殿試に落第した行徳は洛陽の都で肉として売られていた西夏の女を救出した(女は原作では裸である。が、さすがに映画では三田佳子を裸にするわけにもいかず着衣のままだった。)。ここから数奇な運命がはじまる。
行徳は女から西夏文字を記した布切れをお礼にもらう。そして西夏文字を学びたいと思いたち、シルクロードを西へ向かう。しかし、無理矢理軍隊に入隊させられ、ウイグル王女と恋仲になり、・・・最後は戦火の敦煌から仏典を救出し、莫高窟に隠匿する。
これは1900年、敦煌・莫高窟における仏典の発見に材を得ている。なぜ、そのような場所に、そのような経典が埋もれていたのか。この歴史の謎に対する、井上靖による、なるほどな回答だ。だが、井上靖のメッセージはそれだけではない。
官僚や武人としての成功、ウイグル王女との恋愛、漢民族を凌駕しようという西夏王の野望など、人間にはたくさんの欲望や野望がある。しかしそれらはしょせん一夜の夢にすぎない。永遠に残るのは信仰、あるいは精神の拠り所への人間としての貢献である。井上靖のすばらしいメッセージである。
0 件のコメント:
コメントを投稿